オタク姫 ~100年の恋~

菱沼あゆ

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新しい王子が現れました

肝心なところで、フリーズかっ

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 その夜、朝霞は夢の中で思っていた。

 先輩はきっと、お兄ちゃんみたいに、あのゲームやって、
「わかりませんっ、教えてくださいっ」
とか言う女の子の方が好みなんだろうな。

 いや、お兄ちゃん、女子じゃないけど……。

 ガンガンひとりで進んでいく私みたいなのは、きっと先輩の好みじゃない。

 そんなことを思いながら、朝霞はドレスのまま夜道を歩き、あの洞穴に向かっていた。

 王子が城から消えていたからだ。

 だが、洞穴にも今日は王子の姿はなかった。

 なんとなく、あのイバラの中の城に行く。

 イバラは自分が切り捨てたときのままだった。

 朝霞は、イバラのトンネルをくぐり、城に入った。

 塔に上がると、王子は糸車の部屋の寝台に横になっていた。

 本を読んでいるようだ。

「王子、なんでまた、そこで寝てるんですか。

 さては私に起こされたのが嫌で、他の美しいお姫様に起こし直してもらおうとしてますね」

 すると、王子は本を片手で持ったまま、朝霞に言ってくる。

「お前、普通の姫がこんなイバラの中を斬り進んでやってくるとでも思っているのか。

 静かだから本を読んでいるだけだ」

 読書を邪魔された王子は起き上がり、本を伏せてこちらを見て言う。

「それを思えば、最初から俺を起こす姫はお前しかいなかったのかもしれないな」

「でも、王子は私と100年の恋には落ちてないんですよね?」

 朝霞は寝台に腰掛け、王子を見つめる。

 王子はなにか言おうと口を開いたが、そのまま言葉は出てこなかった。

 それどころか、瞬きもしない。

 肝心なところで、フリーズかっ、と思ったところで、目が覚めた。



 朝の支度をしながら、朝霞は思う。

 王子がフリーズしてしまった原因は、私かもしれないな、と。

 きっと、恋に落ちてはいないと王子の口からハッキリ聞きたくなかったからだ。

 朝霞は鏡に映る、夢の中のように着飾っていない自分を見ながら、思わず叫んだ。

「難しいな~、リアルの恋って~っ」

 いや、これが本当に恋なのかも、まだわからないが……。

 ゲームなら、恋に落ちる相手も自分で決められるし。

 こういう展開になったら、ハッピーエンドだってわかるのにな~と渋い顔をしていると、

「わかったわかった」
と呟きながら、後ろから寝不足気味の廣也が現れた。

「お前の心の雄叫びはよくわかったから、いい加減、そこを退け。
 俺、あれから勉強したんだぞ。

 寝ぼけて書き間違えたら、呪ってやる」
と言いながら、廣也は顔を洗っている。

「……ご、ごめん。
 今度なんか奢るよ」
と苦笑いしながら、朝霞は、そそくさとその場を後にした。 



「先輩、寝不足ですか? 大丈夫ですか?」

 電車で並んでつり革を持つ十文字に朝霞はそう訊いた。

 十文字は鼻の付け根の横、目頭近くのくぼみを指で押さえている。

「いや、大丈夫だ。
 俺は今、充足感にあふれている。

 誰かと一緒にあのゲームをクリアしたかったんだ」

「……テスト期間中にやらなくてもよかった気がするがな」
と朝霞の横でやはり、眠そうな顔をしている廣也が呟く。

「そういえば、お前も途中から参加してたが、何処から参加してたんだ?」
と十文字が廣也に訊いていた。

 ……最初からです、先輩。

 すっかりゲームにハマった廣也が途中で、十文字に電話してしまったのだ。

 三人でゲームの話に興じている間、佐野村がぼんやり窓から海を眺めていたので、声をかけようとしたら、十文字が先にかけていた。

「どうした、佐野村。
 お前もやりたかったか。

 今度、呼んでやるからな」

「いや……それでじゃないですよ」
と呟くように答える佐野村に、十文字が言う。

「お前もなんだか寝不足そうだな。
 押してみろ、ここ」
とさっき自分が押していた鼻の付け根の横を押してみさせている。

「疲れ目に効く晴明せいめいのツボだ」

 気がつけば、つり革を持って一列に並び、全員で鼻の付け根を押していた。

 朝の電車でちょっと変な集団になってしまったな、と思いながら、学校に行った。



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