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「ふっかつのじゅもん」
スマホゲームとレトロゲーム
しおりを挟む「レベル幾つのどのあたりで保存したとか伯父さん細かく書いてるんですよ。
いきなりエンディング前とかにもいけるわけですよね」
と乃ノ子は言って、
「いきなりエンディング行って、楽しいか?」
とイチに言われる。
寝る前、イチに報告していたのだ。
「いや、楽しくはないですが。
ゲームに疲れて、もうエンディングだけ見たいな~ってときにはいいですよね」
「ゲーム名とエンディングで検索かけろ。
幾らでも見られるぞ。
ただし、なにも楽しくないし。
達成感もないが」
とイチは言う。
ま、それはそうかもな、と思いながら、
「イチさんもゲームとかするんですね」
と乃ノ子は言った。
「今はスマホゲームくらいかな。
日々、コツコツやってるぞ。
あいつが勧めてくれた奴が結構面白くて」
「あいつって誰ですか?」
「あの、朝、ゴミ出ししてたサラリーマン」
……に見せかけたヤクザかマフィアの人ですよね。
ああいう人もスマホゲームとかやるのか。
表向きの仕事と裏の仕事で忙しそうなんだが。
「コロシ待ちでーす」
とかって待ってる間にやってるとか? と思ったとき、イチがそのゲームを勧めてきた。
「俺のチームに入れてやるよ」
と言い出す。
「……誰が入ってるんですか、そのチーム」
「お前が知ってる辺りだと、俺とゴミ出しサラリーマンと下の喫茶店のマスターとジュンペイ」
探偵とヤクザと喫茶店のマスターと芸能人。
濃いメンツだ……。
のちに、これに乃ノ子の母、弟、祖母、沼田さん。
つまり、主婦、受験生、料理研究家、家政婦は見た、
まで入ってくるのだが。
まあ、それはさておき。
乃ノ子は古いゲームを開ける前に、とりあえず、スマホゲームを入れてみた。
ふむふむ。
森を開拓して、家を建てたりとかするのね、と乃ノ子はベッドに転がったまま、ゲームをはじめていた。
パズルとかをやって、森を開拓し、家を豪華にしたり、町を作ったりするようだ。
小さな可愛いキツネのキャラといっしょに開拓していくのだが。
最初はテントで寝ていた子ギツネが、やがて、小さなログハウスを建て、その中で椅子に座ってくつろいだりしはじめる。
こちらを見て、
「ののこ、おうち、ありがとう」
とか言ってくる。
あなたのために、なんでも致しますっ、という気持ちになった。
これはハマるな、と思ったとき、
「乃ノ子ー、まだ起きてるの?
もう寝なさいよ~」
と母親が言ってきた。
トイレに行こうとして、乃ノ子の部屋からもれる灯りに気づいたらしい。
はーい、と言って、乃ノ子は灯りを消し、布団に潜り込む。
寝ようとして子ギツネが気になり、また開けてみた。
子ギツネはログハウスの中を歩き回ったり、ロッキングチェアで揺られたりしていた。
ゲームやってない間も動いてるのか、と思ってしまう。
いや、実際には、ゲームを始めた瞬間、それっぽく動いてみせているだけなのだが。
なんだか、自分が見ていないときも、この子ギツネが此処で暮らしている気がして。
もっと設備を整えてやらねばと思ってしまう。
……なんか癒されるな、と思いながら、目を閉じた。
「へー、森を開拓するゲーム。
なんか見たことある気がする」
朝、紀代たちに学校でゲームの話をすると、そう言ってきたので、
「紀代たちもやる?」
と乃ノ子は訊いたが。
風香とふたり、いやいや、と手を振ってくる。
「乃ノ子に勧められるゲームとか。
またどんな怪現象が起こるかわからないから」
「でも、最初に勧めてきたの、私じゃなくて、イチさんだよ」
と言って、
「……ますます、なにが起こるかわからないじゃないの」
と言われてしまった。
風香が、
「でも、なんだかんだでいいですよね、乃ノ子さん。
この世のものかどうかよくわからないですけど、イチさんすごいイケメンじゃないですか」
と言ってくる。
「……あなた方はあれですか。
相手がこの世のものでなくとも、あやかしとかでも、イケメンなら良いと」
良い、とふたりは頷いてきた。
……そうですか、と思ったとき、教師がやってきて、風花は自分のクラスに帰っていった。
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