仏眼探偵II ~幽霊タクシー~

菱沼あゆ

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仏像は祟らない

俺は、ちやほやしてないぞ

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 町に聞き込みに行くのに、深鈴もついて来るようだった。

 一緒にラウンジから外を見ながらタクシーを待つ。

「なにやってんですか、まったく」
とまだ文句を言っている深鈴に、

「菜切を呼び出すのを止めさせただけだろ。
 ついでに見えたんだが、水村の中に見える影は薄くなってるな。

 持田の意識が戻り、和解したせいだろう。
 つまり、これ以上の隠し事はないってことだ」
と言ってみたのだが。

 やはり、なんだか怒っている。
 そして、その怒ってる深鈴の横では、志貴が怒っている。

「深鈴がついて行くのなら、僕も行きますからね」

 いや……お前ら、効率よく動けよ、と思っていた。

 

「正直言って、先生が他の女性の手を握っていると、面白くなかったりするんですが」

 三人でタクシーの後部座席に乗っているとき、深鈴がそんなことを言い出して、ぎょっとした。

 菜切以外と頼んだせいで、運転手は普通のおじさんだった。

「でも、好きなのは志貴なんですよ。
 なんて言うんですかね、こういうの」

「それ、あれだろ?
 水村さんと同じ現象」
と志貴が勝手に解説を始める。

「いつもちやほやしてくれている男が別の女と親密そうだったから、なんだかムカついたってやつ」

 それは、自分が幕田に説明したときと同じセリフだったのが、自分のことを言われていると思うと、腹立つなーと思っていた。

「……俺は深鈴をちやほやしてないぞ」
と往生際悪く反論してみる。

 だが、志貴の前で堂々とこんな話をする時点で、俺に気はない、ということなんだろうな、とは思っていた。

 ただ、本当に疑問に思っているだけなんだろう。

「そう、なるほどね」
と深鈴は納得していた。

 出来るなら、納得しないで欲しいんだが、と思いながら、運転手に訊いてみた。

「すみませんが。
 あの、幽霊とかって乗せたことありますか?」

 すると、そんな唐突な問いにも驚かず、今まで真面目な顔で運転していた運転手は笑って言い出した。

「あるあるー、いっぱい。
 どれがいいー?」

「いっぱい……」
と深鈴が苦笑いを浮かべて呟く。

「いやあ、こんな仕事してるとさあ。
 この人生きてんのかなあって人、乗せることなんて、度々あるよー。

 あとでお金計算したら合ってるから、生きてたのかなあなんて」

 運転手は、バックミラー越しにこちらを窺いがら、笑顔で訊いてきた。

「お客さん、どれから訊きたい?」



「ちょっとした夏のホラーでしたね」
 町にひとつだけあるコンビニで降りた深鈴が呟く。

「だが、あの運転手は菜切の言う幽霊は乗せたことはないようだったな」
と言うと、

「ところで、先生。
 なんで、コンビニなんですか?」
と深鈴が訊いてくる。

「普通なら、ファストフードとかで張るんだが。
 ねえじゃねえか、この辺には」
と愚痴る。

「もしかして、女子高生を待ってるんですか?」

 そう志貴が訊いてきた。

 そういう言い方をされると、なんだかいかがわしい感じがだか。
 噂話を仕入れるなら、やはり、女子中高生に限る。

 志貴も仕事柄、わかっているのだろう。

「怖い話なら、小学生も詳しいですよ」
と深鈴が言ってくる。

「じゃあ、小学生女子を待つか」
と言ってみたが、ますます怪しい感じになってしまった。


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