落ち武者・歴史は知らない理系リーマン、化学チートで戦国を駆ける

ディエゴ

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包囲されたはじめての街

1590年4月22日・新型炮烙玉スタート

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射出器の試射があってから4日、鋳物師・治郎右衛門から連絡があり、ついに総ガラスの蒸留器が完成したという。

さっそく、指導員を任せる風魔の者5名を連れ見に行った。

治郎右衛門は眼の下に隈ができていた。さぞかし無理をしたことだろう。だが、表情はとても良い。満足の行く物ができたのだろう。

「治郎右衛門、体は大丈夫か?大分無理したようだな」

『二曲輪様、大丈夫です。お陰様でかなりの自信作ができましたぜ』

そう言って、にぃと笑った治郎右衛門の顔は隈取をした歌舞伎役者のようだった。

まずは、指導員を紹介する。

「この5人は、実際の作業を指導監督する者達だ。皆の者、こちらが治郎右衛門、小田原自慢の鋳物師だ」

『二曲輪丁助だ。治郎右衛門殿よろしくお願いする』

『同じく戊助だ。治郎右衛門殿よろしく頼む』

『二曲輪己助だ』

『同じく庚助だ』

『同じく辛助だ』

5人其々自己紹介し、作業場に案内してもらう。

そこには、まるで現代の工場のような光景が広がっていた。

竈の上に釣鐘大のガラス容器が載っている。

治郎右衛門の説明が始まる。

『この容器の蓋はこのガラスの取っ手を回すことで取り外すことができます。見ての通り、蓋もガラス製で蓋真ん中から伸びたガラス管を通ってこちらの容器まで蒸留した気体を流します』

隣にも小ぶりなガラス器があり両者を繋ぐガラス管は青銅製の支柱によって地面から支えられている。

『こちらの小型のガラス器は二重構造になってます。内部は蒸留器と繋がっていて、外部の器には適宜水を注いで蒸留物を冷やしていきます』

『蒸留された結果は自動的に、この真ん中の容器に。冷却に使用した水はこの栓をあけることで、この大きな桶に落ちる仕組み』

そう言いながら治郎右衛門は、手のひら大の赤いガラス玉を取り出した。

『窯の上のガラス器は不透明で中に液体がどれくらい残ってるのかよくわかりません。そこでこのガラス玉が使います。こいつぁ弁柄を混ぜて焼いた後、細工師に頼んで内部を空洞にしたガラス玉です。こいつなら、液体の上に浮かぶし赤いのでこのガラス器でも内部残量が測れるって寸法です』

実によく考えてあるなぁと思っていると、治郎右衛門がまたにぃと笑った。

『実は今回の目玉はここからでさぁ。竈ってのは火入れと温度維持が一番大変なんです。かと言って、窯に火を入れたまま、残量が少ないからって蓋を開けるのは、今回のような物騒な品物扱うんんじゃあ危険過ぎます。そこで、おい!』

治郎右衛門の声に促されるれ工房の作業員達が一斉に竈から離れた所にある櫂のような木を動かし始めた。

あ!あ!俺たち二曲輪衆の声がハモった。「『地面が動いた!!』」

まるでいたずらを成功させたような顔で治郎右衛門が言う。

『こいつは、石臼の要領を応用した物で、ああやって大木を動かすことで窯を移動させることが出来ます。窯の下は石ですから耐熱性も問題ありません。細工師と必死で考えた自信作ですどうです?』

なるほど、よく見ると地面全体が動いているのでではなく、窯の下だけが動いている。つまり回っているのは円というより巨大な石の輪だ。

その証拠に窯が動いて下部が空いても、蒸留器は大きな支柱に支えられ安定している。

『こうして、火の入った窯を反対側に移動させ、そこにも同じ蒸留設備を設けることで、火を落とさず蒸留を続けることができるって寸法でさぁ』

『それと、この窯、蒸留用に窯の上部をくり抜いた窯でさぁ。これで蒸留器に熱を伝えやすくなります』

これは凄い。俺には全く考えつかなかったな。

「凄いな。よく考え付いたな。しかし、これ幾つくらい作れるんだ。時に大きな石臼の仕掛けは作るのに手間がかかりそうだが」

『蒸留器は、全ての部品の型をとってあるので量産に問題ありません。石臼も石工師によると作るの自体は問題ないようです。ただ、重さがあるので実際の作業場までの運搬の方を気にしてました。何しろ蒸留器も含めれば全体で結構な大きな設備です。城下にも潜んでいる筈の敵の間者に勘付かれるのではないか?邪魔されるのではないか?と心配してました』

「うむ、そこは我らの専門分野だ。決して邪魔はさせんから安心して欲しい」
「皆はどうだ?何か質問あるか?」

その後、丁助らが治郎右衛門にいくつか質問し、視察を終了した。
(史実での小田原陥落まで、あと75日)
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