あやかし斎王  ~斎宮女御はお飾りの妃となって、おいしいものを食べて暮らしたい~

菱沼あゆ

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第六章 月読おはぎとオーパーツ

気になるのはそっちですかっ?

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「うむ。
 あれが安倍晴明か。

 美しいの」

 そんな寿子の呟きを聞いた鷹子は、さすがに庭にまでは下りてこない彼女を見上げて言う。

「晴明とは、お会いになったことがなかったのですか?」

「あまり近くで見たことはないな。
 調伏されかねんから」

 ……笑えない。

 ふむふむ、と寿子は菓子作りよりも、晴明を見学しているようだった。

 なんでしたら、安倍晴明、増やせますけどね。

 中身が子どもでもよければ……。

 せっかく出て来てくれた中宮のために、鷹子は目の保養を増やした方がいいだろうかと、青龍を呼びかけた。

 だが、そのとき、帝がやってきた。

「……結局いらしたようですね」

 手を止め、是頼が苦笑いして言う。

 おっと、一応ご夫婦なのに。

 ここで中宮様のためにイケメンを増やしましょうとか、まずいわよね、と鷹子は青龍を変化させるのをやめる。

 みなが天皇 吉房のお出ましに、その場に膝をつき、頭を下げた。

「よい。
 みな、作業を続けよ」

 ……早く食べたいのだろうか、と鷹子は邪推する。

 それにしても、かなり久しぶりの対面のようなのに、中宮 寿子の様子はかなり軽く、

 なんだ、吉房ではないか。
 来たのか、という感じだった。

 まあ、幼なじみだもんな、と思う。

 だが、吉房の方は衝撃を受けていた。

 生きていたのかっ、という顔をして、寿子を見る。

 それから、扇の端から見える寿子の顔を見、

 今では、そんな顔になっているのかっ、と驚いている。

 彼のの寿子は、子どものときのままのようだった。

 臈長ろうたけた幼なじみの姿にときめいたりするのだろうかと見ていたが、吉房の顔には、ただ、

 とぐろを巻いて、シャーッとか言わないのかっ、と書いてあった。

「……ほんに、相変わらず面白いのう、吉房は」
と寿子は楽しげに笑っている。

「ところで、先ほどから外に出ても、あまり身体がしんどくないのう」

 では、よくなられたのだろうかと思ったとき、寿子は言った。

「やはり、もう死んでおるのではないかの?」

「……いや、治ったんじゃないです?」
と言ってみたが、寿子は、いやあ、と言いながら、夫ではなく、まだ晴明の方を見ていた。


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