あやかし駄菓子屋商店街 化け化け壱花 ~ただいま社長と残業中です~

菱沼あゆ

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伍 百鬼夜行花札

ついに秘密がバレました

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「久しぶりだな、倫太郎」

 やってきた班目を見て、なにか濃い感じの人だな、と壱花は思う。

 かなりのイケメンだが、濃い。
 なにもかもが濃い。

 顔が濃いし、服装も濃いし、髪型も濃い感じがする。
 小粋な感じがするのも、逆にちょっとマフィアっぽくて、濃い。

 本人の発する気配のせいかもしれないが――。

 斑目は、内田建設の営業なのだと壱花に名乗った。

 いやいや。
 一足飛びに社長と会おうとする営業、どうなんだ。

 っていうか、こんな威圧感のある営業さんが来たら怖いんだが。

 ある意味、簡単に商談がまとまりそうではあるが……と思う壱花に倫太郎が、

「大学の同級生なんだ」
と教えてくれた。

 だが、斑目は、
「記憶を消去するな。
 中学も高校も一緒だろ。

 塾は小学校からな」
と倫太郎に文句をつける。

「えっ?
 じゃあ、一緒に駄菓子屋も行ったりされてました?」
と思わず訊いてしまい、

「いや、行ってないぞ。
 おいっ、倫太郎っ。
 俺を置いていったなっ」
と斑目が十年以上前のことで怒り出す。

「お前、帰り道違っただろうが……」
と言ったあとで、倫太郎は壱花に、

「こいつは内田建設の会長の孫だ」
と教えてくれる。

「そうっ。
 うちのジジイは厳しくて、お前もまずは一兵卒《いっぺいそつ》から頑張れとか言って、俺を普通に会社に放り込んだのに。

 こいつは、あっさりグループ会社の社長に収まって、ふんぞり返り。

 あまつさえ、女子社員を愛人にして好き放題してやがるっ」
と斑目は壱花を指差した。

 えっ? 私がですか?
 それとも、ただの一例として指差されましたか? 今、
と思う壱花の前で、

「斑目」
と厳しい口調で倫太郎は友の名を呼ぶ。

「俺にも好みってものがある。
 秘書で、いつも近くにいるからって安易に愛人にしたりはしないぞ。

 それに、うちには他にも美人秘書がたくさんいる。
 これは、ない」
と倫太郎は、それもどうなんだと思うようなことを織り混ぜつつ、キッパリと壱花愛人説を否定する。

「なにっ?
 愛人にしないのかっ?

 こんなに可愛いのにっ」
と斑目がまた壱花を指して言う。

「あ、お茶がまだでしたね。
 すぐにお持ちします」
と言って、壱花は出て行こうとした。

「待て」
と倫太郎に止められる。

「お前、なに機嫌よくなってんだ……」
と文句を言ってきた。

 いや、あなたは私が好みじゃないんですよね?

 いいじゃないですか、別に。
 褒められたら嬉しいですよ、やっぱり。

 たとえ、それがおべんちゃらでも、と思っていると、斑目が倫太郎を叱りはじめた。

「お前、そういう全面否定はどうなんだ。
 一、駄目出ししたら、九、褒めろよ」

 今時そのくらいじゃないと部下はついて来ないぞ、と斑目は言う。

 壱花は小さく拍手をした。

 が、その言葉を受けて、壱花を見つめた倫太郎は、
「褒める方は一も思いつかないんだが、どうしたら……?」
と小首を傾げ、呟きはじめる。

 あの、余計傷ついたんですけど。
 どうしてくれるんですか、斑目さん……と思う壱花の前で、斑目は主張する。

「ともかく、俺は見たんだ。
 お前がこの美人秘書と、朝、お前のマンションから出てくるところをっ!」

 美人秘書と連呼され、秘密がバレようとしているにも関わらず、うっかり、今日はいい日だ、などと呑気に思ってしまう。

「……見間違いじゃないのか」

 往生際悪く倫太郎は言ったが、
「いや。
 彼女で間違いない。

 俺はこの子、結構好みなんで、ハッキリ覚えてるっ!」
と斑目は言い出した。

 倫太郎が眉をひそめる。

「一緒に出社してたから、社員なんだろうとは思っていたが……。
 社長という立場を利用して、女子社員と交際なんて駄目だろうっ。

 ましてや、美人秘書なら、なおさら駄目だっ」

「いや、何故だ……」

「社長がそんなんじゃ、下の者に示しがつかないだろうがっ。
 お前、そんなことのために社長になったのかっ」

「違うぞ」
と冷静に倫太郎が言う。

「……なんでしょう。
 忠告に来られたというよりも。

 ただの私怨のような気がしてきましたよ」

「そうだな。
 おい、斑目、お前がそうしたかったんじゃないのか」
と倫太郎が訊いている。

 斑目さんは社長となって、美人秘書と付き合いたかったのでしょうかね……、
と思ったとき、斑目が言ってきた。

「ともかく、俺はお前がその立場を利用して、女子社員をいいようにしているのが気にくわんっ。

 俺の人脈を使って、お前のところのグループの役員たちに働きかけ、断固糾弾するっ。

 近頃はそういったことにうるさいからなっ。
 体面を気にして、お前も社長の座から引きずり下ろされることだろうっ。

 俺と一緒に一兵卒からやり直すがいいっ」

 一緒に下っ端からやりたかったのかな……?
と思う壱花の横で、倫太郎が、

「待て」
とまた言う。

「そもそも最初の設定が間違っている。
 こいつ、なにも俺のいいようにはなっていないぞ」
と壱花を見て言ってきた。




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