そこらで勘弁してくださいっ ~お片づけと観葉植物で運気を上げたい、葉名と准の婚約生活~

菱沼あゆ

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あかずの間ができました

吊り橋効果だ!

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 ぺたぺたとガムテープにパウダービーズを引っ付けてみたり、やっぱり、これでは時間がかかってしょうがないとホウキで集めてみたり、掃除機で吸ってみたりしながら、二人で小部屋にしゃがんでいた。

 葉名はまたガムテープを引っ張り出しながら、背中合わせに作業している准に向かい言った。

「社長、今日は晩ご飯おごりますよ」
「生意気言うな、新入社員」

「いや、人として、おごりますよ……」
という会話をしながら、二人がかりで片付ける。

 まだ、ところどころ、白いものがふわふわしているし、身体にも引っ付いているのだが、もう諦め、葉名たちは小部屋の戸を閉めた。

「今日は不法投棄する人の気持ちがわかりましたよ。
 死体のように山中に穴掘って埋めたかったです」

「……死体埋めんのって、不法投棄とかって問題か?」
という疲れた准の小さな呟きをスルーしながら、

「それか、重石おもしをつけて、鎖で縛ってマリアナ海溝に沈めたかったです」
と葉名は言う。

 准は、
「くたびれたパウダービーズクッション持って、なにでマリアナ海溝まで行く気だ」
と言い返してきたが、いつもの覇気はなかった。

 結局、外に出るパワーはもうなく。

 二人でレトルト食品と冷凍のご飯を温め、テレビの前のローテーブルで向かい合って食べる。

「……俺はもう此処に泊まるぞ」
と箸を置いた准が言い出した。

 ええっ? と葉名は顔を上げたが、准は、

「心配するな。
 襲う元気はない」
と言う。

「だが、帰る元気もない。
 人として、泊めてやれ」

「そ、そうですね。
 今、お布団の準備します」
と葉名は行こうとしたが。

「待て、葉名」
と腕をつかまれた。

「確かに襲う元気はないが。
 人として、キスくらいしてやれ。

 これだけ頑張ったんだから」
と准は葉名を見上げ、言ってくる。

 むっ、無理ですっ、と腕をつかまれたまま固まっていると、

「仕方のないやつだな」
と准は言い、葉名を引き寄せ、その背に触れる。

 少し身を乗り出し、キスしてきた。

「……うん、ちょっと頑張ったかいあったな」
と呟き、准はその場に横になって目を閉じる。

 ひーっ、と思いながらも、葉名はついつい、美しすぎる准の寝顔を見つめてしまう。

 な、長いな、睫毛まつげ

 目を閉じると余計、顔が整ってるのがわかるな。

 整いすぎて、胡散臭く見えてしまうのが、玉にきずだが。

「……お布団、用意してきますね」
と言って葉名は寝室に入っていった。




 葉名が寝室に行ったあと、准はチラと目を開けてそちらを見た。

 が、すぐに戻ってきたので、また寝たフリをする。

 どうするかな。

 本当におとなしく寝るのが正解か?

 まあ、葉名だからな。

 葉名は自分の側に膝をつき、少し顔を見たあとで、ふふふ、と微笑んだようだった。

 持ってきていた毛布と布団をかけてくれる。

「おやすみなさい、社長」
と言う葉名の今までになく親しみを込めた声に、無理強いしなくてよかった、と思った。

 一緒にパウダービーズの危機を乗り越えたことで、絆が強くなったんだな。

 吊り橋効果だ、と准は寝たフリをしながら思っていた。





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