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呪いの(?)雛人形
お雛様はなにを考えているのかな
しおりを挟む何軒かの家のお雛様を見て回ったが。
どの家の人も、すごく人当たりがよく、ほっこりしてしまった。
まあ、どの家でも片付けても、お雛様、一瞬で戻ってきていたのだが……。
みんな、困ったな~という顔をしながらも、愛着のあるお雛様なので、処分しようという気はないようだった。
「なにかご不満があって、こうなるのかなと思って、うちなんか近くのお寺さんに頼んでご祈祷いただいたんですけど。
やっぱり、お雛様戻ってきてしまって」
もうしょうがない、という感じに乾物屋の奥さんは言って笑っていた。
お祓いじゃなくて、ご祈祷というところに愛を感じるな、と乃ノ子は思う。
雛人形を悪いものだとは思っていないようだし。
悪いものがついているとも感じていないようだ。
なんだかわからないと首を捻るばかりというか。
まあ、お祓いしても、悪いものではないのなら祓えないし、と乃ノ子が思っていると、イチが言った。
「ご祈祷したところで変化なかったということは、雛人形は自分が間違っていないという強い意志を持ってやってるのかもしれませんね」
自分が間違っていないという強い意志を持っているお雛様ってなに?
という顔をおばさんはしていた。
イチはさっきの写真をおばさんに見せる。
「この男を見たことないですか?」
さっきの電信柱の陰の男だ。
隠れているので、斜めにだが、顔が写っている。
「さあ?
いらっしゃったことはあるかもしれませんけど……」
まあ、何処にでも居る競馬場のおじさんなのでわからないか、と乃ノ子は思う。
……いや、ほんとに競馬場にも出没しているかは知らないのだが。
イチはおばさんが怖がるといけないと思ってか。
この男が町の中でコソコソしていることは言わなかった。
乾物屋から出て、会長にまたなにかわかったら連絡すると挨拶し、車がある波止場に戻った。
「いい雰囲気の町ですね」
潮風に吹かれながら、古い町並みを眺めて乃ノ子は言う。
「いい場所だし。
みなさん、やさしいし。
お雛様もすごく大切にされてる感じが伝わってきました」
「……雛人形もそう思ってるかもしれないな」
「え?」
乃ノ子がイチを振り向いたとき、
「ねえ、美味しいものでも食べに行こうよ」
とジュンペイが言った。
「じゃあ、個室のあるとこな。
お前が居ると、なんか人が寄ってくるから」
そう言いながら、イチは車のドアを開ける。
嫌だとは言わなかった。
「いいよー。
僕の行きつけの店に行こうよ」
そこ、高そうなんですけど……と苦笑いした乃ノ子だったが、おや? と思う。
車は二人乗りだ。
どうやって帰ればいいのか。
「僕、近くまでマネージャーさんに送ってもらったから車ないよ」
とジュンペイが言う。
「じゃあ、お前はタクシーで行け」
「兄貴がタクシーで行きなよ。
運転中消えたら困るじゃん、兄貴の場合」
そう言いながら、ジュンペイはイチが乗る前に、運転席に乗り込む。
勝手にエンジンをかけていた。
「おい、こら」
「乗りなよ、乃ノ子ちゃん。
大丈夫だよ、兄貴には行き先教えとくから」
と言いながら、ジュンペイはナビを設定していた。
「今日も安全運転で行きましょう」
とナビがしゃべり出す。
乃ノ子が乗るかどうか迷っていると、ポーン、とナビが音を出した。
「ゼロメートル先になにか居ます」
ゼロメートルッ!?
「なんか乗ってますよっ、この車っ」
「なんだろうねえ」
はははは、とジュンペイは笑っている。
「さ、乗りなよ、乃ノ子ちゃんっ」
と軽快にジュンペイは言ってくるが。
いやいや、できれば遠慮したいです、と乃ノ子は後ずさる。
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