落ち武者・歴史は知らない理系リーマン、化学チートで戦国を駆ける

ディエゴ

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包囲されたはじめての街

1590年6月23日・八王子城の戦い

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6月22日夜、そろそろ日が替わろうかとういう時刻に北条氏照を主将とする北条軍およそ2万が八王子城に到着した。天候は生憎の霧である。

小田原城を出た時は1万5千だったが、勝ち馬に乗ろうとする野武士らが合流してきたため、八王子に着いた時には2万の大軍となっていた。

だが、時すでに遅し、既に敵方の総攻撃が始まっていた。

斥候によると、既に大手と搦手が破られ、城内に多数の敵兵がなだれ込んでいるとのことだった。

氏照は隊を二つに分け、自身は一万の兵で搦手を、副将・氏房にはやはり一万の兵で大手側から、それぞれ敵の背後を突くことにした。バリスタと新型炮烙玉はそれぞれ等分に分けた。

また、氏照は本体の指揮を重臣・間宮綱信にまかせ、自らは近習200名にバリスタ2器・新型炮烙玉20個・種子島・弾薬を持たせ、本丸に続く抜け道に忍び込んだ。近習の中には風魔の者2名がおり、斥候の役目を果たした。

氏照一行は、城北の搦手脇の獣道を進む。敵に悟られないよう松明は灯していない。代わりに、夜目の利く風魔の者を先頭に全員が縄で互いの体を綱ぎ、声が漏れないよう全員口を布で覆っている。鞭声粛粛ならぬ人声粛粛の様相である。だが、当主氏照が率先して口を覆っている以上文句を言う家臣はいない。こうして危険な深夜の霧山無灯火登山が始まった。

時折、狼、猪に出くわしたが先頭の風魔が新型種子島で処理すると、以後近寄って来なくなった。音の出ない上、大きな動作も不要な新型種子島は闇夜の行軍には非常に便利である。

登山すること、およそ2時間、ついに本丸曲輪に達する事ができた。

本丸内で最初に到達した曲輪は狩野一庵が守備していたが、突然の氏照の登場に大いに驚き、大いに泣いて出迎えた。

本丸城代の横地吉信もまた主の帰還に号泣して出迎えた。

氏照の妻・比左に至っては感極まって意識を失う有様だった。

また、本丸の松明をより盛大に灯し、狼煙を上げた。

これは、氏照が無事本丸に入ったという合図である。

このとき、城内に居たのはおよそ3千と言われているが、本丸には避難してきていた婦女子が主体で戦が出来る男衆は本丸内各曲輪合わせても500名程度だった。

暫く待ったが、敵の背後を突いていた主力からの攻撃は始まらない。やはり霧で狼煙は見えなかったのだろう。そこで、氏照が持ってきた2器のバリスタを其々、大手側、搦手側の敵に向け、本丸曲輪から新型炮烙玉を発射した。これで、味方の主力も気付く筈だ。

程なくして、敵後方からも、新型炮烙玉が射出爆発しているのが分かった。

この時、大手側は前田隊に加え元宿老・大道寺政繁ら豊臣方に降伏した元北条の部隊が詰めていた。搦手側は上杉景勝隊が担当していた。

今まで城を挟撃していた前田・上杉軍は一瞬にして敵から挟撃されることとなったのである。

しかも、鉄球を落としてくるだけの大筒とは違う、見たこともない爆発物が前後から降ってくる。瞬く間に両軍はパニックに陥った。

そこに、城内から種子島が一切に撃ちおろしかかった。

さらに、城兵から大手側に大道寺政繁がいることを聞いた氏照が、八つ手の葉を丸めた即席のメガホンで『大道寺よ、其方の新たな主、醜い猿めは既に冥府におるぞ!』『其方は卑しき謀反者の咎人か?それとも譜代の武士か?行動で示されよ!』

ただでさえ声の良く通る氏照の大声は、大手側の元北条の降将たちに大いに動揺をあたえた。しかも、搦手側同様、未知の爆発物が前後から降り注いできているのだ。

やがて、大道寺以下降将たち本丸側に傘を振って降伏の意思を示すと同時に、自軍横や後方にいる前田勢に攻め掛かった。前田側は味方の突然の裏切りに意表を突かれ後方からの間宮綱信隊が前田本陣を抑え利家・利長父子を拘束すると、程なくして降伏した。

一方、搦手側は霧の中細い尾根を一列縦隊で進軍していた中での突然の爆撃に、パニックになり足を踏み外し山裾を落ちていく兵が続出した。やがて天守側同様、後方の本陣を間宮綱信率いる本隊に強襲され、夜明け前には降伏した。

こうして、八王子城の戦いは一夜の内に北条方の勝利で幕を閉じた。

奇しくも、6月23日は正史で八王子城が陥落し多数の婦女子が自刃、或いは滝に身を投げた日でもあった。
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