都市伝説探偵 イチ ~言霊町あやかし通り~

菱沼あゆ

文字の大きさ
45 / 94
0番線ホーム

言霊町新聞

しおりを挟む


「あれ? ないね」

「五年前までのはまとめてあるけど、それで全部ねえ」
と職員のおばさんが教えてくれた。

 乃ノ子たちはコミュニティセンターのど真ん中。
 トイレの前にある大きなテーブルで、言霊町新聞を見ていた。

 全員で手分けして探したが、何処を見ても、紀代の言うような記事はない。

「でもさ、確かに見たのよ。
 おばあちゃんちで小芋むくの手伝うとき、下に敷いてた言霊町新聞で」

「……待って。
 それ、ずいぶん前のじゃないの?」

 変色してなかった? と訊く乃ノ子の横で、
「やだーっ。
 私、やっぱり死んでるんじゃないっ?」
と友だちが恐怖のあまり叫び出す。

 これで死んでたら、二度死ぬようなもんだな、と思いながら乃ノ子は聞いていた。

 実際に死んだときと、今、生きていると思ったのに、やっぱり死んでました、となったとき。

「そうだ。
 先生に会いに行けばいいじゃん」
と乃ノ子は言った。

「嫌よ、そんないきなり」

「じゃ、先生が新聞持ってるかもしれないから、見せてもらう」

 同じことでしょうがっ、と友だちがわめく。

「いいよ。
 私が行ってくるよ」
と乃ノ子がすぐさま行こうとすると、友だちが腕を引っ張り止めてきた。

「だから、それも同じことだよっ。
 乃ノ子、私にしゃべるでしょうっ?

 生きてたとしても、これ、仮の姿なんじゃないのっ?

 元に戻ったら、すごい年だったらどうすんのっ」

 私の青春を返してっ、と友だちは悲鳴を上げる。

 だが、風香が、
「いや……あのフルートの先生若いですよ」
と苦笑いして言ってきた。

「しかも、何年か前に、ご主人の仕事の関係でこちらに引っ越して来られて、教室を開かれたって聞いた気がします」

「じゃ、じゃあ、そんな前じゃないよね?」
 友だちが救いを求めるように、風香に訊いている。

 その横で、乃ノ子はスマホをいじっていた。

 やがて、プップップップッ……という、電話を呼び出す前の音を聞きつけて、友だちが振り返った。

「あんた、何処かけてんのーっ」

「フルートの先生のとこ」

 言霊町、フルート教室で検索をかけたのだ。

 フルート教室なんて、そんなに数はないだろうと思ったら、案の定、この町にはひとつしかなかった。

「乃ノ子っ。
 私の怖気付おじけづく気持ち、わかってくれてたんじゃなかったのっ?」

「一度踏み込んでしまったら、さっさとトドメ刺してくれた方が楽かなと思うから」

 そう言う自分を何故かイチがじっと見つめていた。

 止めようとする友だちの手をかいくぐりながら、乃ノ子は電話に出てくれた可愛らしい声の先生としゃべった。

「すみません。
 ちょっとお訊きしたいんですが。

 数年前、そちらの生徒さんがフルートのコンクールで賞をとられてましたよね?

 お名前、なんでしたっけ?

 いえ、さっきすれちがって、何処かで見た顔だなーと思って。

 私、サックスをやってまして。

 はい。
 違う楽器なんですけど。

 同じ教室に大きな大会に出た人がいなくて、少しお話をうかがったりしてみたいかなって」

 はい、はい、と乃ノ子はメモを取る。

「あ、じゃあ、今から伺います」

 伺わないで~っ、と後ろで友だちが叫んでいた。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

あまりさんののっぴきならない事情

菱沼あゆ
キャラ文芸
 強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。  充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。 「何故、こんなところに居る? 南条あまり」 「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」 「それ、俺だろ」  そーですね……。  カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。

楠ノ木雫
恋愛
 蒸発した母の借金を擦り付けられた主人公瑠奈は、お見合い代行のアルバイトを受けた。だが、そのお見合い相手、矢野湊に借金の事を見破られ3ヶ月間恋人役を務めるアルバイトを提案された。瑠奈はその報酬に飛びついたが……

処理中です...