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⑤ -1 歳上同居人のお悩み相談
しおりを挟む高藤霧矢は久しぶりに同級生に呼び出されたことに気分が高揚していた。相手は単なる同級生ではない。高藤が幼い頃から憧れ続けてきた心の中では神と同じ高みにいると信じて疑わない存在だからだ。
彼は成績優秀だったから、必ずや自分と同じ国内随一の最終学府であるT大を受験するものと信じて疑わなかった。
大学も、そして社会人になっても、彼は自分の太陽として燦然と輝くと思っていたのである。
三年前までは。
彼がまさか私大、しかも単願で受けるとは予想外すぎて裏切られたと数ヶ月立ち直れなかったくらいだ。
今日はその彼からの誘いを受け、「店選びは任せろ」と大企業の会長をしている祖父の口利きでとある高級料亭の一室を借り切ったのだ。
個室にしたのは、別に何か下心があるわけではない。
高藤に同性を性的対象にする嗜好は無い。
ただ、自分なりに彼への敬意を表したかった。
あと、電話口の彼が珍しく言い淀みながら、
「相談したいことがある」
と言ったから、というのもある。
--お前にしか相談できない。
という言葉に、舞い上がったのだ。
三年ぶりだが、やはり彼は完璧だった。
爽やかでいて不思議な色気を身に纏い、誰もを魅力する笑みを口元に浮かべている。
いや、色気について言えば前より迫力が増したような……?
仲居が運んでくる料理に箸をつけていると、彼がチラッとこちらを見た。
身長が180センチはある彼ほどの体躯だと、ひとつひとつの動作が、長いリーチの分間伸びした印象を相手にあたえてしまいそうだ。しかし彼の所作はまるで舞を舞うような美しさに満ちていた。
思わずため息がこぼれそうになる。
「悪いな、高藤。急に呼び出したりして」
と言われ、よく見れば彼の目の下には微かに隈が浮いていた。
(いかん。久々の再会に浮かれ、気遣いがなっていなかった)
と反省した高藤の耳に疑うような内容を〈神〉が告げてきたのだ!
「なぁ。前戯ばかりが長すぎてなかなか本番に至らないというのは、オレが飽きられているということなのか?」
向けられた瞳はあくまでも真摯で、彼の放った言葉が(相談したいこと〉の確信だと賢い高藤は即座に理解した。
彼の瞳に脳神経を抉られる錯覚……にしばし耐える。
「す、すまない、新堂。君の言う前戯とは……そのいわゆる性交渉における挿入に際しての前段階、的な……アレのことか?」
「まだるっこしいな。そうだ。セックスにおける前戯のことだ」
--カキーン!
至近距離から強烈なピッチャーライナーを食らってしまった。
「え……っと、僕の認識違いなら笑い飛ばしてくれ。そのいいようだと、君が前戯をされる側のように聞こえたのだが」
「ああ、その通りだ。君の大切な時間を無駄遣いしたくないので余計な言い回しは割愛して言うと、オレが受ける側だ。そういうコトになって三ヶ月経つ。お互い快感は得ているのに本番に至らないことにオレは不安と不満を抱いている。どう思う? やはり経験が足りないと飽きられてしまうものなのか?」
……と、高藤が記憶しているのはここまでである。
なぜならこの後、急に襖の外が騒がしくなり、突然乱入してきた大男からシャツの襟元を掴まれ立たされると問答無用で顎にパンチを食らったからである。
この乱入者に対して洸夜が激怒してくれると高藤は期待した。いや、当然そうだろうと考えていたのに……。
「洸夜はお前にはやらないからなッ」
などと意味不明な雄叫びをあげる不届き者に、あろうことか〈神〉=新堂洸夜が抱きついたのだ!
「あッ、冬木♡ 迎えにきてくれたんだねッ」
高藤の中で〈神〉が〈人間〉に堕ちた瞬間だった……。
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