隣に越してきたのは幼なじみの男の娘

不思議な爺さん

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不思議な関係

計画は失敗に終わったが

その夜。

コンビニの蛍光灯の下、レジに立つ隼人と空。

隼人はどこか少し軽い顔をしている。

隼人
「ヒカルと、どうにか仲直りしました、佐々木さん、ありがとう」

空は一瞬だけ目を細める。


「良かったじゃない」

その声音は穏やかで、嫉妬はもうない。

その時、自動ドアが開く。

隼人 空
「いらっしゃいませ~」

入ってきたのは直美だった。

隼人の視線が自然と向く。

隼人
「直美……」

直美は隼人をチラっと見て、すぐに視線を逸らす。

直美
「隼人に会いに来たんじゃないわ、空くんに会いに来たの」

隼人が目を瞬く。

隼人
「空くん?」

空はわずかに眉をひそめるが、すぐに切り替える。


「隼人くん、ちょっと飲料補充お願い」

隼人
「はーい」

そう言って裏へ行く隼人。

隼人の姿が見えなくなったのを確認して、空は小声で言う。


「ちょっと~ここでは空くんって言わないでって言ったでしょ内緒にしてるんだから」

直美は悪戯っぽく笑う。

直美
「言えばいいじゃない、それに絶対メイク落とした方がイケメンだって~」

空は照れたように視線を落とす。


「そんな事ないですよ僕なんて」

直美は少しだけ真剣な顔になる。

直美
「もう~自信持ちなよ~」

その言葉は軽いのに、どこか本気だ。

ちょうどその時、隼人が戻ってくる。

直美は何事もなかったようにレジに向かう。

直美
「またファミレスで待ってるわよ」

コンビニから出る直美。

自動ドアが閉まる音がやけに静かに響く。

隼人は空を見る。

隼人
「佐々木さん、直美と友達になったんだ」

空は少しだけ間を置く。


「ま、まぁ」

その表情は、以前よりも柔らかい。

そしてバイト交代が来る。


「お疲れ様」

そう言ってエプロンを外し、外へ出る。

夜の空気は少し冷たい。

空は、どこか落ち着いた足取りで、ファミレスへ向かった。

ファミレスに着いた空。

店内を見渡した瞬間、

直美
「空くん、こっち~」

店内に響く声。

空は一瞬固まり、周囲を気にしながら急ぎ足で直美の元へ向かい、席に着く。


「ちょっと~声大きいです」

直美は悪びれもなく笑う。

直美
「ごめん、ごめん」

そう言いながら、直美は空の顔をじっと見つめる。

空は視線を泳がせる。


「あ、あの、あんまり見ないでくださいよ」

直美は楽しそうに言う。

直美
「いや~絶対素顔イケメンだろうなぁって見てたの」

空は慌てて首を振る。


「そ、そんな事ないですって」

直美の表情が少し真面目になる。

直美
「なんで、そんなに自信がないの?」

空は少し迷ってから、視線を落とす。


「え、えっと、高校卒業式の時、ずっと好きだった子に告白したら見た目が好きじゃないって断られてから、素顔隠したくなって」

直美の眉が少しだけ寄る。

直美
「そんなの空くんの1部しか見ようとしない女だったからよ」

空は戸惑いながら顔を上げる。


「そ、そうなのかな」

直美は小さく息を吐く。

直美
「私もヒカルちゃんの1部しか見てなかった、あんな男になら勝てると思ってた……でも……」

少し遠くを見つめ、寂しげに笑う直美。

空は、そっと言う。


「いや、直美さんは素敵です、綺麗です」

直美は驚いたように目を瞬かせる。

直美
「ありがとう、私空くんかっこいいと思うよ」

空は顔を赤くする。


「そ、そんな」

直美は指を立てる。

直美
「もう、そんな事ない禁止」

そして、少し笑って続ける。

直美
「最初は、何この女って思ったけど、あの好きな人の為に計画をすらすら伝える空くん、かっこいいなって思ったもん」

空は苦笑する。


「でも、失敗したし」

直美は肩をすくめる。

直美
「でも、こういう出会いも会ったじゃない?いや?私との出会い」

空は慌てて否定しかける。


「そ、そんな事な」

直美は軽く睨む。

直美
「こら!罰として今度男になってデートね」

空は目を丸くする。


「えっえっ、男の服持ってないよ」

直美は楽しそうに笑う。

直美
「じゃあ、私が全身コーディネートしてあげよう」

空は照れ隠しにそっぽを向く。


「もう、強引なんだから、そこが好きなんだけど」

直美が身を乗り出す。

直美
「何?聞こえなかった」

空は頬を赤くしながら言う。


「もう~絶対聞こえてたよ」

二人は、顔を見合わせて笑う。

隼人とヒカルの恋敵だった2人。

違う意味で、笑い合う2人になった。

デート当日。

待ち合わせ場所に立つ直美。

スマホを見ながら少し不機嫌そうに待っていると――

「お待たせ」

振り向くと、

帽子を深々と被り、サングラス、マスク。

どう見ても不審者。

直美、吹き出す。

「何よ、それ不審者じゃない」

空はもごもご。


「だ、だって……」

直美はため息をつきながら、
サングラスとマスクをサッと奪う。


「え、ちょっ」

そのまま強引に腕を組む。

直美
「行くわよ」


「え、え?」

ショッピングモール。

直美は完全にスイッチが入っている。

「これ着て」「次これ」「あ、似合う!」

まるで着せ替え人形。

試着室から出てくるたびに、

直美
「いいじゃない~めちゃくちゃイケメン」

空は鏡を見て落ち着かない。

そしてそのまま直美が会計を済ませる。


「え、払いますって」

直美
「今日は私の趣味」

外に出ると、

直美はカバンからクシを出し、
空の髪を整える。

「じっとして」

ササッとセットして、仕上げ。

直美
「はい、イケメン空くん完成」

手鏡を渡される。


「え?僕じゃないみたい」

直美
「じゃあ行こう」


「どこに?」

直美、ニヤリ。

直美
「隼人のコンビニ」


「えぇぇ!?」



コンビニ。

自動ドアが開く。

店内には隼人とヒカル。

直美はわざとらしく声を張る。

直美
「店長~隼人くん、バイト中~イチャイチャしてます~」

隼人
「わ、わぁ、直美」

ヒカル
「い、イチャイチャだなんて……」

隼人
「てか、隣は?」

直美は腕を絡める。

直美
「私の彼氏、空くん」

空、固まる。


「わ、わ、直美さん」

隼人、目を見開く。

隼人
「さ、佐々木さん?!」

ヒカル、さらに驚く。

ヒカル
「そ、空ちゃん?!」

空、ぎこちなく笑う。


「は、はい、そんな感じです」

ヒカルはじっと見る。

ヒカル
「ち、ちょっとかっこいいかも……」

隼人
「ヒカル!」

ヒカルの頬をかるくつねる。

ヒカル
「いたっ」

直美がニヤニヤしながら。

直美
「店長~!」

隼人
「わ、わ、直美」

一瞬の沈黙。

そして――

4人は、大笑いした。
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