あやかし駄菓子屋商店街 化け化け壱花 ~ただいま社長と残業中です~

菱沼あゆ

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弐 当たりクジ

ある意味、タイムマシン……?

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「額怪我したんですよ、ほらー」

 夜。
 壱花は倫太郎と高尾に、前髪を持ち上げ、赤くなった額を見せる。

「どうしたの、それ」
と高尾に訊かれ、

「キーボードで打ったんです~」
と壱花は言った。

「キーボード?」
「ああ、パソコンの」

「どうやって打つの、それ」
と高尾は笑ったが、倫太郎は、

「仕事中、うたた寝なんかしてるからだ」
と言ってくる。

「あれっ?
 なんでご存知なんですか? 社長」
と壱花は驚いた。

「うつらうつらしてて、キーボードに額から落ちたんですよ。
 冨樫さんが冷ややかに見てただけだったのが、せめてもの救いです」

「それ、救いなの?」
と苦笑いした高尾に言われるが。

「いや、怒鳴られるよりマシかなーって」
と壱花は言った。

「俺が放っておけと言ったからかもしれないが。
 まあ、呆れて怒るのも面倒臭かったんだろうな」

 そう倫太郎が言ってくる。



 そのまま三人で店番をしていると、ガラガラと戸が開き、ちょんまげの人が入ってきた。

 明らかにお侍な格好している。

 綺麗な顔をしているので、一瞬、映画の撮影かと思ったが、そうではないだろう。

 どっきりの可能性もあるが、それを言うなら、この店自体がどっきりだ。

 というか、どっきりであって欲しい気もしている、と思いながら、壱花は倫太郎に訊いた。

「あれはあやかしですか?」

「いや、生活に疲れた藩士の人だ。
 たまに来る」
と無言で店内を見ているお侍さんを見ながら倫太郎は言う。

「此処の時間の流れはどうなってるんですか……」

 藩士の人は綺麗な色の飴玉を選ぶと、ありたけの金を置いて帰っていった。

 おそらく一円にも満たないが、倫太郎はそれで飴玉を売っていた。

 あの藩士の人にとって、たまに迷い込むこの店で買う甘いものが、心を癒す大切なものなのだろう。

 それをわかっているから、代金がたらなくても売っているのに違いない。

 社長、意外にいいとこあるな、と壱花は思った。

「江戸とつながったりもするんですね」

「いろんなところから迷い込む奴いるぞ。
 こんな毛唐けとうの菓子を売りおって、と言って斬りかかって来られたこともある」

「それ、よく助かりましたね」

「俺の愛用のワルサーで脅してやったら逃げたぞ」
 倫太郎は棚に飾ってある銃を取り出してくる。

「……それ、クジで一等のやつですよね」

 明らかなオモチャだが、この人の目つきの鋭さとか迫力で本物に見えたんだな、と壱花は思った。

 いろんなところからか……と思った壱花は、ハッとした。

「もしや、未来から来たりもするんですかっ?」
と叫んでしまう。

 倫太郎は少し考え、頷いていた。

「まあ、そういうこともあるかもな。

 今まで、これは未来から来たな~ってやつに会ったことはないんだが。
 気づいてないだけなのかもしれないし。

 だって、この先、そんなに服装や髪型が変わるとも思えないだろ。

 昭和の半ばくらいのサラリーマンが来ても、今の人と区別がつかないのと同じだよ。

 それに、未来って言っても、ちょっとした未来とかあるじゃないか。

 例えば、五分後の冨樫とがしが今、ここにやってきたとしても、それが未来の冨樫だとはわからないし」

 いやまあ、そりゃそうなんですけどね~、と壱花たちが笑っていたそのとき、富樫は店の外にいた。



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