恋と愛を知ったのは、陰謀だらけの王宮でした。

みるく

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38:手渡されたブーケ

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セラ、そして司書達は二人の後ろ姿を見送り、ブーケを貰ったセラを少し茶化す。
「セラにももうすぐ春が来るってことかな?」
「え?!そ、そんなこと!」
「俺たちは家同士の家格で決められた結婚の方が多いから、セラが羨ましいよ。」
「も、もう!やめてくださいって!」
顔を赤くして言うセラに、司書達は笑う

頬を染めてムッとするセラに、マギーが隣にきて口を開く
「あら、セラさんムキになるってことは図星ですか?」
「マ、マギーさんまで~」

あははっと声をあげて笑い合う司書達とセラの声は明るく空気を和ませた。


そしてみんなで後片付けを始める。
セラは東屋のテーブルに貰ったブーケを置いて、みんなと一緒に片付ける。


「セラ、この辺り片付いてきたから残りを任せていいかな?」
大柄な図書員のルーカスが図書室に持って帰る荷物を持って、掃き掃除しているセラに声をかけてきた。

「はい!他の皆さんは?」
「みんな先に図書室の掃除に行ってるよ!終わったら図書室にある荷物持って帰宅だってさ」
「わかりました!では残りは私がやっておきますね!」
「頼むよ」

そう言って庭園を出て行った。



「ふぅ・・・」
おおかた片付いて庭園の柵に手をかけ夕焼けを眺める。
「もうすぐ夜になる。」
上空を見上げるとまだオレンジが多いが深い青が見え始めてきていてとても綺麗だ。


「さ。私も図書室に戻ろうっと!」
くるりと東屋に向かって身体を向けると、東屋に人がいる。


「・・・ダリル様?」
ダリルはその声に気付きセラの方を見て笑いかける
「セラ・・・」

セラはゆっくりと近づき、ダリルの目の前で足を止めた。

「来れなくてすまなかったな。」
「いえ!庭園の貸し出し許可を取ってくださり本当にありがとうございました!」
深々と頭を下げるとまたダリルの顔を見た。
そのとき。


「きっと近くにいると思うよ。」


なぜかハリスの言葉を思い出し、ドキッと心臓が脈打つ。

それを誤魔化すようにダリルに話しかけた。
「今はもう掃除をしていて・・・もう終わってしまったんですが・・・」
「そのようだな。・・・ところで、このブーケは・・・」
ダリルがテーブルに置いているブーケを手に持ちセラに見せる

「あ、それはハリス様と奥様からいただいたブーケです。」
セラが受け取ろうと手を出す。

ダリルはブーケをセラに渡すとジッとセラを見つめた。

「・・・?ダリル、様?」
赤とオレンジが混ざったような夕日が、庭園を明るく照らし、その光はセラとダリルにも当たる

優しくも少し冷たい風が吹き、セラの髪が顔にかかる
その髪をセラが耳にかける仕草を見て、思わずダリルはセラの髪を優しく撫でた。
セラは自分の髪を掬い指に絡めるダリルを見るとまるで愛おしそうな顔をしていた。



「綺麗だ・・・」


ダリルの指から髪がするりと抜けていく。

「え・・・」
セラはそのダリルの言葉にどんどんと顔が熱くなるのを感じた。

ダリル自身も自分が言った言葉に目を見開き、動揺する
「あ・・・いや・・・これは、その」


お互い赤くなりながらそれ以上何も言えず、二人の間に沈黙が流れた。

その時、
「おーい!セラー!!こっち終わったから帰宅だぞー!」
「セラさん!カバン持ってきましたよ!」
ルーカスとマギーの声が聞こえてきた。


「あ、私・・・帰ります」
「あぁ・・・」
それしか言えずセラは頭を下げて、走って行ってしまった。



ダリルは一人、東屋の椅子に座り込み、ため息をつく。


「はぁ・・・絶対バレたよな・・・」
なかなか冷めない熱を冷まそうと首元のボタンを緩め、テーブルにつっぷして深呼吸する。


その時、コツコツと石畳みを歩く足音が聞こえてきた。
こちらに向かってきていると感じて、ダリルはその音の方を見る。

「セシル・・・」
夕日が落ちてきてどんどん薄暗くなってきた庭園に現れたのはセシルだった。
「兄上。なんだかお久しぶりですね。」
にこりと微笑むセシルにダリルも微笑みかえす。
「あぁ。お前も忙しそうだな。やはり子を持つ親となると、毎日が慌ただしいだろう。」
ダリルは久しぶりに会う弟の登場に嬉しくなり、立ち上がって近づいて行く。

「兄上に比べれば大したことありませんよ。」
「何を言う。父上からいろんな仕事を振られていると聞いたぞ。」
セシルはダリルから目を逸らし地面に視線を落とした後、落ちている小さな花びらに目をやる。

「兄上、さきほど偶然拝見してしまったのですが、兄上と親しげに話していたあの女人は・・・」
ダリルはそう言われドキリと心臓が脈打つ。
アレを見られたのだろうか・・・そんな不安を持ちつつ、悟られないように話す

「あぁ、セシルは初めて見るな。私が王宮に入れた翻訳師だ。今は図書室で司書もしている。」
「へぇ・・・」
セシルは下を向いたままでダリルから顔はよく見えない。
「あの者の翻訳は、主に古文書なのだが、この王宮でも解読出来なかった本を」
「兄上。」
セシルは嬉しそうに話すダリルに被せるように声をかける。

「セシル?どうした・・・?」

セシルはダリルの顔をゆっくり見て、口を開いた。

「兄上は・・・あの者が好きなのですか?」
思ってもいなかった質問に、一瞬頭が真っ白になるダリルはセシルの言った言葉を理解した途端みるみる顔が熱くなるのを感じた。
「?!・・・セシル・・・お前見て・・・」
やはり見ていたのか。その言葉が言えずグッと口を噤んだ。

夕闇に溶け込むように見えるセシルは、
一瞬、言葉を探すように視線を揺らし、
まるで泣きそうな顔でダリルを見た。

「兄上・・・俺はアイツが好きです。・・・兄上、どうかセラを俺にください。」

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