2 / 15
雑木林の骨
何故、これが事件だとわかる
しおりを挟む将生が子どもたちに連れて行かれたのは、琳のカフェの後ろにある小さな雑木林だった。
もうかなり紅葉していて、地面に少し葉も落ちている。
将生は琳の店があるのとは反対側の雑木林の出口を振り返ってみた。
住宅街の道が見える。
あちら側にも住宅街や商店街があるようだ。
子どもたちは、向こう側に住んでいるらしく、平日は、この雑木林の中を通って、学校に通っているようだった。
こんな小道が通学路なのか、と思ったが、そういえば、自分も家と家との間の狭い砂利道が通学路だったりしたっけな、と思い出す。
子どもたちが毎日通る、その小道の辺りは、木々が少なく、日の光が結構差し込んできて、明るい。
雑木林も小さいし、まあ、これなら、そう危なくもないかな、と思っていると、
「おにーさん、おにーさん」
といまどきの子どもらしく、要領よく、おにーさんと呼び変えながら、子どもの一人が手招きしてきた。
「こっちだよ」
子どもたちが骨の一部を見つけて掘ったと思しきその穴には、犬の骨の他の部分が覗いていた。
その周りも何ヶ所か軽く掘ってある。
そのせいで、近くに埋めてあった首輪も見つけたのだろう。
……しかし、なんで、周囲を掘ってみた?
腰を屈めて、それらの穴を見ていた将生は、首輪を見つけた、と言ってきた利発そうな少年を見上げ、
「なんで、周囲を掘ってみたんだ?」
と訊いてみた。
「いや、それが……」
と彼が言いかけたとき、
「お待たせしてすみませんーっ」
と琳が大きなスコップを手にやってきた。
「はい、宝生さん」
と笑顔で渡される。
……何故、俺が、と思いながらも、掘った。
派手に掘って割れでもしたら、犬が可哀想だなと思い、そっと掘っていると、
「周囲ぐるっと掘ってみてください」
と琳が指示してくる。
何故、お前が命令する……と思いながらも掘ってやった。
店の黒いエプロンを外した琳が新鮮だったから
――では、決してない。
琳に言われるがまま、掘ってみたが、周囲にはなにもなかった。
琳が首輪を持ってきた少年、大橋龍哉を振り返り、訊いていた。
「この首輪、そこの穴にあったんだよね?」
先程、龍哉に聞いた場所を琳は指差す。
犬が埋まっていたのより、少し奥の小さな穴を見ながら、うん、と龍哉は頷いた。
「この首輪、見つけたとき、このくらいのキーホルダーみたいなのとかついてなかった?」
と指で、小さな楕円形を作り、琳はその少年に訊いていた。
「ああ、鑑札とか?」
とすぐに理解した龍哉が訊き返す。
「なかったよ。
迷子札も」
そう、と頷いた琳は、こちらを見上げ、
「宝生さん、事件かもしれませんよ」
と言う。
「事件?
この犬殺されたっていうのか?」
それには答えず、琳は言ってきた。
「この首輪、高いんでしょう?
犬の種類、私にはわかりませんが、宝生さんはわかりますか?」
「……犬は専門じゃないから、ぱっと見ただけじゃ、断定することはできないが」
そう言いはしたが、頭蓋骨の感じや骨格から、ドーベルマンとかの顔も身体もスリムな犬かな、とは思っていた。
琳のように確証もないのに、ポンポン口に出すことは、立場上出来ないが。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる