隣に越してきたのは幼なじみの男の娘

不思議な爺さん

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でも……やっぱり

はやちゃんマン

翌朝。

大学へ向かうため、家を出た隼人。

ちょうど隣のドアも開く。

ヒカル「はやちゃん、おはよう」

隼人「……おはよう」

視線を合わせず、そのまま足早に歩き出す。

ヒカル「……はやちゃん」

少し寂しげに、その背中を追う。

 

しばらく歩いたところで——

「姉ちゃん、可愛いね~、どこ行くの?」

「ちょっとだけ遊ぼうよ」

ヒカル「や、やめてください……困ります」

男たちが取り囲む。

腕を掴まれ、引き寄せられそうになった、その時。

ヒカル「……はやちゃんマン……」

かすれた声。

でも、確かに届いた。

 

隼人の足が止まる。

一瞬の迷い。

次の瞬間、振り返り、全力で駆け戻る。

ヒカルの腕を強く掴む。

隼人「俺の女に手ぇ出すな」

低い声。

男たちが一瞬ひるむ。

隼人「行くぞ!」

ヒカルの手を引き、走り出す。

「待てよ、こら!」

後ろから追う足音。

隼人「ヒカル、離すなよ!」

ヒカル「うん!」

必死に手を握り返す。

角を曲がり、人通りの少ない路地へ飛び込む。

さらにもう一つ曲がる。

足音が遠ざかる。

やがて、完全に静かになった。

 

路地裏。

荒い呼吸だけが響く。

隼人は、まだヒカルの腕を掴んだままだった。

男たちの足音が、完全に聞こえなくなった。

静寂。

その瞬間——

ヒカルは、堪えていたものが一気に崩れた。

隼人の胸に顔をうずめ、震える声で泣き出す。

ヒカル「はやちゃん……はやちゃん……怖かったよ……っ」

その呼び方。

その泣き方。

一瞬で、あの頃のヒカちゃんが重なる。

隼人は、強く抱きしめた。

背中に腕を回し、優しく髪を撫でる。

隼人「言ったろ。はやちゃんマンが助けるって」

ヒカルは、胸元から顔を上げる。

涙でぐしゃぐしゃなのに、必死に笑おうとする。

ヒカル「う、うん……ありがとう……」

その顔を見た瞬間——

胸が、強く鳴る。

これは同情じゃない。

懐かしさでもない。

今、目の前にいるヒカルに対する鼓動。

隼人「俺……まだ全部整理ついてない。でも……」

一瞬だけ、目を逸らす。

そして、もう一度ちゃんと見つめる。

隼人「ヒカちゃんが好きだ」

言った瞬間、自分でも驚くほど、すとんと胸に落ちた。

迷いごと抱えたままでもいい。

それでも、好きだ。

隼人は、そっとヒカルの頬に触れ、唇を重ねる。

ヒカル「……んっ」

一瞬びくりと震える。

けれど、逃げない。

ゆっくりと目を閉じる。

握られたままの手が、ぎゅっと強くなる。

ゆっくりと、唇が離れる。

まだ距離は近いまま。

ヒカルは、少し不安そうに見上げた。

ヒカル「……本当にいいの? 私……男だよ」

隼人は、ほんの一瞬だけ視線を揺らす。

隼人「うん……正直、まだ全部わかってるわけじゃない。でも……」

言葉を探す。

隼人「今、ヒカちゃんを手放したくないって思った」

ヒカルの瞳が、ゆっくりと潤む。

ヒカル「……うん。それだけで十分」

少しだけ笑って、

ヒカル「でもね、はやちゃんに本当に好きな女の人ができたら……その時は、私あきらめる」

隼人「ヒカちゃん……」

隼人は困ったように笑う。

隼人「でもさ、マジで可愛いんだよ」

ヒカル「だって~。はやちゃんに好きになってもらえるように、ずっと頑張ったもん」

その言葉に、胸がきゅっと締めつけられる。

隼人はスマホを取り出す。

隼人「あ、やべ。講義とっくに始まってる」

ヒカル「私も……どうする?」

一瞬、目が合う。

隼人「……サボる?」

ヒカル「え?」

隼人「デート、しよっか」

ヒカルの顔が一気に明るくなる。

ヒカル「いいの? やった~」

隼人「はやちゃんマン、今日はヒカちゃん専属だから」

ヒカル「ふふっ」

そうして、手をつないだまま、二人はゆっくり歩き出した。

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