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ムラサキカガミ
都市伝説より恐ろしい現実
しおりを挟むだ、大学まで行こう。
公衆電話のなにかにとり憑かれているとしても。
ロボットなイチさんが、がしょんがしょんとやって来て。
目からビームとか、腕からロケットパンチとか出して、なんとかしてくれるに違いない、と乃ノ子は動転しながら歩き出す。
足早に友子の大学へと向かった。
なにかがついてきているような気配を感じるが、怖くて振り返れない。
ヤバイな。
あの電話のせいかな……。
どんどん乃ノ子は早足になる。
国道に車は行き交っているが、歩いている人は少ない。
街灯と車のライトで明るいが、助けがない感じがして、ちょっと怖かった。
ま、まあ、誰もいないわけじゃないし。
なにかあったら、何処かコンビニにでも飛び込めば……。
塾の問題集などが入った白い帆布生地のトートバッグを肩にかけ、せかせかと乃ノ子は歩道を歩く。
あのお弁当屋さんの前に出たとき、煌々と明かりがついていたせいか。
張り詰めていた空気がゆるんだようにホッとした。
そのまま東に向かい、山の方に少し入ると、大学に向かう坂が見えた。
夏とはいえ、もう真っ暗だ。
ひとりじゃ怖いな。
大学はまだ明かりがついているみたいだけど、
と思ったとき、いきなり背後でまた気配がした。
どんどん近づいてくる気配に、ひいっ、と逃げそうになったとき、よく通る声がした。
「福原」
振り返ると、中学のときの理科の先生が立っていた。
「なにしてるんだ、こんなところで」
「先生……。
あれ?
先生が帰った大学って、もしかして、此処だったんですか?」
そこそこ若く、そこそこイケメンの志田哲郎は中学のときの理科の教師だったのだが。
乃ノ子たちが卒業すると同時に、大学に戻ることになって、去っていった。
「なにしてんだ、福原。
此処受けるのか?」
と志田が訊いてくる。
「先生、私、まだ高校入ったばかりです」
「なに言ってんだ。
目標は早く定めた方がいいぞ」
何故か突然、進路指導がはじまった。
一気に現実に引き戻されたな。
霊も怖いが、入試が終わった途端に、次の入試のことを考えなければいけないこの現実もかなり怖い。
「もしや、先生は霊ですか」
と乃ノ子は思わず言って、
「なんでだ……」
と言われてしまう。
「いえいえ、どんな都市伝説より、ある意味、恐ろしかったので」
「都市伝説?」
「実は、この大学の部室棟に、見ると、未来や運命が変わる鏡があると聞いたんですよ」
だが、志田は、
「いや、知らないな」
と首をひねっている。
「そうなんですか。
もしや、そういう話がある、ということ自体が都市伝説だったんですかね~」
「相変わらず、暇なことやってんな、福原。
もう暗いし、物騒だから、さっさと帰れ……
とか言っても、お前のことだから、帰らないだろうな」
さすが、よくおわかりで、と乃ノ子が苦笑いしたとき、志田が溜息つきながら言ってきた。
「じゃあ、その鏡とやらを見せてやるから。
見たら、すぐ帰れよ」
あっ、ありがとうございますっ、と乃ノ子は頭を下げたあとで、
「あっ、でも、ちょっと人と待ち合わせしてるんですよ。
その鏡を見に行くのに」
と今来た道を振り返った。
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