はるよ こい。

たみやえる

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 陽菜の喉がヒュッと鳴る。
「嫌なこと、あったの?」
 陽菜の方が階段、一段上に立っているのにあやの背の高さだと見下ろすことになる。
 じっと目を合わせていると、陽菜の両目に涙の膜が張り、表面張力を超えてつるりとした頬を流れ落ちていく。
 その後は二人とも無言のまま、階段を降り、靴を履き、なんとなく別れ難くて、アヤは陽菜の家の前まで送って行った。
 その間、アヤはずっと陽菜の手を握りしめていた。他人と手を繋ぐなんて何時ぶりだろう。
 陽菜の家の玄関口で、繋いでいた手を離した。
 離したアヤの手を、陽菜が追いかけるようにギュッと握ってくる。思わず陽菜の頭を宥めるように撫でてしまった。
「忘れられそう? 忘れられるなら、忘れた方がいいよ」
 カゲの受け売りを言ってみた。

 一人、帰り道、細い月の横に浮かぶ星を見ながらアヤは(こまった……)と白い息を吐く。
 陽菜があんなふうに泣くなんて。
 桜庭の奴、どれだけ辛くあたったんだろうか。
「……泣くまで絞るなんて……、許せないなー」
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