あやかし駄菓子屋商店街 化け化け壱花 ~ただいま社長と残業中です~

菱沼あゆ

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肆 化け化けガム

冨樫のミス

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 次の日、会社の六十周年記念イベントの会議があった。

 企画事業部や営業からの提案のあと、秘書室からもひとつ案を出して、冨樫がスクリーンに映し出したデータの説明をしていたのだが。

 一枚、修正前のグラフが混ざっていた。

 社内の会議だし、
「すみません。
 違うデータが出てしまいました」
と言って、さっと変えるか、後回しにすればいいのに、冨樫はフリーズしている。

 ひー、冨樫さんっ。

 冨樫は自分でデータの入ったパソコンの操作をしながら、解説していたのだが、動かないので、壱花が黒子のように行って、さささとパソコンの中を調べ直し、最新のデータに切り替えた。



「……すまなかった、風花。
 あのピンバッジのことがなんだか心に引っかかっていて。

 またミスしてしまったと思った瞬間、フリーズしてしまったんだ」

 会議が終わったあと、みんなと一緒に後片付けをしていた壱花は、珍しく冨樫に謝られた。

 とは言っても、冨樫が止まったのは一瞬のことで。
 壱花がデータを直してすぐ、冨樫は何事もなかったかのように話し始めた。

 むしろ、さすがだなと壱花は思っていたのだが。

 冨樫は、とめどもないマイナス思考にはまっているようだった。

 そのとき、企画事業部の部長がやってきて、笑って壱花に言ってきた。

「いやいや、風花くん。
 君、なかなか素早いじゃないか。

 今まで、なんで君、秘書なのかなと思ってたんだが、いざってときの反応がいいねえ。

 秘書を出されたら、うちにおいで」
と能力を買われているんだか、いないんだか、わからないスカウトをされる。

 なにかをやらかして、秘書を追い出されること前提の話だからだ。

「今のは……喜んでもいいんですかね」
と笑顔で去りゆく、どっしりとした部長の背中を見て思わず呟いたとき、冨樫が吐き捨てるように呟いた。

「お前が他の部署にスカウトされるなんてっ。
 俺のミスにより、お前が認められて、お前がスカウトされるなんてっ。

 俺はお前以下なのかっ。
 俺はどれだけ駄目人間なんだっ!」

 冨樫さん……。
 自分を卑下ひげしているつもりなんでしょうが。

 一緒に私もおとしめられています、と思いながら壱花が、

「それ、冨樫さんがどの程度の駄目人間かは、私の駄目人間具合によりますよね~」
と力なく言ったとき、倫太郎がやってきた。

 話を聞いてたようだ。

「どうした、冨樫」

「社長、私は今まで、そこそこ社長のお役に立てていると思っていたんですが。

 実は私、風花以上の駄目人間だったんですよ」

 普段が完璧なだけに、ちょっとのミスで落ち込みが激しいな~と苦笑いする壱花の前で、

「なにを言う、冨樫」
と倫太郎は冨樫の肩をポン、と叩いた。

 壱花を手で示して言う。

「圧倒的に、こいつが駄目人間だ。
 風花がいなくても会社は回るが、お前がいないと回らない」

「あの~、社長。
 私、会社辞めてもいいですかね……?」

 今回はミスもしていないのに、この扱い……。

 壱花の方がおのれの存在意義を見失い、思わず、そう言っていた。


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