ここは猫町3番地の2 ~限りなく怪しい客~

菱沼あゆ

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限りなく怪しい客

あの人、なにをしようとしてるんでしょうね?

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 行方不明の犬の死体とかであって欲しいんだが、と将生は思っていた。

 だが、それなら、前回、同じ状況だったから、
「私も犬の死体探してるんですよー」
とか言いそうな気もするし。

 うーん、と考えながら、うどんを啜っていると、カップ麺を食べるのを途中でやめた琳が、窓の外を見て言う。

「……気になってるんですよね、このところ」

 なにが? と琳を見ると、
「安達刹那さんが」
と庭を見たまま小首を傾げ、琳は言った。

 箸を取り落としそうになる。

 気になる?
 どういう意味でっ?
と固まる将生の前で、琳はいつも刹那が座る席を見て呟く。

「……あの人、なにをしようとしてるんでしょうね」

 ああ、そういう意味でか、と将生はホッとした。

「そうだ。
 お昼、間違えて作りすぎちゃったフレンチトーストがあったんですよ。

 今から温めるので、ご一緒にどうですか?」

「あ……ありがとう。
 金は払うよ」
と将生は言ったが、いいですよ、と琳は立ち上がる。

「私が食べたくなっただけなんで。
 辛いもの食べたら、甘いもの食べたくなりますよね~」

 そのまま、レンジの方に行く琳を見ながら、将生は思っていた。

 どうしたんだ、今日の俺。
 つきすぎてて、怖いな……。

 カウンターの内側に入れてもらっただけではなく。

 雨宮にカップ麺を作ってもらって、フレンチトーストまでご馳走になるとか。

 そんなことを思いながら、フレンチトーストが温まるまで、琳と二人で、最近読んだミステリーの話などする。

 やがて、チン、と可愛らしい音がして、レンジは止まったようだが、琳はまだ笑って話していた。

 話に夢中になってるのかな、と思いながら、将生も話していたが。

 また、チン、と鳴っても、琳はチラとレンジの方を見るだけで、立ち上がらない。

 三度目に鳴っても、琳がスルーしたとき。

 これはまさか……。

 俺と話すのをやめたくないから、取りに行かないとかっ?
と一瞬、期待してしまったのだが。

 よく考えたら、別に取りに行きながらでも話はできる。

 レンジはすぐそこなのだから。

 もう一度、レンジが鳴ったとき、ついに将生は琳に言った。

「……雨宮。
 できてるんじゃないのか? フレンチトースト」

 ああ、と琳は笑って言う。

「すみません。
 また冷めちゃいますね。

 ふと、レンジって、入れっぱなしにしてたら、どのくらいで鳴るの諦めるんだろうなあとか思っちゃって」

 ……レンジの根性を試すような真似をするな。

「さっさと取りに行け」
と将生は言った。

 やはり、こいつに色っぽい展開とか期待する方が無理だったようだ、と思いながら。


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