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さようなら、ごめんね。
しおりを挟む「えっ!?」
そう声を出すと同時に私は何者かに後ろから抱きしめられた。
「キャ・・・んぐっ」
叫ぼうとした瞬間口を手で押さえられた。
私を拘束している人間とは別にもう1人居たようで、黒い布を顔に巻いた体格の良い男が私の前に現れた。
何故男か分かったかと言うと、目の前の人間が太く低い声でこう言ったから。
「恨みはないが頼まれてるんでね。王子妃様」
そう言って、私のお腹を思いきり殴った。
「やめろぉおおおおお!!!」
「っん"ん"ん"!!!!」
ジャックの叫び声が聞こえる。
押さえられた私の口から普段出ないような声が出る。
やめて、やめて!!赤ちゃんが!!赤ちゃんが!!そう声を出したいのに出せない。
男は2度3度とお腹を殴り私は胃から込み上げる物を感じた。
そして、男たちは私を池に投げてどこかへ行ってしまった。
「お嬢様!!!お嬢様!!!」
池に投げられてすぐに水や底の泥濘に足をとられながらジャックが私を抱き上げた。
「お嬢様!!お嬢様!!私が付いていながら・・・っっ!!!」
「ジャッ、ク・・・私の・・・私の、赤ちゃ、・・・」
声を出すのも辛いけれど、赤ちゃんが心配で声を振り絞る。
お腹が痛い。痛くて堪らない。
ジャックは私を横抱きに抱き上げ池から上がる。
私の意識はそこで遠のいた。
目が覚めた時。
私のお腹から赤ちゃんが居なくなっていた。
ジャックは私を馬車まで連れて行ったあと、犯人の後を追おうとしたもののとっくに逃げた後だったそうだ。
私は出血していたそうで馬車に乗せられ、そのまま王宮へ戻り王宮医師により治療された。
結果、肋骨が2本折れていてお腹の赤ちゃんは流産。
私があの時クラウスと一緒に王宮へ戻っていたら起きなかったかもしれない。
身体の傷が治っても、お腹の子は帰ってこない。
目が覚めて。
話を聞いて3日程が経ったが、事実が受け入れられない。
身体が痛くてベッドから起き上がれない。
真っ暗な部屋のベッドに横たわりでボーッと窓から見える星を見る。
「赤ちゃん・・・ごめんね。」
流れた涙を拭く事も今の私には出来ない。
部屋のドアが開き明かりが入って来た。
そして部屋が明るくなる。
「・・・サーシャ。」
「サーシャ。あぁ・・・こんなにやつれてしまって。」
「クラウス・・・お義母様。犯人は・・・見つかりましたか?」
「いいえ。まだ見つかっていないの。でも必ず!!必ず見つけるから。どうか元気になって。」
「サーシャ。こんな時に僕は何もしてあげられなくて本当に情けない。ごめん。僕も君と一緒に居たらよかっ・・・っ。」
私を労るように手を握ってくれるクラウスと、目を赤く腫らして心配そうな顔のお義母様を見て、私は申し訳なくなった。
「クラウス・・・お義母様・・・私の王子妃としての自覚が足りず。・・・大切な、子をっ・・・赤ちゃんをっ!!!~~~っ。」
何度自分を責めても足りない。
逃げてと言ってくれたジャックにも申し訳ない。
本当の娘のように大切にしてくださるお義母様にも。
何より、懐妊を知ってから足繁く通っていたリズと過ごす時間よりも多く過ごしてくれていたクラウスに本当に申し訳なくて堪らない。
「サーシャ・・・僕も、お腹の子を失って悲しいけれど、それよりも君が無事にこうやって生きていてくれている事が嬉しいよ。」
「クラウスの言う通りよ。貴女が運ばれて来た時わたくし血の気が引いたのよ?義妹を失って、貴女まで失うかもと思って。 サーシャ、本当に貴女がこうやって生きて居てくれるだけで嬉しいわ。」
「クラウス、お義母様。・・・ですがっ」
「流産は母として、とてつもなく悲しい事なのは痛いほどわかるわ。だけどきっとまた自分の下に帰って来てくれると信じましょう。」
「~~っ、はぃ。」
苦しくて、つらくて、息ができない。
骨が折れたからではなく、心が苦しい。
ごめんね。ごめんね。
あなたを産んであげられなくて。
ごめんなさいクラウス
ごめんなさいお義母様・お義父様・お父様・・・
クラウスに抱きしめられ泣いた。
お腹を押さえて、ごめんなさい。ごめんなさい。
そう言うことしか出来なかった。
「あら、サーシャが寝てしまったわ。」
「心身ともに疲れてるんだと思います。」
「可哀想なサーシャ。大切な命を奪われる苦しみは自分の身体で育てている母親にしかわからないことよ。・・・クラウス。貴方はサーシャの事を心から支えるのよ?」
「勿論そのつもりです。今回の件、誰が犯人だろうと許しません。」
「そうね。もちろん、見つけたらタダではすみません。 ・・・ところで、大公とジャックはそろそろ来るかしら?」
「おそらく到着する頃だと思います。」
「では、わたくしの部屋に移動しましょう。」
「はい。」
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