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ホンモノの出るお化け屋敷
お化け屋敷の真実
しおりを挟む……幽霊をやらされてしまいました。
しかも、勢い余って、カップルと一緒に外に飛び出してしまい、遊園地のお客さんたちに、ぎょっとされてしまいました……。
乃ノ子がカップルを追って外に出ると、みんなが、なんだなんだ? とこちらを見て。
大迫力で面白そうなお化け屋敷だとお客さんが増えたようだった。
「はい」
と乃ノ子が受付に、脱いだ扮装を返すと、ええっ? と受付の男が二度見していた。
「あの」
ジュンペイさんは、今、何処に……、
と此処で訊いていいものだろうか、と悩んだ乃ノ子は、とりあえず、
「ありがとうございました」
となにがありがとうなんだかわからないまま言い、受付を離れる。
お化け屋敷の外で待つことにした。
ジュンペイは、なにか話してくれそうだったからだ。
暑いので自動販売機でジュースを買おうとしたが、なんとなく、あのお弁当屋さんの横の自動販売機が頭に浮かぶ。
……なんかあそこで買わないと、祟られる気がするな。
誰に祟られるかってもちろん……と思いながら、乃ノ子が買うのを躊躇していると、
「買わないの?」
と後ろから声がした。
振り返ると、細身で感じのよい青年が立っていた。
ジュンペイではない。
あ、邪魔だったかな、と思い、
「すみませ……」
と言って避けようとしたとき、
「わからない?」
とその男が笑って言ってきた。
は? と見上げると、
「これこれ」
と男は両の手を、うらめしや~と上げてみせる。
「あっ、もしかして、落ち武者さんっ?」
そう乃ノ子は叫んだ。
「え?
ジュンペイさんに幽霊やらされたの?
あの人むちゃくちゃだからな~」
と落ち武者さんこと、中山茂は笑って言った。
「ジュンペイさんって、なんで此処で幽霊やってんですか?
アイドルですよね?」
そっくりさん? と乃ノ子が訊くと、
「いや、ホンモノ。
内緒だよ」
とヒソヒソと茂は言ってくる。
「ジュンペイさん、アイドルになる前、此処で幽霊のバイトやってたらしいんだよね。
それでたまに来て、手伝ってくれんの。
いや、手伝ってくれてるっていうか。
……煮詰まったときに来るみたい」
ははは、と茂は笑っていた。
「アイドルって大変そうですもんね」
「そうなんだろうねえ。
でも、幽霊やって憂さ晴らしって変わってると思うけど。
まあ、芸能人なんてみんな変わってるんだろうからね。
でもさ、ファンってすごくて。
幽霊の扮装してたら、口許と体格しかわからないのに、
『ジュンペイだっ』
って言って、カツラ外しに行っちゃう子いるんだよね。
そんなとき、ジュンペイさんは、
『内緒だよ。
ドッキリの撮影だから』
って言って誤魔化してるみたいなんだけど」
と茂は言って笑う。
「……じゃあ、もしかして、ホンモノが出るお化け屋敷っていうのは」
「ホンモノのアイドルが出るお化け屋敷かなあ。
ジュンペイさんと約束したから、名前は出さないままで。
でも、なにか言いたくて、誰かが流した噂なのかも」
「なんだ……。
都市伝説じゃなかったんですね」
「いや、ホンモノのアイドルが出るお化け屋敷って、ある意味、都市伝説じゃない?」
と茂は言う。
イチさんは、この件は調べなくていいと言っていた。
もしかして、イチさんには、この噂の真相がわかってたとか?
と思ったとき、乃ノ子は、さっき、茂が言った言葉を思い出していた。
「あ、でも、外では幽霊見たことがあるっておっしゃってましたよね?」
「いや、実はジュンペイさんがさ。
此処の外で男の人と話してたことあって。
誰だろうって思って見てたら、言ってきたんだ。
その人は、自分の兄で、幽霊なんだって」
あの人、やっぱり変わってる、と言う茂に乃ノ子は言った。
「……その男の人、どんな人ですか?」
「いやそれがさ。
黒いスーツ着たビックリするようなイケメンでさ」
なんだろう。
嫌な予感しかしないんだが……。
「ジュンペイさん、その人のことを僕に紹介して言ったんだ。
『この人は、この世に生まれていないはずの僕の兄だ』ってね」
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