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限りなく怪しい客
古いカメラとクリームソーダ
しおりを挟む「で、なんで、その古いカメラで撮ってこいって、じいさんは言ったんだ?」
「おじいちゃん、これしか持ってなかったからです。
私のデジカメ、ちょっと見当たらなくて。
スマホは、一昨日、車でうっかり轢いてお亡くなりに」
「早く買い換えろ……」
「そうですねー。
でも、今のとこ、あんまり不自由してないんですよねー。
お友だちは用事があるときは、家か店にかけてきたりしますし。
二時間サスペンスが今週はなかったので」
そうか。
龍哉たちとのLINE、と気がついた。
……もうなくてもいいかもな、スマホ。
まあ、俺も番号知らないから、不自由してないしな、と思いながら、古いカメラの使い方がいまいちわからないらしい琳がいろいろいじっているのを眺める。
「フィルムは入ってるみたいだっておじいちゃん言ってたんですけどね」
「みたいだって……。
いつのフィルムなんだ、それ。
幽霊でも撮れそうだな」
いや、まともに撮れずに二重に映ったりブレたりしそうだ、という意味でだが、と思ったとき、はた、と将生は気がついた。
「待て。
お前が撮るな。
変な感じになるじゃないか」
「え? 変な感じ?」
と琳がこちらを見る。
琳が小柴に、写真撮らせてくださいと頼むなんて、まるで、琳が小柴に気があるみたいじゃないか、と思ったのだ。
「貸せ、俺が撮る。
俺が小柴に写真を撮らせてくれと頼む」
と将生がカメラを撮ると、
「いやそれ、余計変な感じになりませんかね~」
と後ろから呑気な佐久間の声がした。
思わず、
「なにしに来た」
と睨んで、
「……宝生さん、此処、喫茶店です」
と言われる。
「相変わらず、見境ないですね」
と苦笑いしながら、佐久間は隣りに座った。
「あー、僕、喉乾いちゃって。
雨宮さん、すみません。
クリームソーダ、お願いします」
佐久間の言葉に、はいはい、と琳はカメラを置いて、クリームソーダを作り始めた。
「はい、お待たせです」
佐久間の前にレトロな厚みのあるグラスが置かれる。
濃いめのメロンソーダにこんもり綺麗に盛られたバニラアイス。
その上にちょこんと赤いさくらんぼがのっている。
佐久間はそのさくらんぼを嬉しそうに指先でつまみながら、
「僕、このさくらんぼが好きなんですよね~」
と言う。
「姉ちゃんなんかは、このどぎつい赤さが嘘くさく感じるから嫌だって言うんですけど」
そうですねえ、と琳は笑い、
「でも、クリームソーダには、やっぱり、この赤が似合う気がするんですよね。
あ、それ、天然色素のですから、大丈夫ですよ」
と言っていた。
そこで佐久間がこちらを見、にひひ、と笑う。
「少しあげましょうか? 宝生さん。
見てたら、飲みたくなったんでしょう? これ」
知らぬ間に、クリームソーダを凝視していたようだ。
勝ち誇ったように佐久間が言うのが気に入らなくて、
「いや、別にいらん」
と庭の方を見て言う。
だが、内心、今度、来たとき、頼んでみよう、と思っていた。
いまどき見ないような濃い色の冷たい飲み物も、嘘くさいくらい赤いさくらんぼも、なんだか郷愁を誘う。
将生は、そのまま、色とりどりの花々が揺れている、美しい庭を眺めた。
別に犯罪を犯そうと思ってなくとも、見てしまうよな、と思う。
ただ、琳のあてずっぽうの発言が、当たっていることが多いのも、また事実なのだが――。
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