102 / 176
陸 京都あやかし地図
勝手になにかがスタートしたようです
しおりを挟む「此処、一条戻橋の辺りみたいですね」
結局、あの地図を広げて見ながら壱花は言った。
この地図のせいで飛ばされたようなので、確認のためだ。
まあ、地図を見なくとも、橋や立て看板に、一条戻橋と思いっきり書いてあるのだが。
「こんな時間にこんなところに来るなんて。
さあ、出てくださいと言わんばかりですね」
と冨樫が言う。
「一条戻橋って、死者が生き返るとか。
橋の下に式神がいるとか、いろいろ伝説があるところですよね」
そう言いながら、壱花は周囲を見回した。
橋の側の柳の木はそれっぽいが。
大きな建物に囲まれているし、橋の側には道路標識もあるし、ぱっと見、全然、普通の場所だ。
「安倍晴明が奥さんが式神が怖いというから、此処に住まわせてたんだったな。
……安倍晴明でさえ、奥さんには弱いんだな」
と呟きながら、倫太郎は橋の下を見ている。
そして、地図を広げている壱花を見て、おや? という顔をし、壱花の手をつかんで持ち上げた。
「……地図がある」
先程までなかったのに、地図の裏に、もうひとつの地図が現れていたようだった。
さっき居た場所に赤い光が灯っている。
唐傘お化けが居た場所だ。
そして、今居る一条戻橋の辺りがふたつ赤く点滅している。
「嫌な予感がするな……」
と倫太郎が呟いた。
「これ、もしや、近くになにかあやかしが居るというサインですかね?」
と言った冨樫に倫太郎は、
「居るんだろうよ。
だが、問題はそこじゃない」
と言い、地図を月に透かしてみている。
そこにあるかもしれない、なにかを確かめようとするように。
全員口には出さなかったが、なんとなく感じていた。
始まってはいけない、なにかが始まってしまったことを――。
今、此処に飛ばされ、赤い光が点滅している。
唐傘お化けが居たところが赤く点灯していることから言っても、此処にもなにか居るのは間違いない。
「もしかして……、これ、あやかしに遭遇しては、地図に光を点灯させていかないといけないとか?」
と壱花が言うと、
「壱花、あの化けギツネからもらったんだよな、この地図。
奴が何処から、これ持ってきたか聞いたか」
と倫太郎が訊いてきた。
「……そういえば、駄菓子屋の隅にあったようなこと言ってましたね」
「……それ、絶対まともな地図じゃないよな?」
倫太郎は地図を畳んでみようとしたようだったが、やはり、もう畳めない。
「あやかしを捕まえて……、というか。
あやかしに遭遇して歩かないと、この空間から出られないんですかね、もしかして」
そう呟いた壱花の横で、冨樫が、
「スマホの位置情報ゲームの走りみたいな地図ですね」
と言う。
そのとき、近くの建物の陰からこちらを見ている者が居るのに気がついた。
ぬっぺっぽうとちっちゃな烏天狗だ。
物陰から、あの人たち、なに? というように覗いている。
「居たーっ」
と壱花が走り出す。
ひっ、という顔をし、可愛い子天狗たちが逃げ出した。
冨樫が後ろで、
「……まるでこっちが妖怪だ。
いや、向こうから見たら、もともと、そうなのかもしれませんけどね」
と呟いていた。
0
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
あまりさんののっぴきならない事情
菱沼あゆ
キャラ文芸
強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。
充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。
「何故、こんなところに居る? 南条あまり」
「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」
「それ、俺だろ」
そーですね……。
カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。
芙蓉は後宮で花開く
速見 沙弥
キャラ文芸
下級貴族の親をもつ5人姉弟の長女 蓮花《リェンファ》。
借金返済で苦しむ家計を助けるために後宮へと働きに出る。忙しくも穏やかな暮らしの中、出会ったのは翡翠の色の目をした青年。さらに思いもよらぬ思惑に巻き込まれてゆくーーー
カクヨムでも連載しております。
リストラされた42歳、確率の向こう側へ。~なぜか俺の選択肢がすべて正解になる件~
RIU
ファンタジー
「君には今月いっぱいで席を空けてもらいたい」 42歳、独身、社畜。会社のために尽くしてきた柏木誠は、理不尽な理由でリストラされた。 絶望の中、雨の神社で野良猫を助けた彼は、不思議な光と共に【確率固定】という異能――「無意識に正解を選び続ける豪運」を手に入れる。
試しに買った宝くじは10億円当選。 復讐心に燃える元上司を袖にし、元天才投資家の美女をパートナーに迎えた柏木は、その豪運で現代社会を無双していく。
「俺の選択に間違いはない。なぜなら、確率の方が俺に合わせるからだ」
枯れたおじさんが資産と余裕を手に入れ、美女たちに頼られながら、第2の人生を謳歌する痛快サクセスストーリー!
包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~
吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。
結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。
何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。
子持ち愛妻家の極悪上司にアタックしてもいいですか?天国の奥様には申し訳ないですが
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
胸がきゅんと、甘い音を立てる。
相手は、妻子持ちだというのに。
入社して配属一日目。
直属の上司で教育係だって紹介された人は、酷く人相の悪い人でした。
中高大と女子校育ちで男性慣れしてない私にとって、それだけでも恐怖なのに。
彼はちかよんなオーラバリバリで、仕事の質問すらする隙がない。
それでもどうにか仕事をこなしていたがとうとう、大きなミスを犯してしまう。
「俺が、悪いのか」
人のせいにするのかと叱責されるのかと思った。
けれど。
「俺の顔と、理由があって避け気味なせいだよな、すまん」
あやまってくれた彼に、胸がきゅんと甘い音を立てる。
相手は、妻子持ちなのに。
星谷桐子
22歳
システム開発会社営業事務
中高大女子校育ちで、ちょっぴり男性が苦手
自分の非はちゃんと認める子
頑張り屋さん
×
京塚大介
32歳
システム開発会社営業事務 主任
ツンツンあたまで目つき悪い
態度もでかくて人に恐怖を与えがち
5歳の娘にデレデレな愛妻家
いまでも亡くなった妻を愛している
私は京塚主任を、好きになってもいいのかな……?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
