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弐 当たりクジ
パフェと葉介
しおりを挟む「だから、パフェは嫌いだと言ったじゃないですか」
そう言いながら、なんの茶番だ、これは、と冨樫は思っていた。
俺が食べたパフェこんなのじゃないし。
確か、もっと小さなやつだった。
考えたの、社長だな。
これだからおぼっちゃまは……と思ったとき、パフェの向こうから声が聞こえてきた。
「食べなさい、葉介。
好きだったろ? パフェ」
言葉を出し終わる前に、その声を聞いてしまい、冨樫は固まる。
声自体はまったく違うのだが。
その口調が消えた父のものとそっくりだったからだ。
どうやら、高尾のようだ。
今日は狐の面もかぶっていないので、その姿はまったく見えない。
ただ声だけが聞こえてくる。
父とそっくりだというその姿は見えず、声も違うのに。
何故か父が乗り移ったかのように感じた。
「心配するな、葉介。
これ食べたら、また僕がいなくなるんじゃないかと思ってるだろ。
……大丈夫だ。
僕はあの山では死んでない」
父の口調で紡がれるその言葉に、ふいに泣きそうになったが、グッと堪える。
そのとき、ふいに高尾がいつもの口調に戻り、言ってきた。
「いや、ほんとに。
とりあえず、山では死んでないみたいだよ。
死体を見つける山のババが見つけなかったから」
またなんの妖怪なんだ、それは……。
っていうか、いきなり戻るな~っ、と思ったとき、あっ、こらっという顔をしている壱花の側から、高尾が更に軽い感じで言ってきた。
「だからさ。
今も、きっと何処かにいるよ、葉介のお父さん」
あやかしらしい無責任さだなと思うのに。
何故かホッとしている自分もいた。
あの日消えた父は、このあやかしたちのように、目には見えなくとも何処かで生きていて。
いつかふわりと現れるかもしれないし、現れないかもしれない。
そんな風に考えたら、何故だろう。
真面目にいろいろと考えていたのが莫迦らしくなってきた。
この適当な連中と父も同じだと思ったら、ひとり真剣に思い悩んでいることが本気で莫迦莫迦しくなったからなのか。
それとも、父も彼らのように気ままに、今も何処かで笑ってのんびり過ごしているのかもしれないと思ったからなのか。
ふいに高尾の姿が見えた。
改めて見る高尾は消えたときの父とまったく同じ顔をしていた。
初めてガラス越しに見たときのチャラさはまるでなく。
パフェの向こうから自分を眺めていた父がそうであったように、ただ穏やかに微笑んでいた。
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