好きになるには理由があります ~支社長室に神が舞い降りました~

菱沼あゆ

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理由がありませんっ

そんな怒涛の一日……

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 深月が帰ってきたようだ。

 清春は家の中から二人の様子を眺めていた。

 あのあと、ちょうど仕事が終わった万理の夫が、近いのに、万理が心配だからと迎えに来たのだ。

「清春さんもどうですか?」
と乗せて帰ってくれたので、深月たちを追い越してしまった。

「あー、今日も清春の顔が見れて、いい気分転換になったわー」
と助手席で万理が言い、ふっくらして人の良さそうなご主人が、はいはい、と横で笑っていた。

 なんだかんだでいい夫婦だ、と清春は思い出し、微笑んだあとで。

 ……俺たちもいい夫婦になれると思うんだがな、深月、と思う。

 深月は身振り手振りを加えつつ、陽太に一生懸命、なにか話してる。

 まあ、ずっと一緒に居た俺が告白するより、新しく出会った男に告白された方がインパクトがあるからな。

 つい、フラフラとそっちに行ってしまったんだろう、
と清春は、深月が聞いていたら、

「いやいやいやっ。
 兄に告白される方がインパクトあるでしょうよっ」
と叫びそうなことを思っていた。

 どうやら、俺はあの支社長とかいう男の出現に惑わされ、作戦を誤ってしまったようだ。

 そう思った清春は、

「ただいまー」
と帰ってきた深月を迎えに出ると、自分を見て、びくりとした深月に向かい、

「深月、さっきのはなしで」
と言ってリビングに戻る。

 後ろで深月が、ええええええっ、と叫んでいた。
 



 そんな怒涛の一日の翌朝。

 深月は枕元に置いていたスマホが鳴って、目を覚ました。

 てっきりアラームだろうと思っていたのに、電話だった。

「も、もしもし?」
と半分寝ぼけて出ると、

「おはよう、俺だが。
 お前の携帯の番号を教えろ」
と陽太の声で言ってくる。

 ……寝ぼけているのだろうかな、私は。

 支社長が、携帯に電話してきて、携帯の番号を教えろと言っているような気がするのだが、と思いながら、
「今、かけてきてますよね? 支社長」
と深月が言うと、

「この番号は、昨夜、ある人が教えてくれたんだ。
 だが、お前から正式に聞いたわけではないので、一応、確認を取ってから、かけようと思って」
と律儀に言ってくる。

 ある人か……。

 なんとかして、支社長を舞い手にしたいおじさんたちの誰かだな、と深月は思った。

「いや、別にいいですよ」
と言うと、わかった、と言って、陽太は電話を切る。

 なんだったんだ、と思いながら、もう一度、深く布団に潜り込もうとしたとき、スマホが鳴り出した。

「おはよう、俺だが」

 デジャヴだ……。

 私は一定の時間を繰り返しているのだろうかと思ってしまったが、もちろん、違った。

「朝、会社まで乗せてってやろうか。
 船は渋滞ないぞ」

「……私も自転車なので、ありません」

 そして、会社まで行くより、此処から船着き場に行く方が遠い気がするのは気のせいですか、と思っていると、陽太は、

「心配するな。
 そっちに車を回すから」
と言ってくる。

「け、結構です。
 何度も言うようですが。

 貴方と出勤しようものなら、私、女子社員のみなさんにボコボコにされてしまいます」
と言って、深月は電話を切った。

 また陽太がなにか言ってこないうちに出よう、と寒さをこらえ、いつもより早くベッドから飛び出す。




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