左左左右右左左  ~いらないモノ、売ります~

菱沼あゆ

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品物、効果がありませんっ

恋のはじまらない消しゴム

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 ある日の放課後。

 菜乃が会長と旧校舎に向かって歩いていると、モウレツな勢いでスミ子が走ってきた。

「菜乃ーっ」

「わあ、びっくりした」
と声を上げたが、

「……もっとびっくりしたように言いなよ」
とスミ子に言われてしまう。

「菜乃ー。
 この消しゴム、効果ない~っ」

 スミ子は、あの真っ白な『恋のはじまる消しゴム』を目の前に突き出してきた。

「おかしいな」
と横で会長が首をかしげている。

「……おどしておいたんだが」

「会長……」

 会長は、宣言通り、スミ子の恋が叶うよう、後輩に伝えておいてくれたようだった。

「ああでも、そういえば、その子のことはよく知らないと言われたな」

 なんとなく事態をさっしたらしいスミ子は、しゅんとして言う。

「わたし、いつも物陰から見てるだけですもんね。
 もうちょっと行動しないとダメですよね」

「そんなことない。
 スミ子は、じゅうぶん、行動してるよ?

 会長、近くで、よくモノを落としてる子だと言ったら、わかるかもしれません」

「いいの。
 ありがとう、菜乃。

 モノやおまじないに頼ってちゃダメってことだよね。

 菜乃は、わたしにこの消しゴム、くれたのに。
 自力で、そんなすごいイケメンの人、つかまえたんだもんね」

 スミ子の目は菜乃と会長を見ていた。

「いっ、いや、違うよ。
 なにもつかまえてないしっ」
と菜乃があせって言うと、会長はちょっと夕空を見たあとで、

「そうか。
 違うのか。

 じゃあ、違うな」
と言って、さっさと歩き出していってしまう。

「えっ?
 『じゃあ、違うな』ってどういう意味なんですか?」

 えっ? と菜乃がとまどっている間に、会長はひとりで、旧校舎に入っていってしまった。

「ちょっと待ってくださいよ、会長~っ」

 そう叫びながら、菜乃はあわてて、会長の広い背中を追って走る。

 ずいぶん前に入ったはずなのに、会長はなぜかまだ、階段途中にいてくれた――。




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