あやかし駄菓子屋商店街 化け化け壱花 ~ただいま社長と残業中です~

菱沼あゆ

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玖 安倍晴明の恩返し

こらーっ!

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「なんだかんだで、父は人がよかったので。
 頼まれて嫌と言えなかったのかも……」

 いろいろ考えた末に、冨樫はそんなことを言い出した。

 いや、まだあれが冨樫の父だとは決まっていないのだが。

 映像を見た冨樫の心になにか引っかかるものがあったようなのだ。

「待て。
 頼まれたの、銀行強盗だろ?」

 人がいいをこえてるぞ、と倫太郎は言う。

「でもまあ、これが冨樫さんのお父さんなら、とりあえず、生きてることは確定なわけですよね?」

 その方がいいんですかね? とスマホでニュースの映像を見ながら壱花は言った。

「よくないだろ」
と倫太郎が言う。

「結局、強盗失敗して逃げてるから、何処にいるのかもわからないしな」

「そっかー。
 じゃあ、早く強盗たち見つけてかくまわないとね」
と人間界の犯罪などどうでもいいらしい高尾が呑気に言う。

 どうなんだろう。
 困ったな、と思う壱花の視界に入り口の安倍晴明が目に入った。

 だが、その晴明はいつものように、近づくと、
「私は安倍晴明である」
と言うだけだ。

 壱花はゴソッとポケットから折りたたんだ式札を出してみた。

 残り四枚。

 そのうちの一枚に命じる。

「式神。
 冨樫さんのお父さんを探してきて」

 折りたたんだ十字のあとのついたまま、ふわりと浮いた白いヒトガタは、わかった、というように、ぺこりと頭を下げると、床に下り、普通に歩いてあやかし駄菓子屋から出て行った。

 とてとてと歩いていくそれを見送ったあとで、
「あれ、いつたどり着くんだろうね」
と高尾が笑う。

 壱花の頭の中で、小さなヒトガタがボロボロになりながら、街を彷徨さまよい、崖を転がり落ちていた。

 壱花はもう一枚の式札を出した。

「式神、さっきの式神、止めてきて」

「壱花、無駄遣いは……」
と倫太郎が言うのと、高尾が、

「でもさあ、葉介のお父さん探せっていうより、銀行強盗探せって行った方が早かったんじゃない?」
と言ったのが同時だった。

 壱花はもう一枚、式札を出して命じようとする。

「式神、銀行強盗を――」

 だから、無駄遣いすんなーっ、と倫太郎に怒鳴られた。

 だが、そこでいつもなら、一緒に怒鳴ってくる冨樫は今日は沈黙したままだった。


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