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凶器を探しています
そこは謝れ
しおりを挟む琳が庭から店に戻ろうとしたとき、スマホが鳴った。
「あれ? 水宗さん。
もしかして、やっぱり、スコップがいるとか?」
着信表示を見て琳は笑ったが、一緒に店に入ろうとしていた将生に言われる。
「いや、そんなことでわざわざ電話してくるか?」
電話をとると、水宗が叫び出した。
「琳さん、お求めのものがっ!」
「え? お求めのもの?」
と琳は訊き返したが、そのセリフは単に、水宗の職業病だった。
琳が欲しがっているものだと思ったので、出ただけの言葉だった。
「今、犯人っぽい人に遭遇したんですっ」
「なんの犯人ですか?」
わかりませんっ、と水宗は言う。
声が聞こえているらしい将生が、
「なるほど。
天然な人だな」
と呟くのが聞こえた。
「なんの犯人だかわかりませんが、なにかの犯人っぽい人がっ。
なにか事件を起こしそうな感じのセリフを吐いて去っていきましたっ」
「どんな事件を起こしそうなんですか?」
「わかりませんが、私に向かって、
『あんたが悪いんだよ。
あんたのせいだ』
と言って去っていきました」
「……それは事件というより、水宗さんがその方になにかの恨みを買っているという話では」
それが全然、心当たりないんですよ~、と水宗は訴えてくる。
「でも、きっとなにかの事件に関係ある人ですっ。
だって、グレーのパーカーを着て、フードを目深に被ってたんですよ?
ああいうビジュアルの人は犯人ですっ」
……全国のグレーのパーカー着てる人と、販売してる人に謝れ、と思ってしまったが。
いつも水宗にミステリーの話をする自分にも責任の一端はあるかも、と思わなくもない。
「本当に、心当たりないんですよっ。
でも、一体、なんの犯人なんでしょうね?
通り魔ですかねっ?」
「……ある意味、そうかもしれないですね」
通りすがりの人に意味深なセリフを吐いて、心にさざ波を立てていく通り魔。
新しいな、と思いながら琳は、
「じゃあ、ともかく、一度うちにいらっしゃいますか?」
と水宗に訊いた。
「なにかで水宗さんが狙われてたらまずいですし。
例のスコップもお忘れのままですし。
それに……」
琳はそこで、チラ、と将生を見上げて言う。
「警察の方もいらっしゃいますしね」
「いや、俺は監察医なんだが……」
犯人は捕まえないし、男のボディガードもしないぞ、と将生に言われてしまった。
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