13 / 66
包囲されたはじめての街
1590年4月3日・恐るべき歩き巫女
しおりを挟む
雄二との食事しながらの話し合いはまだ続いた。
「やっかい事は以上なんだが、実は今日案内してもらった夕なんだが・・」
『なんだ、なにかあったか?』
「うむ、一日案内してもらったのは良かったのだが、途中で『以前のお頭とは別人のように頼りない』と両の二の腕を締め上げられてな。物凄い痛かったぞ。」
「まあ、今言ったように別人の意識が混ざりこんでいるから以前の俺とは無意識に性格が変わってしまってるのかもしれんが・・ん?雄二?」
見ると雄二は笑い転げていた。
『わはははは、締め上げられたのは二の腕だけか?』
「ああ、そうだが」
『それは命拾いしたぞ、兄者』
その時、別人の声が部屋に轟いた。
『誰が命拾いしたんですって?』
音もなくいつの間にか夕が部屋に入ってきていた。
『お頭の両腕を掴んだ時、本当は股間を蹴上げようかと思ったけど、思いとどまったんですよ、私』
「へ?」
『殿方の股間ってとても重宝するんです。強く蹴れば気を失わせることもできるし、あわよくば命を奪うこともできます。加減を調整して蹴れば腑抜けた殿方に活を入れることもできるのですよ。異界の文殊様!』
「お、お前、いつから聞いていたんだ」
『「記憶混濁の理由がわかった。」あたりからでしょうか』
それって最初からじゃねえか!!!!
『忍びの仕事の一つに、相手から直接情報を聞き出すという場合があります。無理やりに口を割らせるというわけですが、こんな手段は本当に已むに已まれぬ最後の手です。他に情報収集の術がない時にやる方法ですね。要するに拷問です。』
『そこまで重要な情報を知っている相手ですから、ちょっと痛めつけただけでは話してくれはしません。また、拷問する側も手加減が必要です。誤って死なせてしまえば、二度と口を割らせることは出来ないですからね』
こいつ何喋ってんだ?
『従って、拷問する場合は暴力と時間、さらにケシなどの薬物を使って相手を攻略していくことになります。どんなに屈強な相手でも時間をかけて痛めつけていけば、やがて、黙秘はできなくなり喋りだします。但し、こうして聞き出した内容は十中八九デマカセです』
『ここで、出番となるのが加減して股間を蹴り上げることです。”オナゴの暴力に屈して、主を裏切ったか、腑抜け者!”などと挑発を加えながら。』
『すると、相手は男の尊厳を思い出すのか目に光を取り戻し、また黙秘に戻ります。』
『これを何回も何回も何日も何日も繰り返いていくと、如何なる剛の者でも、最後は股間を蹴り上げても、苦しむだけで反発はしなくなります。完全に心が折れた状態ですね。本当の情報収集はここから始まります』
・・・・・・・
『他にも殿方の股間は、くの一にとっては、色々便利なのですが、今日のお頭は、蹴り上げたら最初から苦しみだしそうで、とても、殿方の尊厳を取り戻せるようには思えなかったので、蹴るのを止めたのですよ。ご理解いただけました?文殊菩薩様』
こ、怖い、怖すぎる、夕。こいつとは決して良好な関係は築けない気がする。ガクガクブルブル
『おっと、長居しすぎたようです。では、今度は本当に失礼しますね』
夕はまた音もなく出ていった。
暫く時間が経ってから、ようやく雄二が話し出した。
『やれやれ、夕に鈴を付けられるの兄者だけだったんだが、今のを見る限りもう誰も夕を止めらんねえな』
『この際だ。歩き巫女の事も話しておくよ。どうせ忘れてるんだろ、兄者?』
雄二によると、夕達歩き巫女は元々武田家の忍びだったそうだ。
武田家滅亡後、一般の武将は狸人族の家来になったが、武田の忍びは、風魔一族を頼ってきたという。理由は狸にはライバル伊賀者がいた為だ。狸の元に行けば、伊賀者の下働きをさせられる。それだけは嫌だったらしい。
因みに風魔にも女の忍び(くノ一)はいるのだが、彼女らは男の忍びの世話をしたり、潜伏先で怪しまれないよう夫婦を装う為に使われたりするのが大半で、自ら諜報活動する風魔のくの一は殆どいないという。
が、歩き巫女は違う。女だけで潜伏し、時には何年、十何年と任地に完全に溶け込んで情報収集を続けるのだという。その為、万一の場合には女だけで荒事にも対処する必要があり、武力に関しては風魔の男の忍びを凌ぐ者さえいるという。
歩き巫女という呼称は、そんな現地に潜伏している者との連絡要員からついた名だという。
女の元に得体の知れない男が訪ねていくのは不自然。その点、巫女であれば、さほど目立たないことから連絡員が巫女に扮している事が多いのでそう呼ばれるようになったらしい。
そんな歩き巫女は全国におよそ100名。正確な人数はもはや誰もわからないという。そんな集団の現在の団長が夕というわけである。
風魔に合流した時の歩き巫女の長はもう引退していて、夕は風魔から見れば二代目の団長なのだそうだ。
いやはや、こんな話を聞いてしまったら益々、夕が怖くなってきたよ。
(史実での小田原陥落まで、あと94日)
「やっかい事は以上なんだが、実は今日案内してもらった夕なんだが・・」
『なんだ、なにかあったか?』
「うむ、一日案内してもらったのは良かったのだが、途中で『以前のお頭とは別人のように頼りない』と両の二の腕を締め上げられてな。物凄い痛かったぞ。」
「まあ、今言ったように別人の意識が混ざりこんでいるから以前の俺とは無意識に性格が変わってしまってるのかもしれんが・・ん?雄二?」
見ると雄二は笑い転げていた。
『わはははは、締め上げられたのは二の腕だけか?』
「ああ、そうだが」
『それは命拾いしたぞ、兄者』
その時、別人の声が部屋に轟いた。
『誰が命拾いしたんですって?』
音もなくいつの間にか夕が部屋に入ってきていた。
『お頭の両腕を掴んだ時、本当は股間を蹴上げようかと思ったけど、思いとどまったんですよ、私』
「へ?」
『殿方の股間ってとても重宝するんです。強く蹴れば気を失わせることもできるし、あわよくば命を奪うこともできます。加減を調整して蹴れば腑抜けた殿方に活を入れることもできるのですよ。異界の文殊様!』
「お、お前、いつから聞いていたんだ」
『「記憶混濁の理由がわかった。」あたりからでしょうか』
それって最初からじゃねえか!!!!
『忍びの仕事の一つに、相手から直接情報を聞き出すという場合があります。無理やりに口を割らせるというわけですが、こんな手段は本当に已むに已まれぬ最後の手です。他に情報収集の術がない時にやる方法ですね。要するに拷問です。』
『そこまで重要な情報を知っている相手ですから、ちょっと痛めつけただけでは話してくれはしません。また、拷問する側も手加減が必要です。誤って死なせてしまえば、二度と口を割らせることは出来ないですからね』
こいつ何喋ってんだ?
『従って、拷問する場合は暴力と時間、さらにケシなどの薬物を使って相手を攻略していくことになります。どんなに屈強な相手でも時間をかけて痛めつけていけば、やがて、黙秘はできなくなり喋りだします。但し、こうして聞き出した内容は十中八九デマカセです』
『ここで、出番となるのが加減して股間を蹴り上げることです。”オナゴの暴力に屈して、主を裏切ったか、腑抜け者!”などと挑発を加えながら。』
『すると、相手は男の尊厳を思い出すのか目に光を取り戻し、また黙秘に戻ります。』
『これを何回も何回も何日も何日も繰り返いていくと、如何なる剛の者でも、最後は股間を蹴り上げても、苦しむだけで反発はしなくなります。完全に心が折れた状態ですね。本当の情報収集はここから始まります』
・・・・・・・
『他にも殿方の股間は、くの一にとっては、色々便利なのですが、今日のお頭は、蹴り上げたら最初から苦しみだしそうで、とても、殿方の尊厳を取り戻せるようには思えなかったので、蹴るのを止めたのですよ。ご理解いただけました?文殊菩薩様』
こ、怖い、怖すぎる、夕。こいつとは決して良好な関係は築けない気がする。ガクガクブルブル
『おっと、長居しすぎたようです。では、今度は本当に失礼しますね』
夕はまた音もなく出ていった。
暫く時間が経ってから、ようやく雄二が話し出した。
『やれやれ、夕に鈴を付けられるの兄者だけだったんだが、今のを見る限りもう誰も夕を止めらんねえな』
『この際だ。歩き巫女の事も話しておくよ。どうせ忘れてるんだろ、兄者?』
雄二によると、夕達歩き巫女は元々武田家の忍びだったそうだ。
武田家滅亡後、一般の武将は狸人族の家来になったが、武田の忍びは、風魔一族を頼ってきたという。理由は狸にはライバル伊賀者がいた為だ。狸の元に行けば、伊賀者の下働きをさせられる。それだけは嫌だったらしい。
因みに風魔にも女の忍び(くノ一)はいるのだが、彼女らは男の忍びの世話をしたり、潜伏先で怪しまれないよう夫婦を装う為に使われたりするのが大半で、自ら諜報活動する風魔のくの一は殆どいないという。
が、歩き巫女は違う。女だけで潜伏し、時には何年、十何年と任地に完全に溶け込んで情報収集を続けるのだという。その為、万一の場合には女だけで荒事にも対処する必要があり、武力に関しては風魔の男の忍びを凌ぐ者さえいるという。
歩き巫女という呼称は、そんな現地に潜伏している者との連絡要員からついた名だという。
女の元に得体の知れない男が訪ねていくのは不自然。その点、巫女であれば、さほど目立たないことから連絡員が巫女に扮している事が多いのでそう呼ばれるようになったらしい。
そんな歩き巫女は全国におよそ100名。正確な人数はもはや誰もわからないという。そんな集団の現在の団長が夕というわけである。
風魔に合流した時の歩き巫女の長はもう引退していて、夕は風魔から見れば二代目の団長なのだそうだ。
いやはや、こんな話を聞いてしまったら益々、夕が怖くなってきたよ。
(史実での小田原陥落まで、あと94日)
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
『イージス艦長、インパール最前線へ。――牟田口廉也に転生した俺は、地獄の餓死作戦を「鉄壁の兵站要塞」に変える』
月神世一
SF
【あらすじ】
「補給がなければ、戦場に立つ資格すらない」
坂上真一(さかがみ しんいち)、50歳。
かつてイージス艦長として鉄壁の防空網を指揮し、現在は海上自衛隊で次世代艦の兵站システムを設計する男。
背中には若き日の過ちである「仁王」の刺青を隠し持ち、北辰一刀流の達人でもある彼は、ある日、勤務中に仮眠をとる。
目が覚めると、そこは湿気と熱気に満ちた1944年のビルマだった。
鏡に映っていたのは、小太りで口髭の男――歴史の教科書で見た、あの「牟田口廉也」。
しかも時期は、日本陸軍史上最悪の汚点とされる「インパール作戦」決行の直前。
部下たちは「必勝の精神論」を叫び、無謀な突撃を今か今かと待っている。
(……ふざけるな。俺に、部下を餓死させろと言うのか?)
現代の知識と、冷徹な計算、そして海自仕込みのロジスティクス能力。
すべてを駆使して、坂上(中身)は歴史への介入を開始する。
精神論を振りかざすふりをして上層部を欺き、現地改修で兵器を強化し、密かに撤退路を整備する。
これは、「史上最も無能な指揮官」の皮を被った「現代の有能な指揮官」が、確定した敗北の運命をねじ伏せ、数万の命を救うために戦う、逆転の戦記ドラマ。
【架空戦記】狂気の空母「浅間丸」逆境戦記
糸冬
歴史・時代
開戦劈頭の真珠湾攻撃にて、日本海軍は第三次攻撃によって港湾施設と燃料タンクを破壊し、さらには米空母「エンタープライズ」を撃沈する上々の滑り出しを見せた。
それから半年が経った昭和十七年(一九四二年)六月。三菱長崎造船所第三ドックに、一隻のフネが傷ついた船体を横たえていた。
かつて、「太平洋の女王」と称された、海軍輸送船「浅間丸」である。
ドーリットル空襲によってディーゼル機関を損傷した「浅間丸」は、史実においては船体が旧式化したため凍結された計画を復活させ、特設航空母艦として蘇ろうとしていたのだった。
※過去作「炎立つ真珠湾」と世界観を共有した内容となります。
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
王国の女王即位を巡るレイラとカンナの双子王女姉妹バトル
ヒロワークス
ファンタジー
豊かな大国アピル国の国王は、自らの跡継ぎに悩んでいた。長男がおらず、2人の双子姉妹しかいないからだ。
しかも、その双子姉妹レイラとカンナは、2人とも王妃の美貌を引き継ぎ、学問にも武術にも優れている。
甲乙つけがたい実力を持つ2人に、国王は、相談してどちらが女王になるか決めるよう命じる。
2人の相談は決裂し、体を使った激しいバトルで決着を図ろうとするのだった。
二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)
MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。
かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。
44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。
小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。
一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。
ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?
対ソ戦、準備せよ!
湖灯
歴史・時代
1940年、遂に欧州で第二次世界大戦がはじまります。
前作『対米戦、準備せよ!』で、中国での戦いを避けることができ、米国とも良好な経済関係を築くことに成功した日本にもやがて暗い影が押し寄せてきます。
未来の日本から来たという柳生、結城の2人によって1944年のサイパン戦後から1934年の日本に戻った大本営の特例を受けた柏原少佐は再びこの日本の危機を回避させることができるのでしょうか!?
小説家になろうでは、前作『対米戦、準備せよ!』のタイトルのまま先行配信中です!
大和型重装甲空母
ypaaaaaaa
歴史・時代
1937年10月にアメリカ海軍は日本海軍が”60000トンを超す巨大戦艦”を”4隻”建造しているという情報を掴んだ。海軍はすぐに対抗策を講じてサウスダコタ級戦艦に続いてアイオワ級戦艦を12隻建造することとした。そして1941年12月。日米は戦端を開いたが戦列に加わっていたのは巨大戦艦ではなく、”巨大空母”であった。
表紙はNavalArtというゲームの画像で、動画投稿者の大和桜花さんに作っていただきました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる