都市伝説探偵イチ2 ~はじまりのイサキ~

菱沼あゆ

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呪いの(?)雛人形

その車は危険です

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「呪いの雛人形があるらしい」

 ある日の夕暮れどき、お弁当屋さんの前で待ち合わせたイチが乃ノ子ののこにそう言ってきた。

 今日は、取り残されたように妙な場所にあるガードレールの前に彩也子さやこの姿はない。

 大学生の彩也子どころか、高校生の彩也子も居なかった。

 まあ、普通に居ない日もあるのだが。

 この間のVRのときから、彩也子はなにか考え込んでいるようだったので、乃ノ子はちょっと気になっていた。

「呪いの雛人形って今、夏ですよ」
と乃ノ子が言うと、

「だから呪われてるんじゃないのか?」
とイチは言う。

「……しまえないとか」
と呟くイチもその都市伝説の全容は知らないようだった。

「まあ、片付けられないと困りますよね」

 呪いにしては、ショボイ気もするけど。

 っていうか、片付けられないのが呪いなら、私の部屋も呪われているのだろうか……と乃ノ子は思う。

言霊ことだま町の海沿いの地区らしいんだ。
 日曜にでも行ってみるか?

 ちょっと遠いから。
 タクシーでもいいんだが。
 実は今、車を預かってて」

「えっ? 車?」

「その車、なんか憑いてるらしくてな。
 検証してくれって言うから、ついでに乗って行こうかと」

「……イチさんが運転するんですか?」

 乃ノ子は恐る恐るそう確認してみた。

 運転中消えることがあるので、普段は運転しないと言っていたのに、と思いながら。

「そうだな。
 だって、そんな呪われた車、他の奴に運転させたら危ないじゃないか」

 ああ、ジュンペイにさせるか、とイチは言い出す。

「いや、ジュンペイさんになにかあったら、アイドル業に差し支えて、みんなに恨まれますよ」
と言うと、イチは、まあそうだよな、と言ったあとで乃ノ子を振り向き、訊いてきた。

「乃ノ子、免許持ってるか?」

「……持ってるわけないじゃないですか」

「だよな。
 じゃあ、出発までに、車の止め方だけは覚えとけ」

「は?」

「運転中、いきなり俺が消えたら困るだろ?」

 だから、そんな人は運転しないでくださいよ~っ、と乃ノ子は叫んだ。



「えっ? 乃ノ子っ。
 その格好で行くわけっ?」

 日曜の朝、玄関で靴を履いていた乃ノ子を母、絵美えみとがめてきた。

「なにか悪い?」
とシンプルだが、それなりおしゃれしたつもりの乃ノ子は自分の服を見下ろしてみた。

 アイボリーのTシャツにグレーのワイドストラップのオールインワン。

 それに同色のマリンキャスケット。

 派手すぎず、地味すぎず、港町をウロウロするのにも悪くないと思うのだが……。

 だが、絵美は、
「あんた、イチさんと出かけるんでしょ?
 そんなんじゃインパクトないわよ」
と言い出す。

「いや、そこ、インパクト、必要……?」
と言う乃ノ子に向かい、

「これにしなさいよっ」
と絵美は、

 何処からそれ持ってきたっ?
と問いたくなるような、赤と黄色のチェックでミニのワンピースを突き出してくる。

 アイドルユニットかっ、という感じの服だった。

 ちょうど家の前の道に車がとまる音がしたので、乃ノ子はそれ以上ごちゃごちゃ言われないよう、
「行ってきまーすっ」
と急いで玄関から走り出た。


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