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夢の中で乙女ゲームの世界っぽいところに迷い込みました
お前と離れたくないからだ
しおりを挟むやれやれ。
今日も落ち着かない一日が終わった、と朝霞が家の玄関に入って、ホッとしたとき。
誰かが朝霞が後ろ手で閉めようとした玄関扉を抑えた。
「こんちはー。
廣也さんー、来たよー」
と朝霞の頭の上から、佐野村一太が中に向かい呼びかける。
「おう、上がれー」
と二階から、先に帰っていたらしい兄の声がした。
「あら、一太くん、いらっしゃい~」
と母親がリビングから顔を覗けて言う。
「こんにちは。
お邪魔しますー」
と母と兄には愛想のいい佐野村が言った。
「いやあ、相変わらず可愛いなあ、麻里恵さん」
ともう閉まってしまったリビングのガラス扉を見ながら、佐野村は言う。
麻里恵というのは、朝霞の母親だ。
ふわふわっとした髪質の髪をいつもサイドでひとつに束ねている、色白で童顔の麻里恵は、よく朝霞の姉と間違われる。
「俺、幼稚園のころ、絶対、麻里恵さんと結婚するって思ってたんだよな~」
「あ、そう」
と言いながら、朝霞は階段を上がる。
後ろをついてくる佐野村に言った。
「ねえ、今、一緒に着いたってことは、もしかして、佐野村もおんなじ電車に乗ってた?」
違う車両に友だちといた、と佐野村は言う。
「駅着いても、お前から見えない位置にいた。
お前に話しかけても、話しかけられても、クラスの男連中に恨まれそうだからな」
なんだ、そりゃ、と思いながら、
「そんなに私が嫌なら、絶交すれば?」
と言って、朝霞は行こうとしたが、佐野村に強く腕を引っ張られる。
佐野村、こんなに手、大きかったっけ、と、つい、どきりとしていると、佐野村は、朝霞を見下ろし、言ってきた。
「お前と絶交なんてするわけないだろ」
と。
「わからないのか、朝霞。
なんで、俺が苦手な勉強を頑張って、お前と同じ高校に行ったのか。
……お前と離れたくないからだよ」
「え――」
「だって、お前と離れたら、廣也さんと接点なくなっちゃうじゃないかっ。
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「……もう帰って、佐野村」
と言って、
「俺が呼んだんだ、バカッ!」
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