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一年生・春の章
ミスティルティン魔法図書館へようこそ!⑤
しおりを挟むそれからもタバサは興奮した表情でどんどん問題を出して行き、フィンはそれを全て正解していく。
「じゃあ、D-j5の本のタイトルは?」
「”最果ての魔術師・アリアドネ“です」
フィンは悩む事なくあっさり答え、リヒトは得意げな顔でタバサを見る。
「…………すごい逸材だわ!(そして館長がすごくドヤ顔なのが面白い!)」
タバサは呆然と立ち尽くし、やがてリヒトに顔を向け、興奮した面持ちで詰め寄る。
「館長、彼はいずれ生きた図書館になれるのでは!?!?」
「生きた図書館だと?」
「例えばこの世から本が消滅しても、彼が記憶していれば全て復活させられるんですよ!」
タバサはくるりと一回転し、うっとりした顔でバンザイすると、リヒトは一瞬目を見開き、真顔でフィンを見下ろしじっと見つめる。
「(……まるで夢物語のようだが、不可能ではないな。国の重要禁書を狙う奴等に利用価値があると思われたら、狙われる可能性は高い。よからぬ者に拐かされたら大変だ)」
フィンは首を傾げ、真顔のリヒトに対してにこーっと笑みを浮かべた。
「リヒト、なあに?」
「……いや、なんでもないよ(まぁ、危険な目には合わせまい。俺が側にいる限りフィンは安全だ)」
「?」
不思議そうにするフィンをよそに、リヒトはぽんぽんとフィンの頭を撫でて笑った。
「ステラさん」
タバサはフィンの手を取って鼻息を荒くする。
「国が誇る最大級のアーカイブ、ミスティルティン魔法図書館へようこそ!」
「……!」
タバサの歓迎の笑顔に、フィンは満面の笑みを浮かべて頷く。
「はい!よろしくお願いします!」
「来週から、お待ちしてますね」
フィンは満面の笑みを浮かべリヒトに向き直ると、リヒトはコクリと頷く。
「リヒト、ありがとう!」
フィンの笑顔がこの世で一番愛おしいと思うリヒトは、絆されたように優しい笑みを浮かべフィンの頭を撫でた。
「「「笑顔が破壊級の美しさ」」」
普段リヒトの優しい笑みを見る機会が無い者達は、その笑顔の破壊力に驚き後退りをする。
「(噂の大魔法師様目当てでミスティルティンに入ったけど、実際に生で見れるなんて……!やっぱりお美しい!)」
本日から配属になったローザは、大人しそうな見た目に反し、内心は幼少期からリヒトへの強い憧れに満ちていた。
そして、フィンに視線を移すと、少し不機嫌そうな表情を浮かべる。
「(でも、フィンとかいうボケーっとした奴が邪魔ね……もしかして寵愛受けてるのかしら。ていうかどっかの貴族?見た事ないけど。肌がすっごい白いから北部とか?)」
ローザは苛ついた表情を浮かべていたため、横にいたルークは首を傾げた。
「D。もう一度言うが週に一回、5時間までで頼む。休日は無しだ(俺との時間があるからな)」
リヒトは念を押すようにタバサにそう言うと、タバサは頷いてから敬礼をする。
「承知しております館長!」
「ミネルウァの休校日は火曜と木曜だ。どちらかにしてくれ」
ルークは目を見開きフィンに近付く。
「へー!お前ミネルウァなんだ!俺スレクトゥなんだよ。もしかしたらエスペランス祭で会えるかもなぁ」
ルークはフィンにニッと歯を見せて嬉しそうに笑う。
「そうなんですね!スレクトゥのお話、今度聞かせてください!」
「おう。あ、改めて俺はルーク・ベイカー。今年十七歳。よろしく」
ルークはフィンに明るく話しかけ、フィンも笑顔で応対し、興味津々で目を輝かせ雑談をしていると、リヒトは少し面白くなさそうに横目で眺める。
「(馴れ馴れしいガキだな。優秀な騎士を輩出するベイカー家の者か。如何にもポンコツそうだが、雇用書にサインをしたのは俺か)」
タバサはリヒトが若干不機嫌になっているのに気付いたが、ルークは全く気付かずフィンと楽しそうに話を続けていた。
ローザは、少し様子を見てから、一歩踏み出しリヒトを横目で見ながらフィンへ声をかけるべく口を開く。
「あの……(こうなったらこのチビエルフを利用して、大魔法師様に名前だけでも覚えてもらわなきゃ)」
ローザはフィンに対し声をかける。
「あの、私はローザ・モリスです。新人同士仲良くして下さいね!ちなみにイデアルの三年生です。エスペランス祭でお会いできたらいいですね」
ローザが猫を被ったようにしおらしい笑みを浮かべ、長く美しいブロンドの髪を揺らしながら声をかける。
「フィン・ステラです!こちらこそ仲良くして下さい!(うわぁ、イデアル魔法学院ということは、すごくお嬢様なのかな?)」
フィンが笑顔でそう返すと、ローザもまた優しく笑みを返す。
「はい、よろしくお願いします。それと……大魔法師様、この度は期間限定で雇って頂いてありがとうございます(こんな機会ないし、アピールしなくちゃね)」
図書館内では客が二度見するほどの美少女エルフだが、リヒトはさほど興味が無さそうにローザを見下ろして口を開く。
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