【R-18】気がついたら未亡人伯爵夫人になってて後宮で愛された

みるく

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「フォン・・・話がある。」
最近は私のそばに居るよりも長く奴のそばにいるフォンを呼び、泉から少し離れた場所まで行き2人で話をした。

「いい加減追い出そう。」
「兄様・・・」
「奴はもう歩けるまでになった!」
「しかし、この辺りにはオオカミがおります。今森を出たところでまたやられてしまいますわ。」
「そんなもの、完治したところで同じであろう。」
「いいえ・・・兄様とわたくしの力を合わせれば、この森の外からある程度の範囲は守れます。」
「私に奴を守れと言うことか?」
「奴ではございません。セシル様ですわ。」
「っ!あんな男の名を呼ぶな!」
「いいえ!わたくし、セシル様をお慕いしているのです!兄様が追い出すと言うのならば、わたくしもセシル様とこの森を出ます!!」
「なんだ、と・・・ 慕っている?」
あまりにも衝撃過ぎて、思わず聞き返してしまった。

「・・・はい。彼の優しく暖かい心に惹かれました。兄様が無理矢理にでも追い出すと仰るならば、わたくしもセシル様についてこの森を去ります。」
「我らは精霊なんだぞ! 人間とは寿命も違う。我らと人は一緒に生涯を共には出来ぬ!!」
「それでも!!っ・・・それでもセシル様と居たいのです。彼と・・・一緒になりたいのです。」

そう言って涙を流すフォンテーネ
あんなに優しく、私にここまで口答えをした事もなかった、ましてやこの長い数十年数百年と過ごした月日。
ずっと一緒に過ごしていたのに、フォンが泣いた事など動物や妖精の死を弔ってやる時しか無かった。


「もう、勝手にしろ。お前の顔も見たくない。 奴と一緒に出て行け。」
私はそう言って、暫くフォンと会わないように泉から更に離れた場所に行った。




「精霊と人間は一緒には生きられないのだ・・・」
私は独り言ちた。
人間の時間は短い。
この世を去る人間を見て苦しむフォンテーネを見たくない。

ついカッとなりあんな事を言ってしまったが、フォンは森から出た事がない。
森や泉に加護を与え、そして与えられ生きてきた。
それはフォンも分かっているはず、森から出たからと死ぬわけではないが、外に出る事はないだろう・・・



そう思っていたのに、翌日泉に行くとフォンもあの男も居なかった。


妖精達から聞けば、2人は昨夜森から出たそうだ。
しかも、出る事を焚きつけたのはフォンテーネの方だと聞いて、感じたことのない喪失感と絶望感に襲われた。

それだけあの男の事が本気だと言うのか・・・
私や森や泉より、あの男を選んだのか・・・

胸が苦しく、息がうまく出来ない。
私の大事なフォン・・・可愛いフォン!!!


受けた事のない衝撃からか力を制御する事が出来ず、森がざわめき出す。
「っ・・・フォン!!!フォン!!!」
森の一部は青々と茂り、また一部は葉が落ち枝も死んでいく。
動物達は逃げるように走り回り妖精は姿を消した。




一瞬にして、1人になった。











******


「!?・・・兄様!!」
「フォンテーネ嬢、どうしたのですか?」
「いえ・・・なんでも御座いません。」

あんな風に喧嘩したのは初めてのこと。
だけれど、わたくしはこの方、セシル様を待っていたのです。
長い年月をかけて・・・



「フォンテーネ嬢、君のお兄さんに本当に何も言わず出てきて良かったのか? その・・・僕と・・・一緒に・・・」
セシル様は照れたお顔で目を右へ左へ動かしていらっしゃる。
そのお姿は、男性に向けるには非常に失礼ではあるものの本当に可愛らしく、胸の奥が甘く苦しくなる。
ずっと一緒にいたい・・・
それはまさしく本心で、この方と共に居られるのならば、死すらも怖くない。
そう思える。

「はい。・・・わたくしがお邪魔でなければ、貴方様と共に居たいのです。」

「っ!!・・・ぼ、僕も!貴女と一緒にいたいです!あの時、優しく怪我の手当てをしてくれた貴女にっ・・・あの時からっ、僕は。僕は・・・っ!?」
話の途中でセシル様は、来た方向を向く。


・・・とうとう、この時が来た。


「セシル様?・・・どうなさいましたか?」
「森の方が騒がしくありませんか? フォンテーネ嬢の兄上が心配だ。」
「・・・恐らく、兄様の気持ちが乱れ森が崩れかかっているのだと思います。 森の維持と兄様の心はとても密接に関係しているのです。 普段は理性が働き、多少心が乱される事があっても支障はありません。 ですが・・・」
「ですが・・・?」
「ですが、わたくしが居なくなった事に気付き兄様の心は理性が効かない位乱されているのだと思います。」

ずっと一緒にいたのだから、この程度の事なら手にとるようにわかる。
いつも優しくわたくしに甘い兄様。
だけれど兄様には、必要な試練なのです。


「フォンテーネ嬢、お兄さんの所に戻ろう。 そして、私が君に相応しい男だと認めて貰えるよう努力する!」
「いいえ、これで良いのです。こうしなくてはいけないのです・・・」
腕を引っ張り森に戻ろうとするセシル様に反抗する。

「だがしかし・・・っ!?・・・フォンテーネ嬢、落ち着いて森をよく見てみるんだ。 あれは炎ではないかい?」
「え・・・?」
セシル様の後ろにある森を見ると、花咲き誇る場所・青々と茂る場所の他に全ての葉が落ち枝ばかりになってしまった場所があった。
そこからチラチラと紅い炎と白い煙が上がっている。

「何故!?森が!!」
わたくしの知り得る限りあんな風になる筈が無いのに!
「恐らく、あの一帯だけ葉が落ち乾燥して自然発火してしまったんだろう。あのままでは森が全て焼けてしまう。そうすれば、あの森に住む動物も妖精も君のお兄さんも、無事では済まない。」
「兄様!!」

わたくしは全速力で走った。
予見していたものと違う。
どうして?
兄様、どうか無事で居てください。
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