あやかし駄菓子屋商店街 化け化け壱花 ~ただいま社長と残業中です~

菱沼あゆ

文字の大きさ
82 / 176
伍 百鬼夜行花札

とりあえず、働いてこい

しおりを挟む

 次の日、倫太郎は会合に行った先で、斑目と出会った。

 会合が終わって、上から下りてきたときに、営業で訪れていたらしい斑目がにこやかに受付嬢と話していたのだ。

「倫太郎」
と逃げようとした倫太郎の前に立ちはだかり、斑目は笑顔で言ってくる。

「やあ、すまんすまん。
 ちょっと忙しくて、まだ、お前の悪評を広めてない」

「いや、別に広めてくれなくていいんだが……」
と言いかけると、

「そういえば、この間、あの子がなにか言ってたな」
と斑目が言う。

「あの子?」

「ほら、お前の彼女の」

 今日は脅すつもりがないせいか、愛人とは言わずに、そう言ってきた。

「壱花か。
 彼女じゃない。

 仕事終わりにみんなで、うちで呑んだだけだ」
と倫太郎は適当なことを言ってごまかそうとした。

「ほんとうに彼女じゃないのか?
 もったいないぞ」
と眉をひそめたあとで、

「いや、やっぱり、そんなことないだろう。
 あんな可愛かったら、俺なら立場を利用して付き合うぞ」
と言い出す。

「……つくづく最低な奴だな、斑目」
と言いながらも、いまいちこの友人のことは憎めない。

 明け透けにおのれの願望を語ってくるが、その分、裏がないので。

 なにを言われても、いろいろ勘ぐったりしなくていいからだろうかな……、
と倫太郎は思っていた。

「いや、その彼女が言ってたじゃないか。
 お前、俺を置いて、駄菓子屋に行ってたって」

「だから、置いてってない。
 帰る方向が違ったんだろ」
と言いながら考える。

 あのとき、こいつがいたら、こいつの方が余計なこと言って、店長になってたかもな、と。

 まあ、そしたら、壱花と並んで店にいるのは、こいつだったかもしれないわけだが――。

「まだあるのか? その駄菓子屋。
 今度連れてけよ」

 俺だけ行ったことないの、悔しいから、と斑目は言う。

「……あるが、疲れてるやつしか入店できない」

「なんだ、その入店基準。
 くたびれたスーツがドレスコードとか?」
とちょっと笑って斑目が訊いてくるので、

「そうだ。
 受付嬢とチャラチャラしてないで疲れてこい。
 話はそれからだ」
と言って、倫太郎は、さっさと玄関ロビーを出て行った。



しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

あまりさんののっぴきならない事情

菱沼あゆ
キャラ文芸
 強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。  充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。 「何故、こんなところに居る? 南条あまり」 「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」 「それ、俺だろ」  そーですね……。  カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。

芙蓉は後宮で花開く

速見 沙弥
キャラ文芸
下級貴族の親をもつ5人姉弟の長女 蓮花《リェンファ》。 借金返済で苦しむ家計を助けるために後宮へと働きに出る。忙しくも穏やかな暮らしの中、出会ったのは翡翠の色の目をした青年。さらに思いもよらぬ思惑に巻き込まれてゆくーーー カクヨムでも連載しております。

竜帝と番ではない妃

ひとみん
恋愛
水野江里は異世界の二柱の神様に魂を創られた、神の愛し子だった。 別の世界に産まれ、死ぬはずだった江里は本来生まれる世界へ転移される。 そこで出会う獣人や竜人達との縁を結びながらも、スローライフを満喫する予定が・・・ ほのぼの日常系なお話です。設定ゆるゆるですので、許せる方のみどうぞ!

リストラされた42歳、確率の向こう側へ。~なぜか俺の選択肢がすべて正解になる件~

RIU
ファンタジー
「君には今月いっぱいで席を空けてもらいたい」 42歳、独身、社畜。会社のために尽くしてきた柏木誠は、理不尽な理由でリストラされた。 絶望の中、雨の神社で野良猫を助けた彼は、不思議な光と共に【確率固定】という異能――「無意識に正解を選び続ける豪運」を手に入れる。 試しに買った宝くじは10億円当選。 復讐心に燃える元上司を袖にし、元天才投資家の美女をパートナーに迎えた柏木は、その豪運で現代社会を無双していく。 「俺の選択に間違いはない。なぜなら、確率の方が俺に合わせるからだ」 枯れたおじさんが資産と余裕を手に入れ、美女たちに頼られながら、第2の人生を謳歌する痛快サクセスストーリー!

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~

吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。 結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。 何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。

子持ち愛妻家の極悪上司にアタックしてもいいですか?天国の奥様には申し訳ないですが

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
胸がきゅんと、甘い音を立てる。 相手は、妻子持ちだというのに。 入社して配属一日目。 直属の上司で教育係だって紹介された人は、酷く人相の悪い人でした。 中高大と女子校育ちで男性慣れしてない私にとって、それだけでも恐怖なのに。 彼はちかよんなオーラバリバリで、仕事の質問すらする隙がない。 それでもどうにか仕事をこなしていたがとうとう、大きなミスを犯してしまう。 「俺が、悪いのか」 人のせいにするのかと叱責されるのかと思った。 けれど。 「俺の顔と、理由があって避け気味なせいだよな、すまん」 あやまってくれた彼に、胸がきゅんと甘い音を立てる。 相手は、妻子持ちなのに。 星谷桐子 22歳 システム開発会社営業事務 中高大女子校育ちで、ちょっぴり男性が苦手 自分の非はちゃんと認める子 頑張り屋さん × 京塚大介 32歳 システム開発会社営業事務 主任 ツンツンあたまで目つき悪い 態度もでかくて人に恐怖を与えがち 5歳の娘にデレデレな愛妻家 いまでも亡くなった妻を愛している 私は京塚主任を、好きになってもいいのかな……?

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

処理中です...