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玖 安倍晴明の恩返し
なにかが起こりましたっ!
しおりを挟む「なにかが起こるってなんだ?
なんてざっくりなんだ」
とクジを引いた部下の人ではなく、斑目が不満を述べる。
「いや~、いつもざっくりですよ、この店のもの」
と壱花は言って、
「さすがあやかし駄菓子屋だな」
と言われてしまった。
そんな感じにみんなで、わいわい過ごしたあと、斑目の部下は斑目とともに店を出た。
「では、失礼致します。
本日はどうもお気遣いいただきありがとうございました」
と頭を下げて言った部下のその言葉は本心だった。
なんだかんだであの店にいて、彼らの熱気に包まれているだけで、楽しかったからだ。
「そうか。
気をつけて帰れよ」
と斑目はタクシーで帰っていった。
部下は家が近くだったので、あまり灯りのない川沿いの道を歩いて帰る。
『中吉 なにかが起こる』か。
ちょっと楽しみだな、と思っていた。
駄菓子屋もクジもその結果も、子どもの頃のワクワク感を呼び覚ますものだった。
ふふふ、と思わず笑いをもらしたとき、柳のゆらめく川沿いの道を歩いていた部下の人の前に、誰かが立ち塞がった。
中肉中背の男だ。
もう暑い季節なのに、何故か黒い目出し帽をかぶっている。
男は、遠いビル街の明かりに煌めくナニカを手にしていた。
よく見れば、折りたたみナイフのようだ。
男は、震える声で言う。
「ふ、服を脱げっ」
ええっ?
僕、男なんですけどっ、と部下は怯えた。
「いいから脱いで、そこに置けっ」
部下はスーツを脱ぐと、そこに畳んでおこうとした。
「……た、畳んでくれなくていいぞっ」
「そ、そうですか」
というやりとりのあと、スーツを置くと、
「そこから離れろ」
と言われる。
えっ?
僕、下着なんですけどっ、と思ったが、ナイフが怖いので、言われるがまま、そろそろと自分のスーツを置いた場所から後ずさる。
すると、男はスーツをぱっと取って逃げていった。
身包み剥がされたっ!
中吉どころか。
凶っ!
と部下は暗い川の側、半泣きで思っていた。
壱花たちが、さて、後少しで飛ぶかな? と思いながら、店の中を片付けていたとき、あやかし駄菓子屋の戸がガラガラと開き、斑目の部下が戻ってきた。
「凶ですっ」
と叫ぶ。
えっ?
なにがですかっ?
と振り向いた壱花だったが。
鞄で身体を隠している部下の姿を見て呟いた。
「ああ……凶でしたね。
すみません……」
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