殺してあげる、何度でも

碓氷雅

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#3

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 さて、人は今自分が生きているということをどう感じているがゆえに、自分は生きているといえるのだろう。もちろん死んでいないか生きている、ただそれだけに過ぎない。

 ならば、死がないこの男にはどうして生を感じさせよう。

 簡単だ。人は息が出来なければ、血が多く流れれば、首が吹っ飛べば、その生はなくなる。死が訪れる。それをまねればいい。


 いつだったか、霧生はそう言った。だから、様々な死を体験するのだと。

「腹上死ってどうすればできるんだろうね?」

 夢うつつな頭に聞こえてくる。それは難しいのではないかと、寝ぼけたまま三島は思った。心筋梗塞なんて誘発は出来るが、その薬を手に入れるのは骨が折れる。その危険性が知られているがゆえにその管理は厳重だ。

「なら、つくればいいと思わないかい?」

 それこそ何年かかるかわからない。それに睦み合っている最中に腹の上で死なれるなど、寸止めもいいとこではないか。

 乾いた笑いが降ってくる。それを聞いてようやく自分の考えがすべて言葉になっていたことに気が付いた。

「…起こしてくれてもよかったじゃないですか」
「ん? 君は起きてたじゃないか」
「いや、半分寝てたというか…」
「なるほど? 微睡みかけているときに本音が出やすいのか。良いことを知った」そう言って霧生は満足げに口角を上げた。「でも、心臓が止まる感覚は興味があるね」

 にこにことして三島を見つめる。やがてにらめっこに折れた三島は大きく息をついて肩を落とした。
「分かりましたよ。つくります。でも期待しないでくださいね? 薬剤師っていっても国試受かったばかりですし。まあ、僕が死ぬまでには作り上げるつもりですけど」
「どうせなら心臓が止まったままになる薬でもいいよ?」
「嫌ですよ。景さんそれでも生きてそうなんですもん」

 布ひとつ纏わぬその胸をノックする。もし、心臓が止まっているにもかかわらず生きていたならそれこそ殺し方がないよな、などと考えながら。

「時間はたっぷりあるんだ。それくらいできるだろう? うちの天才は。私も協力を惜しまないよ」
「えっ。それってサンプルをいっぱいくれるってことですよね?!」
「ん?」
「そうと決まれば善は急げです!」

 布団を乱暴にはぎ、三島は霧生の手を掴んでベットを降りる。地下にある研究室に連れていき、気分屋な霧生の気が変わらぬうちにサンプルを、と思っていたのだろうが、霧生はベットから降りることはなかった。

 その手を払ったわけではない。繋がれたままだ。再び乾いた笑いが降ってくる。

 足腰がまともに立たない、三島のもとに。
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