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玖 安倍晴明の恩返し
このまま朝が来たら……
しおりを挟む店は高尾に任せ、壱花たちはヒトガタが変化した犬を追っていた。
「そういえば、このまま朝が来たら、我々はどうなるんでしょうね?」
「さあな。
ばあさんの駄菓子屋で朝が来たことはあったが」
駄菓子屋の外に出て、朝。
社長の部屋に転移はしないのだろうかな、と壱花が思ったとき、川沿いの道を走っていた犬が二手に分かれた。
えっ? どっちに行ったらっ?
と迷ったが、犬が直進していった方から、すぐに、
うわあああっ、と悲鳴が上がった。
もう捕まえたっ?
と急いでそちらに行くと、さっき出たばかりの斑目の部下の人が赤い首輪の犬に襲われていた。
高尾のまやかしによって、極上の遊び着的なジャケットに見えている倫太郎の高い背広に食いつかれ、尻尾をふられている。
「ま、魔犬っ!?」
あやしい数珠の首輪をつけたデカイ犬に部下の人は怯えていた。
「す、すみません。
あなたの匂いのついた服を着た犯人を追っていったはずだったんですが……」
その匂いがする本体の方に行ってしまったようだ、と壱花は苦笑いして、犬をヒトガタに戻した。
ヒトガタは、匂いを追え、と言われた命令が残っているのか、部下の人の肩にふわりと乗っていた。
その頃、店に残った高尾は、あのビラを見ながら冨樫に言っていた。
「そうだ。
僕がこの格好して、葉介のお父さん探して歩いたら、みつかるんじゃない?
自分を指差して、この人と同じ人を探していますとか言ってさ」
「あの。
今、それやったら、強盗と間違われて、警察につかまると思います……」
そう言ったあとで、冨樫は外を見る。
「なんだか外が白くなってきましたね。
このまま朝になったらどうなるんでしょう?
社長も風花もいませんが」
「そうだねえ。
僕らあやかしは勝手に寝床に帰るけど。
葉介はどうなるんだろうね。
このままここに閉じ込められたりして~」
と高尾は笑っている。
「かっ、帰りますっ」
自分はこの店に縛られているわけではないので、途中で帰っても問題はない。
冨樫は慌てて店の外に出ようとしたが、一歩遅く、この世界での夜が明けてしまった。
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