29 / 94
見知らぬ町と迷わし神
迷わし神が出ました
しおりを挟む右って何処からどう右?
山の方に行けばいいって話?
乃ノ子は学校には行かずに、駅を出て、右に曲がった。
すると、商店街があった。
いや、いつもあるのだが、どの店も店構えがなんだか違う。
ちょっと夢の中の見知らぬ町にも似ているのだが、それともやはり違っていた。
山に向かい歩いているうちに、すれ違う人々の服装が変わり、町並みもまた変わっていった。
みな忙しげに前を向いて歩いているので、こちらを見ない。
まるで、この空間に自分がいていないようだな、と乃ノ子は感じた。
線路を渡ったとき、急に風景が変わった。
何処までもつづく田園。
畦道の中程にあるお地蔵様。
こういう場所は何処でも同じようなものかもしれないが。
夕暮れどきで、道の端にたくさんの風車が回っていたら、あのお化け屋敷の中の畦道とそっくりのような気がする。
そう乃ノ子は思った。
そのまま山に向かって歩く。
今、朝のはずなのに、どんどん日が暮れていき、気がつけば、道の両端に、あの風車が回っていた。
風車の色はすべて違うのだが、どの色も強く夕日に染まっている。
迷わし神が出たようだ、と乃ノ子は思った。
なにかに惑わされたかのように、こんな道に迷い込んでしまったからだ。
いや、迷わし神じゃなくて、ジュンペイさんかも。
あそこであの人と話したから。
でも、あの駅の掲示板の文字のせいで、ここに来たわけだから。
私を惑わせたのは、やっぱり、あそこに書かれていたイチさんのものらしき字だろうか。
いよいよ山に踏み込むというところで、鬱蒼とした木々に囲まれた細い道を見上げると、入ってすぐのところに、またお地蔵様がいた。
なんだか見覚えがあるような、と思い、乃ノ子は近づく。
そのお地蔵様は木の洞の中にあった。
赤いよだれかけに赤い帽子。
なんだか見覚えがある気がする、と思いながら、心細さからか、つい手を合わせていると、
「道端のものに迂闊に手を合わせるなと言わなかったか?
漆黒の乃ノ子」
と後ろから声がした。
いつものように黒いスーツを着たイチが立っていた。
「……そんなこと言ってましたっけ?」
言ったぞ、と煙草に火をつけながら、イチは言う。
だが、その煙は乃ノ子のところまで届かない。
なにか別の空間に吸い込まれるように途中で消える。
なにか悪いモノを払うために煙を起こしたのだと、何故かそのとき、乃ノ子は思った。
「言ったぞ。
確か、えーと、百年くらい前」
そうイチは言った。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
あまりさんののっぴきならない事情
菱沼あゆ
キャラ文芸
強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。
充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。
「何故、こんなところに居る? 南条あまり」
「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」
「それ、俺だろ」
そーですね……。
カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。
楠ノ木雫
恋愛
蒸発した母の借金を擦り付けられた主人公瑠奈は、お見合い代行のアルバイトを受けた。だが、そのお見合い相手、矢野湊に借金の事を見破られ3ヶ月間恋人役を務めるアルバイトを提案された。瑠奈はその報酬に飛びついたが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる