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第二章 相思相愛編
ルーファスの訪室
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ダニエラが大怪我をした話はルーファスの耳にも入った。
「ダニエラが大怪我を?」
ルーファスは本を読んでいた手を止めた。
「そうらしいですよ。後宮は今、それで大騒ぎです。しかも、それが殿下の呪いだ!って皆決めつけているんですよ!何でもかんでも呪いのせいにするなって話ですよ!」
怒りながらそう言うルカを横目に、ルーファスは顎に手を置いて考えた。
「…その前にダニエラがミレーヌと一緒にいたというのは本当か?」
「詳しい事はよく分からないですけど、ダニエラ様とミレーヌ様が口論している所にリスティーナ様が割って止めたそうですよ。そしたら、ダニエラ様が呪いが移る!って叫んで逃げて行ったって話です。
呪いが移るなんて出鱈目なのに酷くないですか!?大体、呪いが移るなら、ロジャーさんや僕が無事な訳ないでしょう!ちょっと考えれば分かる事なのに…、」
「……。」
ルーファスは側室として嫁いだミレーヌと初めて顔を合わせた時の事を思い出した。
『初めまして。殿下。ミレーヌといいます。』
弱視のルーファスはあの時、ミレーヌの顔を認識できなかった。
だが、目が見えなくてもルーファスにははっきりと分かった。ミレーヌは恐らく…、
ルーファスはすぐに本を閉じて、立ち上がった。
「え?殿下?どちらへ?」
「少し用事ができた。すぐに戻る。」
「え、ちょ…!待って下さい!せめて、護衛を…!」
ルカの言葉を最後まで聞かずにルーファスはそのまま後宮に向かった。
ルーファスが向かった先はダニエラの部屋だった。
「る、ルーファス殿下!?ど、どうして、こちらに…!?」
ルーファスの姿に侍女が悲鳴を上げ、恐怖で顔が引き攣った。
「ダニエラは?」
ルーファスが訊ねると、侍女はあからさまに目を逸らし、尋常じゃない位に震えた。
「ヒイッ!だ、ダニエラ様はもうお休みになられてます!い、医者からは安静にするように言われてますので…、」
言外に帰れと言ってくる侍女の言葉にルーファスは無視をした。
ダニエラの姿はない。恐らく、治療を終えて、奥の寝室で休んでいるのだろう。
ルーファスはグルリ、と室内を見回した。ふと、浴室の方に目を向ける。そして、迷いのない足取りで浴室に向かった。
「ここか…。」
ルーファスは浴室に入り、割れた鏡を目にした。破片は片付けたのか、床にもう破片は落ちていない。
だが、鏡は割れたままだ。
鏡に近付き、手を触れる。…微かに魔力の反応を感じる。しかも、この魔力は…。
ルーファスは目を細めた。
「リスティーナ様。ルーファス殿下がお見えになられました。」
きた。リスティーナは心臓がドキドキしながら、彼を出迎えた。
「殿下。お待ちしていました。」
ルーファスは部屋に入ってすぐリスティーナに近付くと、
「俺と別れた後、ダニエラと揉めたと聞いたが…。大丈夫だったか?」
「大丈夫です。私が勝手に出しゃばってしまっただけですので…、」
「怪我は?」
「平気です。どこも怪我はしていませんから。」
「そうか。」
ルーファスがホッとしたように安堵した表情を浮かべる。心配してくれたんだ…。
「とりあえず…、一旦座るか。」
「はい。」
リスティーナはルーファスに促されるままにソファーに座った。
「あの…、ハーブティーを用意していますが…、良ければ一緒にいかがですか?」
「ああ。」
「では、ご用意しますね。」
リスティーナは嬉しそうにハーブティーを用意した。
ハーブティーを淹れて、落ち着いた所でルーファスは口を開いた。
「ダニエラが大怪我を負ったらしいな。俺の呪いのせいだと騒がれているが、君は何か言われたりしなかったか?その…、俺の呪いが移ったとか…。」
「大丈夫ですよ。ダニエラ様には似たような事を言われましたが、それはダニエラ様だけです。私の侍女も普段通りに接してくれてます。」
「そうか。気にするなと言われても、中々難しいかもしれないが、ダニエラの言う事は気にしなくていい。こちらから関わらなければ、あれは害のない女だ。何か言われたら、俺にすぐに言ってくれ。」
「ありがとうございます。殿下。」
心配してくれているんだ。嬉しい。
「ですが、ダニエラ様の怪我の原因は一体、何だったのでしょうか?それが何だか気になってしまって…、」
ピクッとルーファスは眉を顰めた。が、それは一瞬ですぐに何事もなかったようにお茶を一口、飲むと、
「俺にも原因はよく分からない。ただ、あれは呪いの力とは別のものだ。俺が力を使ったら、身体に負担がかかるからすぐに分かる。だが、今日は身体には何の変化もなかった。だから、ダニエラが怪我をしたのは本当に偶然だ。空気や気圧の変化で鏡や窓が割れるという事は稀にある。きっと、そういった自然現象が偶然、重なってしまっただけの話だろう。」
「そうなんですね…。偶然であんなことも起きるんですね。」
聞いたことはないが、他に原因は考えられないし、そうなのだろう。でも、こういった不思議な現象が起こったら、全部殿下のせいにされてしまうのは何だか、悔しい。
「今回の件はミレーヌがダニエラを刺激しすぎたのが原因だ。君が気にすることはない。」
「え?」
唐突な言葉にリスティーナはキョトンとした。
「浮かない顔をしていたから、あの二人の事が気になっているのかと思ったんだが…、違ったのか?」
リスティーナはハッとした。そうか。私が浮かない顔をしてから…、本当は無関係の殿下が周りから誤解されていることが悔しいなと考えていたのだが、それを面と向かった言うのは恥ずかしい。
確かにあの二人の事が気になっていたのも事実なのでリスティーナは否定せずに頷いた。
「は、はい!その通りです。あの…、殿下はダニエラ様とミレーヌ様の間に何があったのかご存じなのですか?」
「詳しくは知らないがある程度の事情は把握している。恐らく、ミレーヌがイグアスと密会したのがダニエラにバレたのだろう。」
「ミレーヌ様が?イグアス殿下と?そんな事をするような方には見えませんでしたけど…、」
何となく、イグアス殿下絡みだと思っていたが、リスティーナの想像とは少し違った。私と同じように無理矢理迫られたのだと思っていたけど…、違ったの?
「ミレーヌはああ見えて、したたかな女だ。ここに嫁いだ時から、一か月足らずでイグアスと接触して、それからずっと関係が続いている。今でもその関係は続いて、定期的に密会している仲だ。」
「え!?」
衝撃的な事実にリスティーナは仰天した。
「今まで上手く隠していたのに何かの拍子でダニエラにバレたのだろうな。
密会している所を見られたか、あるいはわざとイグアスがダニエラに喋ったのか…。
あいつは昔から、自分を巡って女同士が牽制したり、競い合う姿を見るのが好きだからな。」
意外過ぎる。ミレーヌ様は見るからに清純で可憐な美少女そのものなのに…。
男を知らない無垢な乙女というミレーヌ様のイメージがガラガラと崩れ落ちた。
まさか、ミレーヌ様までも不貞を犯していたなんて…。正直、ダニエラ様とイグアス殿下の関係を聞いた時以上の驚きだ。
「ああなったのは、ミレーヌにも責任がある。それに、君が心配しなくても、あれは見た目ほど、柔な女じゃないから大丈夫だ。」
確かにミレーヌ様にも非はあったかもしれない。
でも…、だからといって、あんなにミレーヌ様を痛めつけるなんて…。
そもそも、ダニエラ様だって不貞を犯しているのに。
リスティーナは偽善者、と言った時のミレーヌの顔が目に焼き付いて離れない。
「でも…、あの時のミレーヌ様はまるで…、」
「どうした?」
「ッ!い、いいえ!何でもありません。」
リスティーナはハッとして、首を横に振った。
そうだ。それより、私は殿下に伝えないといけない話があったんだ。気を取り直して、リスティーナはルーファスに話しかけた。
「そうでした!私…、殿下にお伝えしたいことがあるんです。」
「俺に?」
「はい!実は…、今日、図書室でアーリヤ様にお会いして…、」
リスティーナはアーリヤとの出来事を簡単に説明した。アーリヤの名が出た時、ルーファスは一瞬だけ眉を顰めた。
「それで…、アーリヤ様が言ってくれたんです。光の聖女様の力なら、殿下の呪いを解いてもらう事ができるのではないかって。」
「光の聖女フィオナのことか。…確かに光の聖女の魔力なら、もしかしたら、俺の呪いも解けるかもしれない。」
「はい!教会と王家は協力関係にありますし、王家からお願いすればきっと…!」
リスティーナの言葉にルーファスは首を横に振った。
「無理だ。恐らく、聖女の協力を得ることはできない。」
「ど、どうしてですか!?だって、聖女様はローゼンハイム国の聖教会にいるのでしょう?王家から殿下の呪いを解くようにお願いすれば聖女様だってすぐに…!」
「問題は聖女じゃない。聖教会の聖職者達が問題なんだ。聖女を俺の下に派遣することは教会の上層部が許さないだろう。彼らにとって、聖女は大精霊の加護を受けた特別な存在だ。そして、聖教会の象徴でもある。
一度だけ、王家から教会に頼んだことがある。だが、その頼みは断られた。
万が一でも、俺の呪いが移ってしまって聖女の身に何かあっては…、というのが理由だそうだ。
一度、断られているんだ。恐らく、何度頼んだ所で同じことだろう。」
「そんな…!?殿下の呪いは人に移るものじゃないのに…!」
「呪いが移るというのはあくまでも建前だ。要するに教会の連中は俺のような不浄な存在を聖女に近付けたくないんだ。俺と聖女を引き合わせることで聖女の格が下がるとか、教会の名に傷がつくとか考えているのだろうな。」
「そんな理由で!?殿下が死ぬかもしれないっていうのに名誉や評判の方が大事だというのですか!?」
何て酷い!命よりも大事な物はない。そんな事、子供でも分かるのに…!彼らには心がないのだろうか。
「…すまない。折角、君がここまでしてくれたというのに…。」
「そんな…!謝らないで下さい!殿下は悪くありません!」
彼は何も悪くないのに…。それなのに、謝るルーファスの姿を見ていると、リスティーナは切ない気持ちになった。
「ダニエラが大怪我を?」
ルーファスは本を読んでいた手を止めた。
「そうらしいですよ。後宮は今、それで大騒ぎです。しかも、それが殿下の呪いだ!って皆決めつけているんですよ!何でもかんでも呪いのせいにするなって話ですよ!」
怒りながらそう言うルカを横目に、ルーファスは顎に手を置いて考えた。
「…その前にダニエラがミレーヌと一緒にいたというのは本当か?」
「詳しい事はよく分からないですけど、ダニエラ様とミレーヌ様が口論している所にリスティーナ様が割って止めたそうですよ。そしたら、ダニエラ様が呪いが移る!って叫んで逃げて行ったって話です。
呪いが移るなんて出鱈目なのに酷くないですか!?大体、呪いが移るなら、ロジャーさんや僕が無事な訳ないでしょう!ちょっと考えれば分かる事なのに…、」
「……。」
ルーファスは側室として嫁いだミレーヌと初めて顔を合わせた時の事を思い出した。
『初めまして。殿下。ミレーヌといいます。』
弱視のルーファスはあの時、ミレーヌの顔を認識できなかった。
だが、目が見えなくてもルーファスにははっきりと分かった。ミレーヌは恐らく…、
ルーファスはすぐに本を閉じて、立ち上がった。
「え?殿下?どちらへ?」
「少し用事ができた。すぐに戻る。」
「え、ちょ…!待って下さい!せめて、護衛を…!」
ルカの言葉を最後まで聞かずにルーファスはそのまま後宮に向かった。
ルーファスが向かった先はダニエラの部屋だった。
「る、ルーファス殿下!?ど、どうして、こちらに…!?」
ルーファスの姿に侍女が悲鳴を上げ、恐怖で顔が引き攣った。
「ダニエラは?」
ルーファスが訊ねると、侍女はあからさまに目を逸らし、尋常じゃない位に震えた。
「ヒイッ!だ、ダニエラ様はもうお休みになられてます!い、医者からは安静にするように言われてますので…、」
言外に帰れと言ってくる侍女の言葉にルーファスは無視をした。
ダニエラの姿はない。恐らく、治療を終えて、奥の寝室で休んでいるのだろう。
ルーファスはグルリ、と室内を見回した。ふと、浴室の方に目を向ける。そして、迷いのない足取りで浴室に向かった。
「ここか…。」
ルーファスは浴室に入り、割れた鏡を目にした。破片は片付けたのか、床にもう破片は落ちていない。
だが、鏡は割れたままだ。
鏡に近付き、手を触れる。…微かに魔力の反応を感じる。しかも、この魔力は…。
ルーファスは目を細めた。
「リスティーナ様。ルーファス殿下がお見えになられました。」
きた。リスティーナは心臓がドキドキしながら、彼を出迎えた。
「殿下。お待ちしていました。」
ルーファスは部屋に入ってすぐリスティーナに近付くと、
「俺と別れた後、ダニエラと揉めたと聞いたが…。大丈夫だったか?」
「大丈夫です。私が勝手に出しゃばってしまっただけですので…、」
「怪我は?」
「平気です。どこも怪我はしていませんから。」
「そうか。」
ルーファスがホッとしたように安堵した表情を浮かべる。心配してくれたんだ…。
「とりあえず…、一旦座るか。」
「はい。」
リスティーナはルーファスに促されるままにソファーに座った。
「あの…、ハーブティーを用意していますが…、良ければ一緒にいかがですか?」
「ああ。」
「では、ご用意しますね。」
リスティーナは嬉しそうにハーブティーを用意した。
ハーブティーを淹れて、落ち着いた所でルーファスは口を開いた。
「ダニエラが大怪我を負ったらしいな。俺の呪いのせいだと騒がれているが、君は何か言われたりしなかったか?その…、俺の呪いが移ったとか…。」
「大丈夫ですよ。ダニエラ様には似たような事を言われましたが、それはダニエラ様だけです。私の侍女も普段通りに接してくれてます。」
「そうか。気にするなと言われても、中々難しいかもしれないが、ダニエラの言う事は気にしなくていい。こちらから関わらなければ、あれは害のない女だ。何か言われたら、俺にすぐに言ってくれ。」
「ありがとうございます。殿下。」
心配してくれているんだ。嬉しい。
「ですが、ダニエラ様の怪我の原因は一体、何だったのでしょうか?それが何だか気になってしまって…、」
ピクッとルーファスは眉を顰めた。が、それは一瞬ですぐに何事もなかったようにお茶を一口、飲むと、
「俺にも原因はよく分からない。ただ、あれは呪いの力とは別のものだ。俺が力を使ったら、身体に負担がかかるからすぐに分かる。だが、今日は身体には何の変化もなかった。だから、ダニエラが怪我をしたのは本当に偶然だ。空気や気圧の変化で鏡や窓が割れるという事は稀にある。きっと、そういった自然現象が偶然、重なってしまっただけの話だろう。」
「そうなんですね…。偶然であんなことも起きるんですね。」
聞いたことはないが、他に原因は考えられないし、そうなのだろう。でも、こういった不思議な現象が起こったら、全部殿下のせいにされてしまうのは何だか、悔しい。
「今回の件はミレーヌがダニエラを刺激しすぎたのが原因だ。君が気にすることはない。」
「え?」
唐突な言葉にリスティーナはキョトンとした。
「浮かない顔をしていたから、あの二人の事が気になっているのかと思ったんだが…、違ったのか?」
リスティーナはハッとした。そうか。私が浮かない顔をしてから…、本当は無関係の殿下が周りから誤解されていることが悔しいなと考えていたのだが、それを面と向かった言うのは恥ずかしい。
確かにあの二人の事が気になっていたのも事実なのでリスティーナは否定せずに頷いた。
「は、はい!その通りです。あの…、殿下はダニエラ様とミレーヌ様の間に何があったのかご存じなのですか?」
「詳しくは知らないがある程度の事情は把握している。恐らく、ミレーヌがイグアスと密会したのがダニエラにバレたのだろう。」
「ミレーヌ様が?イグアス殿下と?そんな事をするような方には見えませんでしたけど…、」
何となく、イグアス殿下絡みだと思っていたが、リスティーナの想像とは少し違った。私と同じように無理矢理迫られたのだと思っていたけど…、違ったの?
「ミレーヌはああ見えて、したたかな女だ。ここに嫁いだ時から、一か月足らずでイグアスと接触して、それからずっと関係が続いている。今でもその関係は続いて、定期的に密会している仲だ。」
「え!?」
衝撃的な事実にリスティーナは仰天した。
「今まで上手く隠していたのに何かの拍子でダニエラにバレたのだろうな。
密会している所を見られたか、あるいはわざとイグアスがダニエラに喋ったのか…。
あいつは昔から、自分を巡って女同士が牽制したり、競い合う姿を見るのが好きだからな。」
意外過ぎる。ミレーヌ様は見るからに清純で可憐な美少女そのものなのに…。
男を知らない無垢な乙女というミレーヌ様のイメージがガラガラと崩れ落ちた。
まさか、ミレーヌ様までも不貞を犯していたなんて…。正直、ダニエラ様とイグアス殿下の関係を聞いた時以上の驚きだ。
「ああなったのは、ミレーヌにも責任がある。それに、君が心配しなくても、あれは見た目ほど、柔な女じゃないから大丈夫だ。」
確かにミレーヌ様にも非はあったかもしれない。
でも…、だからといって、あんなにミレーヌ様を痛めつけるなんて…。
そもそも、ダニエラ様だって不貞を犯しているのに。
リスティーナは偽善者、と言った時のミレーヌの顔が目に焼き付いて離れない。
「でも…、あの時のミレーヌ様はまるで…、」
「どうした?」
「ッ!い、いいえ!何でもありません。」
リスティーナはハッとして、首を横に振った。
そうだ。それより、私は殿下に伝えないといけない話があったんだ。気を取り直して、リスティーナはルーファスに話しかけた。
「そうでした!私…、殿下にお伝えしたいことがあるんです。」
「俺に?」
「はい!実は…、今日、図書室でアーリヤ様にお会いして…、」
リスティーナはアーリヤとの出来事を簡単に説明した。アーリヤの名が出た時、ルーファスは一瞬だけ眉を顰めた。
「それで…、アーリヤ様が言ってくれたんです。光の聖女様の力なら、殿下の呪いを解いてもらう事ができるのではないかって。」
「光の聖女フィオナのことか。…確かに光の聖女の魔力なら、もしかしたら、俺の呪いも解けるかもしれない。」
「はい!教会と王家は協力関係にありますし、王家からお願いすればきっと…!」
リスティーナの言葉にルーファスは首を横に振った。
「無理だ。恐らく、聖女の協力を得ることはできない。」
「ど、どうしてですか!?だって、聖女様はローゼンハイム国の聖教会にいるのでしょう?王家から殿下の呪いを解くようにお願いすれば聖女様だってすぐに…!」
「問題は聖女じゃない。聖教会の聖職者達が問題なんだ。聖女を俺の下に派遣することは教会の上層部が許さないだろう。彼らにとって、聖女は大精霊の加護を受けた特別な存在だ。そして、聖教会の象徴でもある。
一度だけ、王家から教会に頼んだことがある。だが、その頼みは断られた。
万が一でも、俺の呪いが移ってしまって聖女の身に何かあっては…、というのが理由だそうだ。
一度、断られているんだ。恐らく、何度頼んだ所で同じことだろう。」
「そんな…!?殿下の呪いは人に移るものじゃないのに…!」
「呪いが移るというのはあくまでも建前だ。要するに教会の連中は俺のような不浄な存在を聖女に近付けたくないんだ。俺と聖女を引き合わせることで聖女の格が下がるとか、教会の名に傷がつくとか考えているのだろうな。」
「そんな理由で!?殿下が死ぬかもしれないっていうのに名誉や評判の方が大事だというのですか!?」
何て酷い!命よりも大事な物はない。そんな事、子供でも分かるのに…!彼らには心がないのだろうか。
「…すまない。折角、君がここまでしてくれたというのに…。」
「そんな…!謝らないで下さい!殿下は悪くありません!」
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