オタク姫 ~100年の恋~

菱沼あゆ

文字の大きさ
53 / 65
新しい王子が現れました

……立派なクソゲーだ

しおりを挟む
 


 すっきりしたのは一瞬だった――。



 自分の気持ちも言ったし、キッパリ振られたし。

 これで、ずっきりだ、と授業が始まった瞬間、佐野村は思っていた。

 でも……と黒板を見ながら、佐野村は思う。

 でも、俺が振ってくれって言ったから、振られたんだし。

 考えてみてくれって言ったら、どうだったんだろう、とつい、考えてしまう。

 朝霞は十文字先輩が好きみたいだけど、十文字先輩はそうでもないかもしれない。

 朝霞が振られたら、朝霞はフリーじゃないか。

 ……いやいや。
 だからと言って、朝霞が泣くところは見たくないし。

 そう思いながらも、頭の中では、十文字に振られて泣く朝霞を自分を抱きしめ、慰めていた。

 ぐはーっ、なんなんだ、これはっ、と佐野村は叫び出しそうになる。

 なんにも自分の感情がコントロールできんっ。

「いやいや。
 お前、それが恋ってものだろうよ」
と廣也がいたら、言ってくれたことだろうが、いなかった。

 まあ、それを知っても、どうにもならないことなのだが。

 佐野村は授業中ノートを見たまま、頭の中だけで、のたうっていた。

 こんな学校、入れただけで奇跡なのに。

 落第したら、どうしてくれる朝霞ーっ、と朝霞を罵りながら。




 どうしたらいいんだろう。

 全然行き詰まらないんだが……。

 夜、一応、勉強を終えたあと、十文字と約束した通り、ゲームを始めていた朝霞だが。

 霧立ちのぼるロンドンのような街を犬の顔した人間が歩き回る不思議なミステリーが、何故だか、全然、行き詰まらない。

 目の前に雰囲気あるメスの犬が立ちはだかった。

 その女性(?)が事件に関わる話をしゃべり出す前に、とりあえず、殴り倒す。

 女性が落とした荷物を拾う。

 確認する。

 アイテムを得た。

 ……立派なクソゲーだ。

 っていうか、この外道なゲームを行き詰まらない自分が怖いっ。

 いや、始めて何回かは、すぐにゲームオーバーになったのだが。

 そうか。
 ちょっと考えられないような選択肢を選んでいったら、進むんだな、と思って、一番問題がありそうな選択肢を選んでいくと、スムーズにゲームが進み出したのだ。

 ミステリー的には話がしっかりしていて面白いのだが。

 話を進める手段がひどすぎるっ。

 これに行き詰まらないのは女子として、問題がないだろうか。

 先輩は、連絡ないな、と不審に思っているかもしれない。

 行き詰まりました、と言うべきだ、女子としてっ、と朝霞はチラと横に置いているスマホを見た。

 だが、しかし、何処で行き詰まったことにするべきなのだろうか、女子として。

 道ゆく人をいきなり殴り倒すところ?

 証拠を握っていそうな人の家の窓を叩き割って、侵入するところ?
と迷っていると、誰かが部屋のドアをノックした。

 廣也だった。

「やっぱ、ゲームしてんな。
 勉強しろよ、朝霞姫。

 一位から転がり落ちると、みんなガッカリするぞ」

 もしや、先輩は二位の人が私に遣わしたハニートラップだったのか?

 などと暇なことを考えている間に、廣也が部屋に入ってきた。

 朝霞は、とりあえず、セーブして頼む。

「おっ、おにいちゃんっ、ちょっとこのゲームやってみてっ」

 はあ?
と廣也は言う。

 いいから、と最初から廣也にやってもらう。

 廣也はしょっぱなからつまづき、何度やっても進まない。

 ……私の方がひとでなしだと言うことだろうか、と思いながら、朝霞はスマホをつかんだ。

『夜分遅くに失礼します』という可愛いスタンプを送ったあとで、

「先輩、勉強中ですか?」
と送る。

「大丈夫だ。
 ゲームやってんのか?

 行き詰まったか?」
とすぐに返ってきた。

 嬉しそうだな……。

 その後、兄が詰まるたびに、十文字に、どうしたらいいんですか? と送信する。

 十文字は勉強の合間にだろうが、すぐに答えてくれた。

「頼りになるなっ、十文字っ。
 惚れそうだぜっ」
とすっかりゲームにはまった廣也が言う。

「よしっ、朝までにクリアするぞっ、朝霞、十文字っ」

「お兄ちゃん、今、テスト期間中……」

 今度は朝霞の方が言う番だった。



しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

アリア

桜庭かなめ
恋愛
 10年前、中学生だった氷室智也は遊園地で迷子になっていた朝比奈美来のことを助ける。自分を助けてくれた智也のことが好きになった美来は智也にプロポーズをする。しかし、智也は美来が結婚できる年齢になったらまた考えようと答えた。  それ以来、2人は会っていなかったが、10年経ったある春の日、結婚できる年齢である16歳となった美来が突然現れ、智也は再びプロポーズをされる。そのことをきっかけに智也は週末を中心に美来と一緒の時間を過ごしていく。しかし、会社の1年先輩である月村有紗も智也のことが好きであると告白する。  様々なことが降りかかる中、智也、美来、有紗の三角関係はどうなっていくのか。2度のプロポーズから始まるラブストーリーシリーズ。  ※完結しました!(2020.9.24)

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!! お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。 皆様、お気に入り登録ありがとうございました。 現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。 辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

処理中です...