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第一話「壁のシミ、通学路のカゲ」
呪いの席の住人
しおりを挟む生田李都は、ちょっとハーフっぽい顔をしていた。
なづなに、
「転入生って教科書とか見せてあげるものだと思ってた」
ドラマだとそうじゃん、と言う。
「すみません。
全部そろってまして」
となづなは笑った。
「まあ、当たり前だよね。
昨日、いきなり転入が決まったとかいうわけじゃないし。
編入試験とかあるんでしょ?
ここ一応、進学校だし。
あ、でも、スマ子みたいに、新体操の一芸で入ったやつもいるけど。
しかも、その新体操もう辞めちゃってるし」
と李都は容赦ない。
「なによっ。
あんただって同じでしょっ?」
とスマ子は李都に噛み付いたが、
「いやいや。
僕は実力で入ったんだよ。
今時、芸能人もみんないい大学入ってるからね」
そう言う李都の教科書には、びっしり書き込みがしてあった。
「まあここ、芸能活動で休んでも、レポートとか真面目に出してたら、なんとかしてくれるけどね」
そうなんですねーとその休み時間は李都と話した。
李都の近くに座ると男子がモテなくなる呪いの席の話も聞いた。
それだと宮本くんの近くの席も呪われそうだけど、となづなは、ちょっと思った。
帰り道。
なづなは気分がよかった。
クラスの子と親しくなり、途中まではみんなで帰れたのだ。
だが、電車やバスの子が多く、結局、一人であの影のいる道を通ることになってしまった。
意識しなければ大丈夫。
そう思いながら歩いていたが、遠目にもあの壁に人影が映っているのが見えた。
違う道を歩こうかな、と思うが、まだ馴染みのない住宅街の道は入り組んでいて、絶対に迷子になる自信がある。
急いで駆け抜けよう。
『ただの面倒事』ならごめんだ。
なづなは壁の方を見ないようにして早足で歩く。
離れた場所にある商店の前で、振り返ってみたが、あの白い壁に人影はなかった。
だが、信号が赤だったので足を止めたそのとき、なづなはギクリとした。
自分の影がなにか変なのだ。
日差しは強いのに、影はぼんやりしていて、あのシミみたいに伸びたり縮んだりしている。
嫌な予感がした。
さっきの影、振り返ってみたとき、消えていた。
そういえば、この影、私の影にしては長いし、妙な感じだ。
そんなことを思いながら、なづなは行き交う車にひかれている影を眺めていた。
お友だちもできたし、意外に学園園生活は順調だ、と思ったのは私の気のせいだったのだろうか?
体育館にある窓のない倉庫。
大きな飛び箱の横で、なづなは膝を抱えていた。
翌日の体育の時間のあと、なづなはスマ子に、ここに閉じ込められたのだ。
「あんた、なんかムカつくのよっ」
という捨て台詞とともに。
なんかムカつく。
なにがムカつくのだろうな、となづなは考える。
「泣いて詫びたら許してあげるわよっ」
こんなところに閉じ込められるくらいなら、泣いて詫びようと思ったのだが、なにを泣いて詫びたらいいのかわからない。
「あのー、スマ子さん」
と重い扉越しになづなは呼びかけてみた。
「千乃っ」
「千乃さん、なにを詫びたら……」
「なにをって……
えっ? なにを?」
スマ子も思いつかなかったらしい。
「と、ともかく、あんた、なんかムカつくのよっ」
と言って、スマ子はいなくなってしまった。
外は天気が悪くなっていて、暗いようだったが。
幸い、体育館の明かりがついたままだったので、扉の隙間から光が差し込んでいた。
真っ暗ではないので安心する、と最初は思っていたが。
そのうち、ぼんやり見えるから、かえって怖いかも、と思いはじめる。
今のところ、霊の気配は感じない。
だが、長くここにいると、じわじわと波長があって、見えはじめてくる気がする。
おまけに窓がないから、マットや飛び箱、ボールなんかの匂いがこもっていて臭い。
もう授業終わってるから、体育で来るクラスとかないよね?
お掃除の時間、体育館も掃除するのかな?
放課後、新体操のクラブとか、ママさんバレーとか、体育館使ってくれるだろうか?
私立だから、そういうのないのかな?
もしかしたら、明日まで出られないかも。
困ったな~と思いながら、ちょっとひんやりするので、膝を抱えてしゃがんでいたが。
なにかが視界の隅で蠢いた気がした。
ぎくりとして振り返る。
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