あやかし駄菓子屋商店街 化け化け壱花 ~ただいま社長と残業中です~

菱沼あゆ

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玖 安倍晴明の恩返し

じゃあ、ちょっと見せてくださいよ

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 稲荷の少し先まで壱花たちは走る。

 通りかかったときに境内をチラと見たが、今日はそこにオーナーの店はないようだった。

 まだこの間の寺の境内で店を開いているのかもしれない。

「あ、あれではないですか?」

 少し先に白いヒトガタらしきものが見えた。

 通行人たちには小さすぎて見えていないのか。

 見えても、我が目を疑い、気づかないフリをしているのか。

 さっきの斑目の部下のように、幻覚だとでも思っているのかもしれない。

 人の目にはつきにくいかもしれないけど。

 犬とかだとちょうど見えるサイズだな。

 犬に噛まれたりしないだろうか、とハラハラしながら、そっと近づいていく。

 すると、そのヒトガタの前に、もう一体のヒトガタがいるのが見えた。

 フラフラしながらも進んでいる。

 そっちはよく見れば、細いタイヤの痕があった。

 自転車にでも轢かれたのだろうか。

 それで遅れて、次に放った式神に追いつかれたのかもしれない。

 よろよろと進もうとするヒトガタの肩を後ろから来たヒトガタがポン、と叩く。

 その様子を見て、壱花は言った。

「なんか……洗濯物が肩叩き合ってるみたいですね」

「なんだ、洗濯物が肩叩き合うって」

「うち、よくそんな風になってますよ。
 突風が吹いたときになるんですかね?

 洗濯物の袖が前の洗濯物の肩にかかり、次の洗濯物の袖がその洗濯物の肩にかかってて。

 まるで、並んで肩を叩き合ってるように見えるんですよ」

「そんなのお前んちの洗濯物だけだろ」

「いやいやいや、よくなってますって。
 今度、社長の洗濯物見せてくださいよっ」
とヒトガタや洗濯物のように倫太郎の肩をつかむと、

 いやなんでだっ、と倫太郎はその手を振り払おうとする。



「葉介、見つけたビラ見せてよ」

 その頃、高尾はスルメを焼きながら、冨樫にそう言い、手を差し出していた。

 冨樫がビラを渡すと、高尾は、うんうん、と頷く。

「そういえば、こんな格好だったねえ」

 横から覗いた斑目が言う。

「なるほど。
 強盗の服装と似ているな。

 だが、お前の父親が消えたはいつの話だ。

 父親、ずっと同じ服着てないだろ?

 っていうか、十何年も同じ服が着れる体型ってすごいな」

 斑目は妙なところで感心しはじめる。

「いや……そもそも生きているのかどうか」
と冨樫は呟いた。

 あやかしのいる山で消えた父。

 死んではいないような気もするが。

 今、どんな状態になっているのか、不安しかない。

 高尾さんに、おのれの顔を与えたということは、その顔で人の世界に戻る気はなかったということだしな、と思いながら、冨樫はその手書きのビラを見つめていた。


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