都市伝説探偵 イチ ~言霊町あやかし通り~

菱沼あゆ

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見知らぬ町と迷わし神

迷わし神が出ました

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 右って何処からどう右?

 山の方に行けばいいって話?

 乃ノ子は学校には行かずに、駅を出て、右に曲がった。

 すると、商店街があった。

 いや、いつもあるのだが、どの店も店構えがなんだか違う。

 ちょっと夢の中の見知らぬ町にも似ているのだが、それともやはり違っていた。

 山に向かい歩いているうちに、すれ違う人々の服装が変わり、町並みもまた変わっていった。

 みな忙しげに前を向いて歩いているので、こちらを見ない。

 まるで、この空間に自分がいていないようだな、と乃ノ子は感じた。

 線路を渡ったとき、急に風景が変わった。

 何処までもつづく田園。

 畦道の中程にあるお地蔵様。

 こういう場所は何処でも同じようなものかもしれないが。

 夕暮れどきで、道の端にたくさんの風車が回っていたら、あのお化け屋敷の中の畦道とそっくりのような気がする。

 そう乃ノ子は思った。

 そのまま山に向かって歩く。

 今、朝のはずなのに、どんどん日が暮れていき、気がつけば、道の両端に、あの風車が回っていた。

 風車の色はすべて違うのだが、どの色も強く夕日に染まっている。

 迷わし神が出たようだ、と乃ノ子は思った。

 なにかに惑わされたかのように、こんな道に迷い込んでしまったからだ。

 いや、迷わし神じゃなくて、ジュンペイさんかも。

 あそこであの人と話したから。

 でも、あの駅の掲示板の文字のせいで、ここに来たわけだから。

 私を惑わせたのは、やっぱり、あそこに書かれていたイチさんのものらしき字だろうか。




 いよいよ山に踏み込むというところで、鬱蒼とした木々に囲まれた細い道を見上げると、入ってすぐのところに、またお地蔵様がいた。

 なんだか見覚えがあるような、と思い、乃ノ子は近づく。

 そのお地蔵様は木のほらの中にあった。

 赤いよだれかけに赤い帽子。

 なんだか見覚えがある気がする、と思いながら、心細さからか、つい手を合わせていると、
「道端のものに迂闊うかつに手を合わせるなと言わなかったか?
 漆黒の乃ノ子」
と後ろから声がした。

 いつものように黒いスーツを着たイチが立っていた。

「……そんなこと言ってましたっけ?」

 言ったぞ、と煙草に火をつけながら、イチは言う。

 だが、その煙は乃ノ子のところまで届かない。

 なにか別の空間に吸い込まれるように途中で消える。

 なにか悪いモノを払うために煙を起こしたのだと、何故かそのとき、乃ノ子は思った。

「言ったぞ。
 確か、えーと、百年くらい前」

 そうイチは言った。


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