【完結】大魔法師様は運命の恋人を溺愛中。〜魔法学院編〜

みるくくらうん

文字の大きさ
231 / 321
一年生・秋の章<それぞれの一週間>

うぉーあいにー⑪

しおりを挟む


「リンメイさん。不甲斐ない僕をどうか許してください。僕が妾の子だから、貴女は酷い目にあったんです……貴女はそんな目に合うような方ではないのに……ごめんなさい、ごめんなさい……」


 シャオランはそのままリンメイを抱き締め涙を流す。泣いたのは母親が死んだ時以来だった。
 優しい彼女を守る事も出来ず、無力な立場の自分を責めるシャオラン。

 自分だけならまだよかった。しかし、自分の所為で他人が傷付くという状況に耐えかねたシャオランは、「刺し違えてでもハオランを殺す」と呟き立ち上がる。それは青い覚悟でもあり、自分の存在意義を見失った瞬間でもあった。


「駄目よシャオラン……!絶対にそれは駄目」


 リンメイはシャオランの手を強く握って真剣な表情を浮かべた。


「貴方は悪くないのよ、シャオラン……悪くないの……貴方の所為じゃない。これはこの家が、義母あの方の呪いなの。私達では到底祓えない呪いだったの」


 シャオランが自分に恋愛感情を持っていないことは知っていた。それでも優しすぎる彼は、自分のために義兄を殺そうとしている。そんなことをさせてしまっては、シャオランは二度と幸せにはならない。そんなこと、リンメイは望んでいなかった。


「貴方はどうか、優しい貴方のままでいて。あの人たちのようにはならないで欲しいの。いつか絶対、幸せになって、シャオラン。絶対よ。お願い」


 リンメイは言い聞かせるようにシャオランの肩を掴み目を細め涙を流しながらそう訴えた。


「リンメイ……」


 年上の彼女に、母の影を重ねるシャオラン。あのひとも、こんな風に清らかな女性だったと思いを馳せる。


「でも……でもね……シャオラン。今日だけ、今晩だけは、貴方の婚約者でいさせて」


 リンメイは切なげにそう言うと、突然服を脱ぎ始める。


「どうか、今晩だけはハオランとの出来事を忘れさせて欲しいの。大好きだった貴方に抱かれたい。最初で最後のワガママを聞いてくれるかしら」

「っ……」


 リンメイもシャオランも、この時すでに悟っていた。ハオランは一度自分のものにすれば、執着を示し手放さない性格だということを。
 それであれば、最後に好きな男に抱かれたい。リンメイはそう願い泣きながらシャオランを見つめた。


「シャオラン……お願い」


 リンメイが切なげに相手を呼ぶと、シャオランは瞳を震わせ、やがて決心したように自身も服を脱ぎ始める。
 この夜、二人は初めて結ばれ、そして二度と結ばれることはない運命を辿った。


 後日、義母とハオランの取り決めで、リンメイはシャオランとの婚約を破棄させられる。
 その後リンメイは没落回避を条件にハオランの側室として生きる道を選んだのであった。






--------------------------------------

 


「……」


 フォンゼルはシャオランの話を聞き終えると、瞳を震わせ何も言えず俯く。あまりにも切なく悲しい出来事を背負ったシャオランに、何も言えずにいた。


「……ということで、その一回、だけです。色々と感情が混ざってて、正直あまり覚えてないですが……。あの時はただ、酷い目に遭った彼女をただどうにか慰めたかっただけです。恋愛感情を持っていなかったのが救いかもしれませんが、ただただ彼女が可哀想で」


 シャオランはそう言って切なげに空を見上げる。自分のために生きれぬ人生を辿ったリンメイに、シャオランは今も胸を痛め続けた。


「……シャオくん」


 フォンゼルが鼻声で呼ぶと、シャオランはそっとフォンゼルの頬に触れる。震える肩と指に絡む温かな涙で、相手が涙を流している事に気付いた。


「泣かないでくださいフォンゼルさん」


 シャオランは微笑みながらフォンゼルの涙を拭い続けるも、フォンゼルの瞳からはぽろぽろと大粒の涙が溢れて止まらなかった。


「シャオくん、シャオくん」


 慰める言葉が思い付かないフォンゼル。虐げられ続けてきたシャオランの過去の一部に触れ、胸が苦しくなり呼吸が乱れた。


「フォンゼルさん、そんなに泣いてしまっては過呼吸になってしまいますよ。落ち着いて、さぁ、こっちにおいで」


 シャオランは優しい声色でそう言うと、フォンゼルを優しく抱きしめそのまま背中を撫でた。


「(苦しい……でもきっと、シャオくんの方が何倍も苦しかったんやろな)」


 過呼吸気味の中、フォンゼルはシャオランの背中を掴んでも苦しいながらもシャオランのことを考えていた。


「吸って、吐いて」


 シャオランはフォンゼルの呼吸を整わせるため優しく指示を出す。フォンゼルは言われた通り呼吸をしていくと、乱れた呼吸が整った。


「(シャオくん……優しいシャオくん。リンメイさん、シャオくんのこと止めてくれてありがとう。シャオくんを助けてくれてありがとう)」


 フォンゼルはシャオランに道を外さぬよう説いたリンメイにひっそりと感謝をする。
 しばらくすると落ち着いたのか、フォンゼルはぎゅうっとシャオランを抱き締めて鼻を啜った。

 すでに夕陽は落ち、空は淡い紫と紺色のコントラストになる。


「落ち着きましたか?」

「うん。ごめんなぁ、ボクが聞いたのにこんな……」

「良いんです……貴方には知って欲しかったので。いずれにせよお話ししようと思っていました」


 シャオランは少し暗い表情を浮かべてフォンゼルと目を合わさずさらに続けた。


「その……フォンゼルさん。僕は誰かを仲良くなったり、恋人を作って愛するのが怖かったんです。自分の所為で傷つく運命を辿るのではないかと」


 シャオランは震える手でフォンゼルの手を握る。






 
しおりを挟む
感想 160

あなたにおすすめの小説

巣ごもりオメガは後宮にひそむ【続編完結】

晦リリ@9/10『死に戻りの神子~』発売
BL
後宮で幼馴染でもあるラナ姫の護衛をしているミシュアルは、つがいがいないのに、すでに契約がすんでいる体であるという判定を受けたオメガ。 発情期はあるものの、つがいが誰なのか、いつつがいの契約がなされたのかは本人もわからない。 そんななか、気になる匂いの落とし物を後宮で拾うようになる。 第9回BL小説大賞にて奨励賞受賞→書籍化しました。ありがとうございます。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。

殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?

krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」 突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。 なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!? 全力すれ違いラブコメファンタジーBL! 支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

前世が飼い猫だったので、今世もちゃんと飼って下さい

夜鳥すぱり
BL
黒猫のニャリスは、騎士のラクロア(20)の家の飼い猫。とってもとっても、飼い主のラクロアのことが大好きで、いつも一緒に過ごしていました。ある寒い日、メイドが何か怪しげな液体をラクロアが飲むワインへ入れています。ニャリスは、ラクロアに飲まないように訴えるが…… ◆いつもハート、エール、しおりをありがとうございます。冒頭暗いのに耐えて読んでくれてありがとうございました。いつもながら感謝です。 ◆お友達の花々緒(https://x.com/cacaotic)さんが、表紙絵描いて下さりました。可愛いニャリスと、悩ましげなラクロア様。 ◆これもいつか続きを書きたいです、猫の日にちょっとだけ続きを書いたのだけど、また直して投稿します。

身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される

秋津むぎ
BL
魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。 ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。 死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――? 傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。

処理中です...