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第五章 再会編
食べ歩き
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「リスティーナ。何か気になる本でも見つけたのか?」
いつの間にかルーファスが戻ってきていて、すぐ傍まで来ていたことに気付かなかった。
リスティーナはルーファスに自分が持っている本を見せた。
「ルーファス様!見て下さい。この前、ルーファス様に話したオッドアイの女の子が主人公の童話を見つけたんです!」
「へえ。これが…。」
ルーファスはリスティーナが持っている本を興味深げに見つめた。
「成程。確かに挿絵に載っている少女はオッドアイだな。色は俺とは違うが。」
「はい。この童話に出てくる女の子は黄色と緑のオッドアイなんです。とっても綺麗ですよね。王子様が一目惚れしてしまうのも分かる気がします。」
リスティーナがニコニコと嬉しそうに話すと、ルーファスは眩しそうに目を細めた。
「ルーファス様?」
「ッ、な、何でもない。それより、もう一つ持っているその本はどんな話なんだ?」
「こっちは灰塗れの少女、エマという童話です。これも実話を基にして作られた話なんですよ。」
「灰塗れの少女、エマ…。ああ。テーゼ国の代表的な作品だな。確か、その絵本のモデルになっているのは、クライド王の正妃、エマ妃がモデルらしいな。」
「!そうです。よくご存じですね。」
「有名な話だからな。折角の機会だし、買っていくか。」
「でも、ここでお金を使ってしまったら、この後の買い物でお金が足りなくなってしまうかもしれないので…、」
「何を言っている。君に金を出させるつもりはない。本は俺が買うから、遠慮するな。」
「ええ!?そ、そんな!ルーファス様にそこまでしてもらう訳には…、」
「俺も買いたい本があるし、丁度いい。他にも気になる本があるなら、選ぶといい。」
「で、でも…、」
確かにこの本は欲しい。だけど、ルーファス様にお金を払わせるのはあまりにも申し訳ない。
やっぱり、ここは私が我慢して…、
そんなリスティーナの心中を知ってか知らずかルーファスは、
「実を言うと、今日の為にロジャーからかなりの額を預かっているんだ。今まで俺は小遣いを貰っても使い道がなくて、使わずに貯めていたら、それが結構な額になっていたらしくてな…。
ロジャーには、この金でリスティーナに好きな物を買ってあげて、美味しい物を食べさせてあげるようにと言われている。ここで買わなかったら、後で俺がロジャーに怒られてしまう。だから、リスティーナ。俺を助けると思って、ここは俺に払わせてくれ。」
「ルーファス様…。」
リスティーナはルーファスの真意に気が付いた。
私が気兼ねなく買い物を楽しめるようにわざとそう言ってくれているんだ。
「それに、俺も君が選んだ本に興味があるんだ。」
そう言われると、リスティーナは我慢していた気持ちを抑えることができなくなった。
リスティーナはルーファスの好意に甘えることにした。
「ありがとうございます。ルーファス様。」
「ほら。」
「わ…!ありがとうございます!」
会計をすませたルーファスがリスティーナに本を渡した。
リスティーナは嬉しそうにギュッと童話の本を握り締めた。
そんなリスティーナを見て、ルーファスは微笑んだ。
「荷物になるだろうから、それは預かろう。」
「え、そんな…。大丈夫ですよ。そんなに重くありませんから…。」
ルーファス様の荷物が増えてしまうと思い、リスティーナは断ろうとするが、
「大丈夫だ。」
ルーファスはスッと本に触る。すると、本がパッと消えた。
「えっ!?消えた!?」
ま、魔法?手品?リスティーナは困惑した。
「収納魔法だ。俺が作った空間魔法に一時的に収納しているだけだ。消えたわけじゃないから、安心しろ。」
「す、凄いです…!私、収納魔法なんて初めて見ました。収納魔法ってとっても便利な魔法なんですね!」
リスティーナは初めて見た魔法に目をキラキラさせた。
どうやら、ルーファス様はいつの間にか収納魔法も習得していた様だ。
本当に凄い。こんなに短期間で次々と魔法を習得していくなんて…。
「リスティーナ。そろそろ、腹が減っただろう?何か食べるか?」
「はい!」
そろそろお昼時だ。確かにお腹も空いてきた。
「どこかお店に入りますか?それとも、食べ歩きにしますか?」
「食べ歩き…?」
どうやら、ルーファスは食べ歩きをしたことがない様だ。
よく考えれば、ルーファス様は王族だ。庶民がする食べ歩きなんてしたことがないのだろう。
「屋台や出店で売られているものを買って、食べるという方法もありますけど…、庶民の食べ物しかないのでルーファス様のお口に合うかどうか…。どこかレストランで食べましょうか?」
リスティーナはそう提案するが…、
「君は食べ歩きをしたことがあるのか?」
「はい。ありますよ。エルザやアリア、スザンヌと街に出た時に四人で食べ歩きをよくしていました。」
メイネシアでも、時々、王宮を抜け出してはエルザ達と一緒に街に出かけていた。
楽しかったなあ。エルザやアリアはよく食べて、お店の人がびっくりしていたっけ。
当時の事を思い出し、リスティーナは思わず微笑んだ。
それを見たルーファスは…、
「食べ歩きで。」
「え?でも…、ルーファス様の好みに合うかどうか…、」
「食べ歩きにしよう。俺も以前から興味があったんだ。」
「そ、そうですか?」
あまりにもきっぱりとそう言うものだから、リスティーナはそれ以上、反対することなく、頷いた。
リスティーナはルーファスと一緒に市場の方に向かった。
市場には野菜や果物屋さん、お肉屋や魚屋の他に出店や屋台が並んでいた。
食欲をそそるいい匂いが辺りに漂っている。
どれにしようかな。リスティーナはルーファスが食べられそうな物を物色していく。
ルーファス様はお肉が好きだし、串焼きなら、食べれるかな。
同じく肉好きのエルザとアリアもこれが大好物なんだよね。
リスティーナは串焼きをチョイスした。
ルーファスは屋台で買い物をしたことがないのか、相場の倍以上の金貨を差し出して、これで足りるか?と言ったり、売っている商品を全部買おうとしたりして、店主を仰天させたりしていたので、リスティーナが慌てて、横から会計をした。
ルーファス様って、完璧なイメージがあるけど、意外と世間慣れしていないんだ。
何だか可愛い。ルーファス様の新たな一面を知ることができて、嬉しいな。
「串焼きなんて、初めて食べたが中々、いけるな。」
ルーファスは串焼きを気に入ったようでもう五本目に突入している。
こんなに気に入ってくれるなんて思わなかったな。
でも、良かった。ルーファス様、美味しそうに食べてる。
リスティーナはそんなルーファスを見て、微笑ましく思った。
串焼き…。エルザ達と街に遊びに行った時、一緒によく食べたっけ…。
アリアとエルザは十本も串焼きを買って食べてたなあ。二人共、元気にしているかな?
リスティーナも串焼きの肉をモグモグと咀嚼しながら、故郷に思いを馳せていると、
「リスティーナ。」
「?はい。」
名を呼ばれ、ルーファスに視線を向ければ、スッとルーファスの手がリスティーナの唇の端を拭った。
「ソースがついていたぞ。」
そう言って、ルーファスはペロッと指についたソースを自分の舌で舐めとった。
その妖艶な仕草にリスティーナはドキッとした。
「や、やだ…!恥ずかしい…。すみません。ルーファス様…。」
「君は普段、食事のマナーは完璧なのに、こういう所もあるんだな。…可愛い。」
耳元に囁かれた台詞にリスティーナはドキマギした。
昨日から、ルーファスにはドキドキさせられっぱなしだ。
何だか、私ばっかり、ドキドキしているような気がする。
私もルーファス様をドキドキさせられないかな?
今度、エルザに男の人をドキドキさせられる方法を聞いてみよう。
ルーファスは結局、あの後、十本も串焼きを食べたが、まだまだ食べるつもりのようなので次は何にしようかと視線を巡らせた。
「あ、肉まん。ルーファス様。あれも買って食べてみませんか?」
「肉まん…?初めて聞く食べ物だな。あの白い丸い食べ物か?」
「はい!あの中にお肉が入っているんです。食べた途端に口の中に肉汁が溢れて、美味しいんですよ。」
「へえ。美味そうだな。」
ルーファスはそう言って、肉まんを買ってくれた。リスティーナが屋台で購入していたのを見て、やり方を覚えたのか今度はきちんと買ってくることができた。
「これが、肉まんか…。本当だ。美味いな。確かに噛むと、肉汁が…。」
ルーファスは肉まんも気に入ったのかその後、五個も食べていた。
その時、リスティーナは一つの屋台に目がいった。
「あ、たこ焼き!ルーファス様、あの…、あそこの屋台にある物を買ってきてもいいですか?」
「たこ、焼き?あの茶色い丸い食べ物か?見たところ、たこなんて入ってないようだが…、」
「あの中にたこが入っているんです。美味しいんですよ。私も大好きなんです。」
「そうなのか。じゃあ、一つ買ってみるか。」
嬉しい…!たこ焼きなんて、久しぶり…!リスティーナはワクワクした気持ちでたこ焼きを口の中に頬張る。
美味しい…!すごく、懐かしい気がする。この、ソースの深み…。最高…。
「この上にのってるのは何だ?何かの生き物、なのか?うねうねと動いているが…、それにこの細かい緑色の粉と茶色と白いソースは一体…?」
ルーファスは少しだけ戸惑ったようにたこ焼きを凝視する。初めて見た人は確かに驚くかもしれない。
「それは鰹節です。魚肉を煮熟してから乾燥させたものですよ。温かい食べ物の上にかけると、生き物のように動くんですけど、これはそういう食べ物なんでちゃんと食べられますよ。
緑色の粉は青海苔と呼ばれるものです。かかっているソースはマヨネーズとソースです。異国の調味料なので珍しいですけど、美味しいんですよ。あ、熱いので気を付けて食べて下さいね。」
「あ、ああ…。」
ルーファスは恐る恐る、とでもいうようにたこ焼きを口にする。
「ッ!美味い…。これがたこ焼き…。」
「美味しいですよね。私も大好きなんです。」
「この、ソースも美味いな。このたこ焼きとよく合う。」
「はい!たこ焼きはやっぱり、マヨネーズとソースが一番合うんです。」
「異国にはこんなにも美味しい食べ物があったんだな。知らなかった…。今度、この調味料を取り寄せるか。」
「!それは素敵ですね。」
ルーファスはたこ焼きも気に入ったのか、あの後、十舟も買って食べていた。
す、凄い量…!一体、あの細い身体のどこに入るんだろう。
こんなに食べても太らないルーファス様が羨ましい。
きっと、ルーファス様もエルザと同じで食べても太らない体質なんだろう。
それにしても、ルーファス様はたこ焼きを食べていても様になるなあ。
リスティーナは屋台で買ったリンゴ飴を舐めながら、たこ焼きを食べているルーファスを見た。
「リスティーナ。それは?」
「これは、りんご飴です。甘くて、美味しいんですよ。ルーファス様も一口どうですか?」
そう言って、リスティーナはりんご飴をルーファスに差し出した。
あ…、しまった。さすがにはしたないよね。エルザ達とよく一口交換し合ったりしていたから、つい…。
リスティーナは慌てて手を引っ込めようとするが…、
それより、早くにルーファスがりんご飴に齧りついた。シャクッと音を当てて、咀嚼する音をさせて、ルーファスはりんご飴を嚥下した。
「ほんとだ。確かに甘いな。初めて食べたが、中々いけるな。」
「よ、良かったです。」
「リスティーナはりんご飴が好きなのか?」
「はい!見た目も宝石みたいに綺麗ですし、味も美味しいですし…。何回食べても飽きなくて…。」
その後もパン、焼いたとうもろこし、揚げ菓子を次々と買っては食べるルーファス。食べ歩きをかなり気に入ったようだ。
そんなルーファスを見て、リスティーナも思わず笑顔になった。
凄く、楽しい…。男の人とデートしたのは初めてだけど、こんなにも楽しいものなのね。
「リスティーナはもう食べないのか?まだ全然食べてないじゃないか。」
ルーファスはソーセージを食べながら、そう訊ねてきた。
「もうお腹いっぱいで…。」
「君は少食だな。本当にそれだけで足りるのか?」
「いえいえ!普通ですよ!」
完全に今までと立場が逆になっている。
今まではルーファス様の方が食が細くて、心配していた位だったのに…。
確かにルーファス様と比べたら、少食かもしれないけど…。自分があんなに食べたら、お腹が破裂してしまう。見ているだけでお腹いっぱいだ。
いつの間にかルーファスが戻ってきていて、すぐ傍まで来ていたことに気付かなかった。
リスティーナはルーファスに自分が持っている本を見せた。
「ルーファス様!見て下さい。この前、ルーファス様に話したオッドアイの女の子が主人公の童話を見つけたんです!」
「へえ。これが…。」
ルーファスはリスティーナが持っている本を興味深げに見つめた。
「成程。確かに挿絵に載っている少女はオッドアイだな。色は俺とは違うが。」
「はい。この童話に出てくる女の子は黄色と緑のオッドアイなんです。とっても綺麗ですよね。王子様が一目惚れしてしまうのも分かる気がします。」
リスティーナがニコニコと嬉しそうに話すと、ルーファスは眩しそうに目を細めた。
「ルーファス様?」
「ッ、な、何でもない。それより、もう一つ持っているその本はどんな話なんだ?」
「こっちは灰塗れの少女、エマという童話です。これも実話を基にして作られた話なんですよ。」
「灰塗れの少女、エマ…。ああ。テーゼ国の代表的な作品だな。確か、その絵本のモデルになっているのは、クライド王の正妃、エマ妃がモデルらしいな。」
「!そうです。よくご存じですね。」
「有名な話だからな。折角の機会だし、買っていくか。」
「でも、ここでお金を使ってしまったら、この後の買い物でお金が足りなくなってしまうかもしれないので…、」
「何を言っている。君に金を出させるつもりはない。本は俺が買うから、遠慮するな。」
「ええ!?そ、そんな!ルーファス様にそこまでしてもらう訳には…、」
「俺も買いたい本があるし、丁度いい。他にも気になる本があるなら、選ぶといい。」
「で、でも…、」
確かにこの本は欲しい。だけど、ルーファス様にお金を払わせるのはあまりにも申し訳ない。
やっぱり、ここは私が我慢して…、
そんなリスティーナの心中を知ってか知らずかルーファスは、
「実を言うと、今日の為にロジャーからかなりの額を預かっているんだ。今まで俺は小遣いを貰っても使い道がなくて、使わずに貯めていたら、それが結構な額になっていたらしくてな…。
ロジャーには、この金でリスティーナに好きな物を買ってあげて、美味しい物を食べさせてあげるようにと言われている。ここで買わなかったら、後で俺がロジャーに怒られてしまう。だから、リスティーナ。俺を助けると思って、ここは俺に払わせてくれ。」
「ルーファス様…。」
リスティーナはルーファスの真意に気が付いた。
私が気兼ねなく買い物を楽しめるようにわざとそう言ってくれているんだ。
「それに、俺も君が選んだ本に興味があるんだ。」
そう言われると、リスティーナは我慢していた気持ちを抑えることができなくなった。
リスティーナはルーファスの好意に甘えることにした。
「ありがとうございます。ルーファス様。」
「ほら。」
「わ…!ありがとうございます!」
会計をすませたルーファスがリスティーナに本を渡した。
リスティーナは嬉しそうにギュッと童話の本を握り締めた。
そんなリスティーナを見て、ルーファスは微笑んだ。
「荷物になるだろうから、それは預かろう。」
「え、そんな…。大丈夫ですよ。そんなに重くありませんから…。」
ルーファス様の荷物が増えてしまうと思い、リスティーナは断ろうとするが、
「大丈夫だ。」
ルーファスはスッと本に触る。すると、本がパッと消えた。
「えっ!?消えた!?」
ま、魔法?手品?リスティーナは困惑した。
「収納魔法だ。俺が作った空間魔法に一時的に収納しているだけだ。消えたわけじゃないから、安心しろ。」
「す、凄いです…!私、収納魔法なんて初めて見ました。収納魔法ってとっても便利な魔法なんですね!」
リスティーナは初めて見た魔法に目をキラキラさせた。
どうやら、ルーファス様はいつの間にか収納魔法も習得していた様だ。
本当に凄い。こんなに短期間で次々と魔法を習得していくなんて…。
「リスティーナ。そろそろ、腹が減っただろう?何か食べるか?」
「はい!」
そろそろお昼時だ。確かにお腹も空いてきた。
「どこかお店に入りますか?それとも、食べ歩きにしますか?」
「食べ歩き…?」
どうやら、ルーファスは食べ歩きをしたことがない様だ。
よく考えれば、ルーファス様は王族だ。庶民がする食べ歩きなんてしたことがないのだろう。
「屋台や出店で売られているものを買って、食べるという方法もありますけど…、庶民の食べ物しかないのでルーファス様のお口に合うかどうか…。どこかレストランで食べましょうか?」
リスティーナはそう提案するが…、
「君は食べ歩きをしたことがあるのか?」
「はい。ありますよ。エルザやアリア、スザンヌと街に出た時に四人で食べ歩きをよくしていました。」
メイネシアでも、時々、王宮を抜け出してはエルザ達と一緒に街に出かけていた。
楽しかったなあ。エルザやアリアはよく食べて、お店の人がびっくりしていたっけ。
当時の事を思い出し、リスティーナは思わず微笑んだ。
それを見たルーファスは…、
「食べ歩きで。」
「え?でも…、ルーファス様の好みに合うかどうか…、」
「食べ歩きにしよう。俺も以前から興味があったんだ。」
「そ、そうですか?」
あまりにもきっぱりとそう言うものだから、リスティーナはそれ以上、反対することなく、頷いた。
リスティーナはルーファスと一緒に市場の方に向かった。
市場には野菜や果物屋さん、お肉屋や魚屋の他に出店や屋台が並んでいた。
食欲をそそるいい匂いが辺りに漂っている。
どれにしようかな。リスティーナはルーファスが食べられそうな物を物色していく。
ルーファス様はお肉が好きだし、串焼きなら、食べれるかな。
同じく肉好きのエルザとアリアもこれが大好物なんだよね。
リスティーナは串焼きをチョイスした。
ルーファスは屋台で買い物をしたことがないのか、相場の倍以上の金貨を差し出して、これで足りるか?と言ったり、売っている商品を全部買おうとしたりして、店主を仰天させたりしていたので、リスティーナが慌てて、横から会計をした。
ルーファス様って、完璧なイメージがあるけど、意外と世間慣れしていないんだ。
何だか可愛い。ルーファス様の新たな一面を知ることができて、嬉しいな。
「串焼きなんて、初めて食べたが中々、いけるな。」
ルーファスは串焼きを気に入ったようでもう五本目に突入している。
こんなに気に入ってくれるなんて思わなかったな。
でも、良かった。ルーファス様、美味しそうに食べてる。
リスティーナはそんなルーファスを見て、微笑ましく思った。
串焼き…。エルザ達と街に遊びに行った時、一緒によく食べたっけ…。
アリアとエルザは十本も串焼きを買って食べてたなあ。二人共、元気にしているかな?
リスティーナも串焼きの肉をモグモグと咀嚼しながら、故郷に思いを馳せていると、
「リスティーナ。」
「?はい。」
名を呼ばれ、ルーファスに視線を向ければ、スッとルーファスの手がリスティーナの唇の端を拭った。
「ソースがついていたぞ。」
そう言って、ルーファスはペロッと指についたソースを自分の舌で舐めとった。
その妖艶な仕草にリスティーナはドキッとした。
「や、やだ…!恥ずかしい…。すみません。ルーファス様…。」
「君は普段、食事のマナーは完璧なのに、こういう所もあるんだな。…可愛い。」
耳元に囁かれた台詞にリスティーナはドキマギした。
昨日から、ルーファスにはドキドキさせられっぱなしだ。
何だか、私ばっかり、ドキドキしているような気がする。
私もルーファス様をドキドキさせられないかな?
今度、エルザに男の人をドキドキさせられる方法を聞いてみよう。
ルーファスは結局、あの後、十本も串焼きを食べたが、まだまだ食べるつもりのようなので次は何にしようかと視線を巡らせた。
「あ、肉まん。ルーファス様。あれも買って食べてみませんか?」
「肉まん…?初めて聞く食べ物だな。あの白い丸い食べ物か?」
「はい!あの中にお肉が入っているんです。食べた途端に口の中に肉汁が溢れて、美味しいんですよ。」
「へえ。美味そうだな。」
ルーファスはそう言って、肉まんを買ってくれた。リスティーナが屋台で購入していたのを見て、やり方を覚えたのか今度はきちんと買ってくることができた。
「これが、肉まんか…。本当だ。美味いな。確かに噛むと、肉汁が…。」
ルーファスは肉まんも気に入ったのかその後、五個も食べていた。
その時、リスティーナは一つの屋台に目がいった。
「あ、たこ焼き!ルーファス様、あの…、あそこの屋台にある物を買ってきてもいいですか?」
「たこ、焼き?あの茶色い丸い食べ物か?見たところ、たこなんて入ってないようだが…、」
「あの中にたこが入っているんです。美味しいんですよ。私も大好きなんです。」
「そうなのか。じゃあ、一つ買ってみるか。」
嬉しい…!たこ焼きなんて、久しぶり…!リスティーナはワクワクした気持ちでたこ焼きを口の中に頬張る。
美味しい…!すごく、懐かしい気がする。この、ソースの深み…。最高…。
「この上にのってるのは何だ?何かの生き物、なのか?うねうねと動いているが…、それにこの細かい緑色の粉と茶色と白いソースは一体…?」
ルーファスは少しだけ戸惑ったようにたこ焼きを凝視する。初めて見た人は確かに驚くかもしれない。
「それは鰹節です。魚肉を煮熟してから乾燥させたものですよ。温かい食べ物の上にかけると、生き物のように動くんですけど、これはそういう食べ物なんでちゃんと食べられますよ。
緑色の粉は青海苔と呼ばれるものです。かかっているソースはマヨネーズとソースです。異国の調味料なので珍しいですけど、美味しいんですよ。あ、熱いので気を付けて食べて下さいね。」
「あ、ああ…。」
ルーファスは恐る恐る、とでもいうようにたこ焼きを口にする。
「ッ!美味い…。これがたこ焼き…。」
「美味しいですよね。私も大好きなんです。」
「この、ソースも美味いな。このたこ焼きとよく合う。」
「はい!たこ焼きはやっぱり、マヨネーズとソースが一番合うんです。」
「異国にはこんなにも美味しい食べ物があったんだな。知らなかった…。今度、この調味料を取り寄せるか。」
「!それは素敵ですね。」
ルーファスはたこ焼きも気に入ったのか、あの後、十舟も買って食べていた。
す、凄い量…!一体、あの細い身体のどこに入るんだろう。
こんなに食べても太らないルーファス様が羨ましい。
きっと、ルーファス様もエルザと同じで食べても太らない体質なんだろう。
それにしても、ルーファス様はたこ焼きを食べていても様になるなあ。
リスティーナは屋台で買ったリンゴ飴を舐めながら、たこ焼きを食べているルーファスを見た。
「リスティーナ。それは?」
「これは、りんご飴です。甘くて、美味しいんですよ。ルーファス様も一口どうですか?」
そう言って、リスティーナはりんご飴をルーファスに差し出した。
あ…、しまった。さすがにはしたないよね。エルザ達とよく一口交換し合ったりしていたから、つい…。
リスティーナは慌てて手を引っ込めようとするが…、
それより、早くにルーファスがりんご飴に齧りついた。シャクッと音を当てて、咀嚼する音をさせて、ルーファスはりんご飴を嚥下した。
「ほんとだ。確かに甘いな。初めて食べたが、中々いけるな。」
「よ、良かったです。」
「リスティーナはりんご飴が好きなのか?」
「はい!見た目も宝石みたいに綺麗ですし、味も美味しいですし…。何回食べても飽きなくて…。」
その後もパン、焼いたとうもろこし、揚げ菓子を次々と買っては食べるルーファス。食べ歩きをかなり気に入ったようだ。
そんなルーファスを見て、リスティーナも思わず笑顔になった。
凄く、楽しい…。男の人とデートしたのは初めてだけど、こんなにも楽しいものなのね。
「リスティーナはもう食べないのか?まだ全然食べてないじゃないか。」
ルーファスはソーセージを食べながら、そう訊ねてきた。
「もうお腹いっぱいで…。」
「君は少食だな。本当にそれだけで足りるのか?」
「いえいえ!普通ですよ!」
完全に今までと立場が逆になっている。
今まではルーファス様の方が食が細くて、心配していた位だったのに…。
確かにルーファス様と比べたら、少食かもしれないけど…。自分があんなに食べたら、お腹が破裂してしまう。見ているだけでお腹いっぱいだ。
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