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ムラサキカガミ

人の運命を狂わせる鏡

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 翌朝目を覚ますと、早朝急いで打ったらしき友子からのメッセージが入っていた。

 サボりがちなあのAIみたいに、あのまま寝ていたらしい。

「うちの大学の部室棟の入り口にあるの。
 人の運命を狂わせる鏡よ。

 土曜日ランチ行くついでに見せてあげるわよ。
 まあ、あんたの運命は狂わないと思うけどね」
と入っていた。

 土曜日はランチに行くのか。

 そういや、何処行くとも言ってなかったな。

 っていうか、人によって運命が狂ったり狂わなかったりする鏡ってなんなんだろうな?
と思いながら、イチと連絡をとる。

 すると、
「土曜だ?
 なに呑気なこと言ってるんだ。

 大学、その従姉とやらがいないと入れないのか?」
とイチが訊いてきた。

「いや、そんなことないと思いますけど」

「じゃあ、今夜行け」

 ええーっ?
と乃ノ子が文句を言うと、

「お前、今日、勉強なんて、やりもしない、行き帰りにコンビニ寄って菓子食ってるだけの塾があるだろ」
とイチが言う。

 ひっ、と乃ノ子は息を呑んだ。

 何故、それをっ、と思ったのだ。

「親には塾に行くと言い、友だちと塾には用事ができたから休むと言え。

 勉強なら今度俺が教えてやるから。

 ちょっとその鏡とやらを覗きに行ってみよう。

 ついて行ってやる」

「えっ?」

「夜なら空いてるから、ついてってやると言ったんだ」

「……スマホの中でですか?」

 スマホの中から見張っていられるという意味だろうかと思ったのだが。

「莫迦か。
 それ、なんの意味があるんだ。

 夜は危ないからついてってやると言ってるんだ。

 俺の携帯の番号教えてやるから、かけてこい」
と言って、本当に携帯の番号を送ってきた。

「え? これ、イチさんの電話番号なんですか?
 普通の携帯の番号みたいですよ?」

「普通じゃない携帯の番号ってなんだ。
 ともかく、塾サボれたら電話しろ」
とイチは言う。

 なんてこと言う大人だろうな……。

 サボりを勧めるとか。

 っていうか、イチさんの番号って言われたのに。
 つい、この番号かけたら、なにが出るんだろうな、と思ってしまった。

「もしもし、私、イチさんよ」とか言いそうだ。

 そんなことを思いながら、サボる準備を整え、放課後を待つ。

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