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派遣秘書のとんでもない日常
特別扱いしないよう言われています
しおりを挟む寺坂の後をちょこまかついていきながら、あまりは、沈黙していると緊張するな、と思っていた。
「あのー」
とその広い背中を見ながら、話しかけてみる。
「寺坂さんは私のこと、ご存知なんですか?」
「はい。
支社長にお聞きしてましたから。
お見合いの話があったとき」
そこで、何故か寺坂は笑いかける。
「南条さん、何故、お見合いの話、断られたんですか?
支社長を断る理由なんてないように思えるんですか」
その言葉に、この人、こう見えて、すごく犬塚さんを崇拝してるんだな、と思った。
何故断ったかなんて、この忠臣、寺坂に言おうものなら、無礼討ちにされてしまうかもしれないと思い、
「そ……それは秘密です」
と言うと、寺坂は、
「秘密ですか」
と大真面目に頷いてくる。
「あ、あのー、寺坂さんって、秘書の方なんですよね」
話を誤摩化すように、つい、そう訊くと、これまた大真面目に、
「皆様には、用心棒だと思われていますが、秘書です」
と寺坂は答えてきた。
そ、そうですね。
私もそう思ってしまいました……。
「支社長が南条さんを特別扱いされないようにとおっしゃられたので、私も人前ではそのように振る舞いますが、お気を悪くされませんように」
いやいや。
見合いはもう断りましたし、今の私は本当に一介のカフェ店員なので、特別扱いされる理由もそもそもないんですけどね、と思いながら聞いていた。
寺坂に連れられ、あまりは秘書室に入った。
おお、小綺麗な秘書室だ、と辺りを見回す。
この支社の建物自体が新しいので、何処もかしこもピカピカな感じだった。
支社というだけあって、そんなに秘書の人員も居ない。
というか、本来、もう少し少なめなのではないかと思うが、やはり、今は支社長でも、海里は社長の息子。
扱いも仕事量も違うのではないかと思った。
「二週間程、この秘書室で働いてもらいます。
南条あまりさんです」
寺坂がそう紹介してくれる。
二人の女性が頭を下げた。
ひとりは少し年配の女性で、ひとりは若くおとなしい感じだった。
寺坂が小声で言ってくる。
「……秘書室の方は、あらかじめ話してあるので。
ああ、カフェから派遣されたということだけですよ」
室長と女性らに頭を下げ、あまりは秘書室を出た。
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