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限りなく怪しい客
今日も来ているようだ
しおりを挟む次の日の夕方、仕事が長くなりそうだったので、
「軽く食べてくる」
と職場を抜けて、将生は猫町3番地に来ていた。
今日も来ているな。
将生は、いつもの席に座り、庭を眺めている刹那を横目に見ながら、カウンターへと向かう。
そして、
今日も居るな、
と彼の向こうで、夕暮れの光に照らされ、本を読んでいる二宮尊徳を見た。
いつ引き取られてくんだろうな、二宮金次郎……。
雨宮、本気で買い取ったんじゃないだろうな、と心配したとき、
「今日も来てますね」
と刹那の方を見ながら、佐久間が小声で言ってきた。
たまたま監察医務院に来ていたので、一緒について来てしまったのだ。
「やっぱり、雨宮さん、目当てでしょうか?」
と佐久間は不安そうな顔をする。
まあ、男の目から見ても、いい男だよな、と思いながら、将生はカウンター席に座った。
「雨宮、なにか晩ご飯っぽいもの。
――カップ麺以外で」
と言うと、琳が笑う。
「雨宮、写真はできたのか?」
水を出してきた琳に将生がそう訊くと、
「それが、おじいちゃんが自分で現像したいって言い出して」
と琳は苦笑いして言ってくる。
「いつになるのかわかりません」
意味ないじゃないか、と思いながら、横に座った佐久間に、将生が、
「そうだ。
お前が刑事の秘密道具で撮ってやればよかったじゃないか。
傘とかに仕込んでないのか、カメラ」
と言うと、
「……すみません。
僕、スパイじゃないんで、そんなもの持ってません」
そして、今日晴れです、と言ってくる。
役に立たない刑事だ。
琳がなにか用意してくれている間、将生たちはチラチラと刹那を窺っていた。
すると、夕暮れに染まる庭を見ていた刹那がいきなり、立ち上がる。
伝票を手にしている。
帰るようだ。
「すみません」
カウンターの端のレジのところで、刹那は琳に声をかけた。
あ、はいはい、と琳が慌てて、レジに行く。
「いつもありがとうございます」
刹那に釣りを渡しながら微笑んだ琳に、刹那が、ぼそりと言うのが聞こえてきた。
「貴女がそんなに綺麗じゃなかったらよかったのに……」
それまではさりげなく聞き耳を立てているだけだった将生と佐久間だったが、思わず、身を乗り出すようにして振り向いてしまう。
それに気づきながらも、刹那は相変わらず、淡々としたまま、
「じゃあ」
と琳と将生たちを見て言い、行ってしまった。
「今のなんですか?
……ナンパ?」
と佐久間が呟く。
「にしては、静かな感じでしたね」
と言いながら、出て行った刹那の方を見ていた。
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