はるよ こい。

たみやえる

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(ざわついているなぁ)
 アヤは自分の動作が人目を引かないよう、目だけを動かして教室内を見渡した。
 いや、本当のところは普段どおり、下校前の他愛もないおしゃべりを交わすひとときなのだけれど。
 何せ一週間後はバレンタイン。
 女の子同士でチョコをやり取りするのも当たり前になっているけれど、やっぱりこのイベントの醍醐味といったら、
 誰が本命で、どう渡すのか
 今年は誰が一番多くもらうのか
……その結果誰と誰がくっつくのかと言うのはおまけであって。
「……で、陽菜の好みってどんなタイプな訳」
——あらら、クラスの半分が耳をダンボにしてる。
 陽菜はクラス一というより学年一の美少女で文武両道性格も良いモテ子。まるで漫画から出てきたヒロインみたいな子。下校時間を過ぎてもダベっている男子たちが、お互いを目線で牽制し合いながら聞き耳を立てているのが見え見えでアヤは少しだけシラける。
「え……まぁ、あんまりおしゃべりじゃない感じ?」
「他には?」
「うーん、背が高い人、かな」
 渋々……言った風の答えに、教室内にいる数名の低身長男子たちが、あからさまにがくりとなる。
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