あやかし駄菓子屋商店街 化け化け壱花 ~ただいま社長と残業中です~

菱沼あゆ

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陸 京都あやかし地図

百鬼夜行の総大将みたいに見える

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 その頃、高尾は、ひとり駄菓子屋に居た。

「あれえ?
 来ないねえ、みんな」
と呟いているうちに、入り口の赤提灯に灯りが灯る。

「おやおや、開店しちゃったよ。
 いらっしゃい~」

 まだまだ夜は寒いので、暖を取ろうとするように駆け込んできた子河童たちに向かい、高尾は微笑んだ。

 ストーブをつけてやる。
 子河童と遅れてやって来た子ダヌキたちが楽しく駄菓子を見始めた。

 そのとき、子河童が駄菓子屋の隅にあった、カラフルなチョコの入ったメガネ型のお菓子を手に取った。

「おっと。
 そうそう。

 これを始末しとかなきゃ。

 倫太郎め。
 いつの間に、こんなもの仕入れてきてたんだか」
と呟きながら、高尾は、そのメガネ型のお菓子を箱ごと手に取り、キョロキョロする。

「でも、倫太郎。
 商品がなくなってたら、すぐ気づきそうだからなー。

 おんなじような駄菓子を買って来て、詰め替えとくかー」
とキツネとタヌキのマークの入ったその箱をとりあえず、客の目につかないところに隠した。

「まあ別に普通の人は買ってってもいいんだけど。
 たまに、おもちゃでも性能いいのがあるからなあ……」

 それ、欲しかったのに~という顔をする子河童に、
「こっちはどう?
 お安くしとくよ~」
と笑って、高尾はラムネ付きの笛を渡した。

 子河童は笛を買い、その笛のに合わせて、みんなで店内を行進し始める。

 平和なその光景を眺めながら、高尾は呟いた。

「なんでみんなが来ないのかわかんないけど。
 今のうちになんとかしないとな~」

 とりあえず、他のお菓子のケースの下に隠したあのメガネの入った箱を見る。



 高尾がそんな風に呑気にしている間も、壱花たちは走って逃げていた。

 雪の積もった石段はところどころ凍っていて、気を抜くと、靴が滑りそうになる。

 いきなり後方で、どしゃっと音がした。

 ぬっぺっぽうが転倒したらしい、冨樫が慌てて起こそうとしている。

 烏天狗が倫太郎の方に移っていたので、身軽になっていた壱花が走っていった。

「大丈夫ですかっ?」

 一緒にぬっぺっぽうを起こそうとした壱花だったが、凍っていた石段でうっかり足を滑らせてしまう。

 その瞬間、白鬼が壱花に向かい、中華包丁を振り上げた。

「壱花っ」
と倫太郎が叫ぶのが聞こえてきた。

 倫太郎が壱花と白鬼の間にあの地図を投げる。

 パッと地図の一部が赤く光った。

 白鬼の包丁が壱花の頭の上で止まる。

 包丁を下ろし、突っ立っている白鬼の前で、倫太郎が地図を拾った。

 壱花も覗くと、貴船神社に赤い点が灯っていた。

「なんだ。
 早く近づけばよかったな。

 よし、行くぞ」
と言って倫太郎はサッサと歩き出す。

 地図を手にした倫太郎が動くと、あやかしたちは自動的に一列になり、ゾロゾロと付いて行く。

 頭に烏天狗を乗せた倫太郎を先頭に、ぬっぺっぽう、海坊主、ぬっぺっぽう、白鬼。

 白鬼は最後尾で、包丁をフリフリしている。

 勢いあまって、ぬっぺっぽうをザクーッとやりそうで怖い……と思いながら、壱花は少し離れた場所から冨樫とともにその行列を見ていた。

「なんか平然とあやかしを従えてる社長が一番怖いんですけど」

「そうだな。
 百鬼夜行の総大将みたいに見えるな」

「でも、百鬼夜行の総大将って最後に来るあやかしじゃなかったでしたっけ?」

 総大将になりたくない二人は思わず最後尾を譲り合ったが、よく考えたら、あやかしじゃないので関係なかった。

「おい、離れてると、飛びそびれるぞ」

 そう倫太郎に言われた二人は慌てて行列に飛び込む。



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